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2018年12月27日

気候変動適応センター設立にあたり

向井 人史

 気候変動はグローバルな問題としてその解決が叫ばれる一方で、その影響はローカルな状況に応じて現れる現象として捉えられています。2015年に採択された「パリ協定」においても、温室効果ガスの排出削減による気候変動自体の「緩和」策に加えて、気候変動影響に対して被害を最小化し、もし影響があっても迅速に回復する対策などを含めた「適応」策の必要性が強調されるようになっています。日本では、適応政策を総合的に推進するために「気候変動適応法」が2018年6月13日に公布され、政府はもとより自治体、事業者、国民などが相補的に気候変動影響への適応策を実行し、気候変動影響に立ち向かう基本方針が示されました。

ロゴマーク
写真1 適応センターロゴ

 国立環境研究所は、この法律の中で「影響や適応に関する情報基盤の中核」と位置付けられ、日本における適応施策に関して大きな役割を担うこととなりました。そのため本年12月1日にこの気候変動適応法が施行されることに合わせて、新たに「気候変動適応センター(Center for Climate Change Adaptation (CCCA))」が設立されました。本センターでは、気候変動の影響や適応に関する各種情報基盤をつくり、自治体が適応計画を策定する際に必要な情報を提供したり技術的援助を行ったりすることが大きな役目とされています。そのために、適応策を推進するためのオフィス(気候変動適応推進室)を設置します。また、気候変動影響観測・監視研究室や気候変動影響評価研究室、気候変動適応戦略研究室において研究を実施しながら、国や自治体の気候変動影響・適応に関連する機関や大学等とも連携しつつ、各種情報の収集や整理、分析、統合化を行うこととしています。本センターは、今後設置が期待される各地域の情報収集機関としての地域気候変動適応センターとの情報交換を通じて現場情報を集積し、有用な適応情報を横展開することで広域的な適応策実施のための支援などを行うことが期待されています。また、国内だけでなく、アジア太平洋地域の適応策のための情報分析や情報提供や支援も行う予定です。

 気候変動影響は一定したものではなく常に変化するものと捉える必要があり、影響評価や適応政策も時節を得たものである必要があります。本センターでは新たな研究成果の提供や現場における新鮮な情報などを各機関と連携して提供することが重要と考えています。そのためには、関係各機関ばかりでなく、国民ひとりひとりの気候変動影響・適応情報提供に対する協力や事業者による適応技術や適応ビジネスの展開なども重要な要素と考えられます。将来に向かって、幅広いステークホルダーの皆様のご意見等を伺いながら本センターの運営を行いたいと考えておりますので、末永くよろしくご指導ご協力のほどお願い申し上げます。

集合写真
写真2 適応センター開所式の様子

(むかい ひとし、気候変動適応センター長)

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