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2021年6月30日

第5期の資源循環領域の研究~資源の持続可能な利用と環境負荷低減の同時実現~

【資源循環領域の紹介】

大迫 政浩

1. 目指すべき循環型社会への道筋と方法論を提示することが役割

 私たちの資源循環領域では、モノの上流から下流まで、つまり、資源を採り出すところから廃棄するところまでを扱います。資源は、私たちが生活していくための活動に使われ、私たちの様々な欲求に対して価値を提供しています。天然資源は有限なので、私たちはできるだけ少ない資源でより豊かな生活を得ることが理想です。また、資源を採り出す時に生態系に影響を与えたり、廃棄するときに環境に影響を与えたり、その他様々な環境負荷が生じる可能性があります。3Rの取組みや廃棄物等の適正な処理により、できるだけ環境負荷を少なくして、私たちの生存基盤である環境が持続的に維持されるように資源を利用していくことが望ましいといえます。このような資源の持続可能な利用により価値を得て、同時に環境負荷を十分低減できる社会が循環型社会です。そして、私たちの領域は将来の循環型社会の理想像を明確に描くこと、そこに至る道筋と方法論を提示することが役割であると考えています。また、循環型社会の形成において、将来の脱炭素社会や自然共生社会、安全が確保された社会を統合的に実現していくこと、さらには、SDGs(持続可能な開発目標)で示されているような様々な社会課題を同時に解決していくための道筋を示していきたいと考えています。

2. システムをマクロにみるだけでなくミクロな現場的視点も重視

 私たちの研究に対する姿勢として、社会をシステムとしてマクロにみる視点だけでなく、日本やアジア諸国等の様々な地域や自治体、事業者、NPO/NGO、一般市民等の各主体の活動など、現場の状況にも目を向けて、現場に密着したミクロな視点での研究も大事にしていきたいと考えています。各地域や様々な主体が抱えている課題、制約条件は異なります。人々が持っている情報やリテラシー、そして価値観も異なる中で、個別解を探していくこと自体とても難しいことです。廃棄物処理施設はいまだ迷惑施設として扱われ、ましてや福島第一原発事故に伴う放射能汚染で生じた廃棄物や土壌の処理の過程では、地域社会に大きな軋轢が生じています。このようなリアルな現場に身を置いて、自分たちの目で直接見て、コミュニケーションを図ることで多くの気づきが得られます。そして、研究を通して一般化を試み、現場の方々と協働して望ましい姿の実現を目指していく、そのような地道な社会実装の取組みにも力を入れていきたいと思います。

3. 中長期計画における資源循環分野の研究概要

 以上、第5期の中長期計画がスタートするにあたり、資源循環領域としての意気込みを示しました。私たちの強みである、社会をシステム的に思考する力、基盤となるハードウェア技術を開発する力、環境の状態を的確に計測する力を存分に活かして、持続可能な循環型社会の形成に貢献していく所存です。

 当領域は、分野横断で推進する戦略的研究プログラムである「プラネタリーヘルスに向けた物質フローの革新的転換研究プログラム(物質フロー革新研究プログラム)」を主に担うとともに、基礎基盤的な取り組みとして、先見的・先端的基礎研究、政策対応研究、知的研究基盤整備に関する研究を進めていきます。物質フロー革新研究プログラムでは、プラネタリーヘルス、すなわち、地球の環境や人間社会の健全性をあらわす概念のもとに、2050年、2100年においても健全であり続けるために、人間活動に伴う物質フローはそのときにどのような状態であるべきか、そこに向けた変革の方向性、科学的目標を示し、具体的な順応策としての化学物質・環境汚染物質管理手法、循環・隔離技術システムの開発、提示を行っていきたいと考えています(図1)。また、基礎基盤的な取り組みとしては、持続可能な循環型社会の将来ビジョンに向けた評価方法の開発や社会システム・技術システムの設計、具体的な政策提案や基盤となる要素技術の開発、環境影響の評価などの研究を、国内だけでなく国際的視野で推進していきたいと思います。特に、近年のプラスチック資源循環やマイクロプラスチックの問題については、所内外との連携のためのグループをつくって重点的に研究を進める予定です。その他、災害廃棄物対策の支援、またわが国の技術のアジア等への国際的な適用展開やそのための国際標準化の推進についても、組織的に支援していきたいと考えています。

 今後も資源循環領域の研究活動に対するご指導、ご支援をよろしくお願いいたします。

物質フロー革新研究プログラムの概要図
図1 物質フロー革新研究プログラムの概要

(おおさこ まさひろ、資源循環領域 領域長)

執筆者プロフィール

筆者の大迫政浩の写真

最近、物事へのこだわりや自分への執着がなくなり、周りの喜びを自分の喜びに一層感じられるようになってきました。年寄りになってきた証拠ですね。組織の世話役として11年目に入ります。微力ながら若い方々のために尽くしたいと思います。

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