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2019年9月30日

AIMを構成するモデル2:経済モデルの概要

コラム4

 温暖化対策を行うためには費用の追加が必要となり、その費用の調達には別の支出を減らす必要があります。一方、温暖化対策により、エネルギーの費用が節約されれば、節約分を別の消費に使うことができます。省エネ機器の生産額が増えると、その生産に必要な活動も変化します。温室効果ガスの排出量は経済活動によって変化するので、温暖化対策も経済活動に影響を及ぼします。こうした経済活動と温室効果ガス排出削減の相互影響を評価するモデルが「経済モデル」です。

 経済モデルの代表的なものがAIMでも使用している「応用一般均衡モデル」で、英語名(Computable General Equilibrium Model)の頭文字から「CGEモデル」と略されることもあります。生産者は売上から費用を差し引いた利潤を、家計(消費者)は消費によって得られる効用をそれぞれ最大にするように行動し、価格メカニズム(供給が需要を上回れば価格が低下し、逆では価格が上昇する)によってすべての財や生産要素(資本や労働)の市場が均衡する(需要と供給がバランスする)という考え方に基づいて、経済活動の大きさを計算します。CGEモデルは、世の中のすべての市場や活動が均衡していることが前提のため、温暖化対策を導入すると、元の温暖化対策を導入していない場合の均衡状態が崩れ、経済活動にロスが生じる結果になります。また、現実の社会は、もともと不均衡(失業のように需要と供給が釣り合っていない、生産しても売れ残って廃棄されるなど)であるという考えに基づいて、あえて不均衡な要素を導入するCGEモデルもあります。

 これに対して、「マクロ計量モデル」という経済モデルもあります。このモデルは、分析対象となる変数の間の関係を経済学の理論に基づいて推定することで構築されます。実際に観測された統計データに基づいていることから、世の中の不均衡な状況も含むため、温暖化対策への取り組み方によっては、経済活動にプラスの効果が生じる場合もあります。

 マクロ計量モデルは構造変化の小さい短期的な予測には適しますが、中・長期の予測については、現状の産業構造が変わる可能性があるため、CGEモデルの方が適している場合が多いと考えて使用しています。いずれのモデルも、現実の社会に合わせてモデルの改良が行われています。

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