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霧粒の大きさを測る

研究ノート

福山 力

 水滴のように蒸気圧の高い液滴の大きさは周囲の条件(蒸気の分圧と温度)によって変化するので粒径測定にあたってはin situに近い方法が要求される。従来多く用いられてきたのは光散乱法であるが、我々は液滴が蒸発しやすいという性質を利用して、熱線流速計を応用することによりはるかに簡便な測定法を開発した。この方法は沸点よりも高い温度に加熱した熱線に液滴を衝突・蒸発させて、その際に消費される潜熱を測定するものである。実際には熱線を定温回路に接続しておくと、蒸発による温度低下を補償するような印加電圧の上昇パルスが観測され、そのパルス面積から熱量が求まり粒径が導かれる。液滴径測定用のプローブを図1に示す。測りたい場所にこれをセットして0.2〜0.3l/minの弱い吸引をすれば雰囲気の変化をほとんど起こすことなく液滴の大きさを測ることができる。プローブへの印加電圧はデジタルオシロスコープを介してパソコンに転送され、個々のパルスを積分して面積を出すことから、一定時間積算して粒径分布や平均粒径、個数濃度、水分量濃度を求めることまですべて自動的に行われる。パルス面積から直接粒径が得られるので標準サンプルによる較正の必要がないということも光散乱法に比べてこの方法がすぐれている点である。もちろん測定結果の正確さについての検証は必要で、我々は粘着性薄膜に水滴を捕捉してから写真撮影をする方法及び水滴の重力落下速度を測る方法との比較により、熱線法が十分正確であることを確認した。装置が手軽で実時間測定ができるので野外観測に適している。図2は赤城山に発生した霧の観測例で、霧粒径や濃度の時々刻々の変化が捉えられている。水滴に限らずアルコールやガソリンのような液滴にも適用できるので工業的な使い道もあるのではないかと考えている。

(ふくやま つとむ、大気圏環境部大気反応研究室長)

図2  赤城山における霧の観測例