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2021年6月30日

持続可能な地球環境の実現に向けて

【地球システム領域の紹介】

三枝 信子

 私たち人間の住む地球の表面には、大気や海洋、そして陸域があり、これら地球表層の環境を保全することは持続可能な人間社会をつくる上で欠かすことができません。しかし、近年では人間活動の影響を受けた気候変動により世界の陸域や海上の気温は長期的に上昇を続け、海面水位の上昇や大雨の頻度の増加、さらに熱波や干ばつの被害を受けやすい国や地域では食料生産への深刻な影響も危惧されています。

 2021年4月に発足した地球システム領域では、特に私たち人間が暮らす地球表層の問題に注目して地球表層で起こる気候・気象や大気質の変化、陸域や海洋の環境の変化のしくみを理解し、その科学的知見を持続可能な地球環境の実現のために役立てます。

 地球システム領域には8つの研究室と3つの推進室、2つの係が位置付けられました。地球システム領域に所属するメンバーは、国立環境研究所が2021年4月に新たに開始する戦略的研究プログラム「気候変動・大気質研究プログラム」をはじめとするさまざまな研究課題に国内外の研究者と連携して取り組み、地球表層を構成する大気・海洋・陸域における物理・化学プロセスと生物地球化学的循環の解明、人間活動の影響を受けた地球環境変動とそのリスクの将来予測等の研究に取り組みます。また、これらに必要となる先端的計測技術の開発やモデリング手法の開発も行います(図1)。

地球システム領域の構成図
図1 地球システム領域の構成

 さらに、地球システム領域には「知的研究基盤の整備」を専門に担う部署として「地球環境研究センター」(https://cger.nies.go.jp/)が位置付けられました。「地球環境研究センター」は、1990年に国立環境研究所に設置された30年の歴史を持つ部署であり、これまで地球温暖化をはじめ気候変動に関わるさまざまな研究を推進してきました。2021年4月に地球システム領域の中に改めて「地球環境研究センター」を置き、1993年に開始した大気中温室効果ガスのモニタリングに始まる地球環境の戦略的モニタリング、海洋や高山帯への気候変動影響のモニタリング、「地球環境データベース」に基づく研究データの整備と利活用の推進、炭素循環・管理に係る国際共同プログラムや温室効果ガスインベントリに関わる活動の支援、スーパーコンピュータを用いた研究の支援、科学的知見の集約と社会への普及等を担い、これらの活動を継続・発展させます(図2)。

地球環境の観測プラットフォームとデータ利活用の図

図2 地球環境の観測プラットフォームとデータ利活用(https://db.cger.nies.go.jp/

 また、地球システム領域には、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)シリーズを担う「衛星観測センター」(https://www.nies.go.jp/soc/)も位置付けられています。このように地球システム領域は、地上観測、船舶観測、航空機観測、衛星観測といった多様な観測プラットフォームによって得られる観測データを、国際連携に基づき標準化された手法で整備し、世界の研究者が使えるように公開すると同時に、そのデータを使って地球表層におけるさまざまな現象の解明や将来の予測、リスク評価を行うことができる組織となっています。

 地球システム領域のメンバーは、これからも国内外の研究者や機関と連携し、気候変動をはじめとする地球規模の環境問題に対応する研究成果を最大化すると同時に、得られた成果やデータをこれまで以上に、迅速に幅広くお伝えしていきます。科学的知見やデータについては国連気候変動枠組条約(UNFCCC)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等の国際枠組みにも積極的に発信します。以上の活動を通して、私たちはこれからも持続可能な地球環境と人間社会の実現に貢献していきたいと思います。

(さいぐさ のぶこ、地球システム領域 領域長)

執筆者プロフィール

筆者の三枝信子の写真

前期までの地球環境センターでは、地球温暖化の現象解明、低炭素社会の実現といった社会のニーズに応える新たな研究に挑戦してきました。地球システム領域では、エアロゾルや雲、短寿命気候強制因子、窒素循環等の研究も充実させ、強い基礎基盤の上で地球環境の理解と予測、気候変動対策の効果の検証等に取り組んでいきます。

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