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国立公害研究所研究報告(R-126-'90)
「バックグラウンド地域における環境汚染物質の長期モニタリング手法の研究(III)摩周湖における水試料の代表性と底質中の汚染記録」昭和58-62年度 (平成2年3月発行)

 この報告書では、摩周湖の水収支と湖水の混合機構に関する研究成果および底質に残されている汚染の歴史を解読するために実施した研究の成果を示した。深くて冷たい摩周湖も1年に1度、湖面の氷が解ける頃、ほぼ完全に湖水が混合することを、その境界条件も含めて始めて明らかにした。一方、夏にはその年の汚染が表層水にのみ反映されることから、夏の終わりに1度だけ調査をして、変化しない深層水との比較をすることによって極めて高感度に最近の変化を検出できることも明らかにした。静かにゆっくりと降りつもる湖底には、人知れず汚染の歴史が刻まれており、湖底の堆積速度を推定することによって、近年の化石燃料の使用量の増加を反映する記録が明瞭に読み出されることも示した。

 地球環境の汚染が問題となっているこの時期に、摩周湖をベースに10年来続けてきた自然湖沼を用いたバックグラウンドモニタリング手法に関する本研究成果を報告できることは時機を得たものと思われる。

(計測技術部 河合崇欣)

国立公害研究所研究報告(R-127-'90)
「新潟県六日町における消雪用揚水に伴う地盤沈下性状」(平成2年3月発行)

 雪を消すために、地下水を揚水し、消雪パイプから散水融雪する方法がある。地下水の熱エネルギー源としての性質を利用したものであるが、簡便で経費が余りかからないこともあって、またたく間に北は北海道から南は島根県まで普及した。この方法は困ったことに降雪時に多量の地下水を揚水するため、地下水位を急激に低下させる。その結果、地盤を構成する土の粒子に多大な負荷をかけることになり、著しく地盤を沈下させしかもまとまりにくい。そこで、豪雪地域の新潟県南魚沼郡六日町を調査地として、消雪用揚水に伴う地盤沈下の実態を把握し、その機構について研究を行った。本報告では特に、本研究所が開発した全自動圧密試験装置を用いて繰返し圧密試験を行い、繰返し圧密効果を定式化した結果を示した。この結果に基づき、地下水位が冬期のみに著しく低下する地盤沈下現象を解析的に説明し、その将来予測も併せて行った。町の中心部よりも、軟弱な地層は薄いが地下水の開発が新たに行われている余川の方が圧密がより進行する可能性があることを示した。

(水質土壌環境部 陶野郁雄)