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2014年12月31日

持続可能な社会システムへの転換

コラム3

 この前の2つのコラムでは、持続可能な状態に近づいているかどうかを判断する指標についてお話しました。しかし、実際に社会のしくみを持続可能な形に変えるには、その転換を促すものが必要です。そのようなつなぎの役割を果たすしくみとして、ハイブリッド産業と呼ぶしくみを研究しています(図3)。

図3 ハイブリッド産業の概念図

 都市を持続可能な形に作り替えるには、産業間の共生、住宅・商業地区と産業の共生、そして自然と都市との共生が有効な手段となりますが、これらの共生を総動員して作る、将来の理想的な超低炭素産業を目指した研究です。住宅・商業地区や交通からの二酸化炭素の排出削減は、初期費用がかかってしまいます。けれども、対策メニューは豊富なため、これらを導入すれば大幅な削減が可能です。

 一方、国内の産業は省エネルギー化が進んでいます。例えば、銑鉄1トンやセメント1トンを製造する際のエネルギー消費量は世界で最も少なく、製造プロセスの変更だけではこれ以上の排出削減は難しい状況です。

 このような状況下でさらに二酸化炭素の排出を削減するには、原燃料を低炭素なものに変える必要があります。将来の理想的な産業の姿は、廃棄物やバイオマスの利用率を飛躍的に高めていくというものです。しかし、その理想的な姿は現在のしくみとは大きく乖離しており、すぐに実現できるものではありません。 

 電気自動車を普及させる際に、ガソリンでも充電でも走れるプラグインハイブリッド自動車があると、充電インフラを整備しながらの移行をスムーズに行うことができます。

 この事例と同じように、化石燃料でも廃棄物やバイオマスでも製品を生産できるハイブリッド産業ができれば、低炭素な原燃料の供給体制を徐々に整えて、理想的な超低炭素産業への移行を促すことができると考えられます。すでにセメント産業などはハイブリッド化していると言えますが、産業全体では大幅な導入拡大の技術が必要です。そしてより大切なのは、低炭素な原燃料を大量かつ安価に供給するしくみを整えることです。

 この目的を実現するために、廃棄物、エネルギー、森林の研究を通して、その経済性や環境面に及ぼす正負の効果を分析しています。

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