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仲光 佐直

 今から3年近く前の昭和62年7月中旬のある日のことです。当時私は理化学研究所の筑波研究センターの所長でしたが,担当の遺伝子組換えP4実験のことで御助言を頂くため,前所長の江上信雄先生をお尋ねしました。

 土曜日の午後で,事務室に人影はなく,先生お一人で待っておられました。御相談の用件は短時間ですみましたが,先生はP4反対運動のきっかけは理研が研究所の生命力維持のため科学の新しい動向に対応しようとして,既存研究室の改廃の係わる新計画を持ったことに対する所内の反発であることを理解しておられました。さらに研究所での活力維持や時代対応の難しさに話は進み国公研の将来のことにもふれられました。私は,国公研や理研のような多くの専門分野にまたがる研究所での研究運営の問題や,総合性の発揮を未だに模索していることなどを申しあげました。冷房のとまった部屋でネクタイをとって話しこみました。

 国公研は,より巾広い開拓をめざして第2の出発をされますが,私は真夏の所長室での江上先生との会話を思い浮かべながら,総合性を発揮する研究所として,一層の御発展を祈るものであります。学際的な研究機能を発揮させる研究所の運営は,それ自体が研究であると考えます。研究と研究を結びつけ,組織を有機的に機能させる科学的手法の開発と導入,全所員の立場に応じた努力,これらの積み重ねによって他の追随できない新しい道が拓かれると思います。

 最後に,国公研OBとして,今回の基本計画の見直しで心いたむところもあります。新しい開拓の中で,研究所と所員すべてとが調和点を作っていくことが,総合研究所への道を巾広く充実させるものと考えます。

(なかみつ すけなお,元主任研究企画官)