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2019年9月30日

AIMにおけるアジアを対象とした人材育成の歴史:なぜ人材育成が必要なのか?

コラム2

 2015年に合意されたパリ協定で示された「2℃目標」や「1.5℃目標」の実現には、今世紀中に世界の実質的な温室効果ガス排出量をゼロにする必要があります。こうした状況では、発展途上国も例外ではなく、温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指した取り組みが求められます。

 しかしながら、これまでに多くの発展途上国が提出した排出削減目標は、GDPあたりの排出量に対する削減率や温暖化対策をとらない「なりゆきシナリオ」による排出量に対する削減率を目標に掲げる国がほとんどで、ゼロ排出には程遠い状況です。各国のゼロ排出のビジョン(将来像)とその実現に向けたロードマップ(行程表)は、各国の社会、経済的な目標や再生可能エネルギーの利用可能量などと整合性があることが必要です。こうしたビジョンやロードマップの作成において、モデルは必要不可欠なツールとなります。

 国立環境研究所のAIMチームは、本来、国のビジョンを描くのは、その国の人たちであるべきと考えています。各国の長所や課題を最もよく知っている各国の人たちが自ら議論し、ゼロ排出を実現するビジョンやロードマップを明らかにすることが重要です。このため、人材育成の観点からも、私たちはモデルのひな形を各国の研究者に提供して、モデル開発に必要なデータの収集から、それを用いたモデル開発、開発したモデルによる将来推計、さらに様々な政策の評価までを、実践してもらっています。これまでに、中国、インド、韓国、インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、カンボジア、ブータン、ネパール、スリランカ、ラオス、台湾の国や地域からトレーニングや研究所の特別研究員、研究生等として、人材を受け入れてきました(図2)。こうした人材が母国に戻って、気候変動政策のリーダーとして活躍している例も出始めています。さらに、参加者がその教え子を国立環境研究所に派遣するという新しい循環も生まれつつあります。

図2
図2 2019年までに国立環境研究所AIMチームが研究者を受け入れたり、トレーニングを行ったりした国や地域

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