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環境科学研究と国際技術協力

巻頭言

全国公害研究協議会長 兵庫県立公害研究所長 小林 稔

こばやし  みのる の写真

 地球環境問題の高まりの中で環境科学研究も従来の局所的特定的課題の他により広域的、多元的非特定的なものへ、その原因や機作の解明、病態の予後の判定や治療法へ、その対象が多様化しております。そして、さらに「好ましい環境の創造」や環境を社会活動や経済効果からより合理性の高いものとして考えようとする分野も生まれております。これら様々な課題は、単独でまた複数の機関との協同で企画され、既に評価を得ているものも少なくなく今後この動きは一層ダイナミックにプラスの方向に進むことが容易に想像されます。他方、「環境サミット」を経て南北間の環境問題も好むと好まざるとにかかわらず直接、迅速かつ具体的な形で行動しなければならなくなりました。

 私たちはこれまで上述のような研究成果を通して蓄積された技術を用い、国際技術協力を環境科学の立場から門戸を開放し、頭脳の依譲や機器設備の整備を図るための助言をしてきました。すなわち、国環研は中央的、レベルの高い総合的な立場で、地方公害研は個々のフィールドを中心にしたむしろ、実務的な立場で、そして、行政の方々は環境の個々あるいは全体の営みや“からくり”について等がそれであります。しかし一般的にどちらかと言えば、これらは受身的で個人的で非連続的な対応であったと言えないこともありません。これからはこの形では対応ができなくなりますし、特に相手に対する満足感から言えば能動的、組織的で継続しなければなりません。これまで国際技術協力については余りにも多くの問題点があり、ほとんど重要な事柄は解決されず、個人のあるいは小さいグループの物心両面の献身と犠牲に細々と成り立っていたと言っても過言ではありません。改めて関係法律・規則の再点検、JICAの実務機構の見直し、地方自治体の意識革新を基礎的要素とし、具体的には国環研と地方公害研がそのための人材の養成、教材(指導マニュアル、指導指針、指導スケジュール、研修器材、文献収集のための手段、情報収集のためのネットワークなど)の作成、企画・評価のための懇切・適切な組織などを構築していくことは決して困難ではありますまい。そのような意味から国立環境研究所や環境研修センターの企画・運営に大きな期待を寄せております。

(こばやし みのる)