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2011年6月30日

文理融合で進める環境、社会、経済を俯瞰する研究

【社会環境システム研究センターの紹介】

原澤 英夫

 社会環境システム研究センターは、1974年3月に国立環境研究所(環境研)の前身である国立公害研究所(公害研)がつくばの地に設立された時の「総合解析部」がそのルーツです。その後、公害研から環境研への改組では「社会環境システム部」、独立行政法人化後は、「社会環境システム研究領域」と名称が変わり、この4月より社会環境システム研究センター(以下、社会センター)として新たにスタートしました。

 社会センターの目指すところは、「人間と環境」を広く研究の対象とし、とくに社会経済活動と環境問題との関わりを解明し、環境と経済の両立する持続可能な社会の実現に資する研究を進めることです。非常に難しい研究テーマですが、地球環境研究センター、地域環境研究センターなど他研究センターとも連携して研究を進めます。社会センターが中心となって進める研究プログラムが、2つの先導研究プログラム「持続可能社会転換方策研究プログラム」と「環境都市システム研究プログラム」です。さらに、地球環境研究センターが進める地球温暖化研究プログラムのうち、特に対策に係るプロジェクトに協力します。

・持続可能な社会の将来シナリオを描く持続可能社会転換方策研究プログラム

 持続可能な社会の実現にむけて中長期の我が国のあるべき姿(ビジョン)とそこに至る経路(シナリオ)および施策ロードマップを示し、そうした社会への転換を推進する具体的な方策が求められています。一方、現実には様々な環境問題が未だ解決されておらず、さらに今後生じうる環境問題は、持続可能な社会を構築するうえでの障害となります。そこで、本研究プログラムは、種々の困難をもたらす将来の環境問題を想定しつつ、持続可能な社会への転換という喫緊の課題に取り組むことを目的としています。

・持続可能な環境都市を実現するための環境都市システム研究プログラム

 都市の社会・経済と環境特性に応じた、環境負荷の増大と自然環境劣化の克服に向けての将来ターゲットを設計して、そこへ到達する実効的な、地域と都市・地区の環境技術と政策のシステムを描く計画手法と評価体系の研究開発を進めます。具体的には、水、エネルギー、資源循環を制御する環境イノベーション技術・施策の研究開発とともに、関連する社会制度システムの定式化を進めて、国内外で展開可能な環境都市マネジメントの技術・施策パッケージとし、そのうえで都市や地区の経済、環境特性に応じて技術・施策をカスタマイズして適用する「環境ソリューション」システムの研究開発を進めます。

 これらの研究プログラムを社会センターの次に紹介する5つの研究室が中心となり、他センターの協力も得ながら進めます。

・環境と経済の両立を目指す環境経済・政策研究室

 環境経済のモデル分析や評価研究を進めるとともに、他の研究センターを経済的側面から支援、協力して研究を進めます。今期中期計画では、環境政策が企業や消費者の行動に及ぼす影響や環境政策の効果分析を通じて、望ましい環境政策のあり方や地球規模環境問題の解決に向け望ましい国際協調のあり方を明らかにする研究を行います。

・持続可能な消費やライフスタイルを研究する環境計画研究室

 環境保全や計画のための様々な主体(企業、消費者、自治体等)の役割や行動についての検討およびそれらの相互関連の解明を踏まえた持続可能な社会に関する研究を行います。加えてリスク評価やリスクコミュニケーションなど、他研究センターとも協力します。

・温室効果ガス25%削減の可能性を追求する統合評価モデリング研究室

 国の温室効果ガス削減の中期目標検討に活用された統合評価モデル(AIMモデルと呼んでいます)の開発を進めるとともに、低炭素社会、持続可能社会づくりの研究、より具体的には将来シナリオの基礎となる社会・経済シナリオを構築する研究を行います。

・持続可能な社会の具体化に資する研究を進める持続可能社会システム研究室

 前中期計画では、地球環境研究センターの温暖化対策評価研究室が温暖化研究プログラムの対策プロジェクトを担当していました。今期は社会センターに移動して、引き続き温暖化対策を中心として、低炭素社会の具体化を図るとともに、持続可能社会に転換するための方策を多面的に検討します。

・持続可能で魅力のある環境都市の構築を目指す環境都市システム研究室

 これまで低炭素社会の交通や、環境コベネ都市などの都市や交通の研究を進めてきました。さらに、環境面から持続可能な都市システムの現状分析や計画策定・評価手法の開発、コベネフィット型の環境都市ソリューションシステムの構築と社会実証に関する研究を行います。

 社会センターの対象とする研究の範囲は非常に広いことが特徴ですが、限られた人的資源や予算のもとで、効率的に研究を進める種々の工夫をしつつ、今まで以上に所内他研究センターや所外の大学や研究機関との連携を強めていきたいと考えています。社会センターの研究活動や得られた研究成果について積極的に発信していきます。皆様方のご指導ご鞭撻を是非お願いしたいと思います。

(はらさわ ひでお、社会環境システム研究センター長)

執筆者プロフィール:

筆者の原澤英夫の顔写真

1978年に公害研(現環境研)に奉職して以来、30余年。社会センターでは最長老で唯一総合解析部の経験者。この間、研究テーマも変化してきましたが、今後は、持続可能社会、環境都市、温暖化影響・適応・緩和策の3つの柱で研究を進めます。

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