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環境研究基盤技術ラボラトリー

環境研究基盤技術ラボラトリー

彼谷 邦光

 国立環境研究所の独立行政法人への移行に伴う機構改革で,新たな組織として環境研究基盤技術ラボラトリー(基盤技術ラボ)が発足した。基盤技術ラボは環境分析化学研究室と環境生物資源研究室の二研究室からなり,当研究所が国立公害研究所の頃から蓄積してきた研究基盤技術の整備と今後必要になる研究基盤技術の開発を業務としている。基盤技術ラボで扱う研究基盤技術は所内のさまざまな研究の効率的な実施や研究ネットワークの形成に資するだけでなく,従来通り,所外の関係機関へも提供していく。

 基盤技術ラボが業務とする研究基盤技術としては,

 1)環境標準試料及び分析用標準物質の作製,並びに環境試料の長期保存(スペシメンバンキング)

 化学物質モニタリングの精度管理に資するために,要望の多い環境標準試料の再調製も含め,環境残留性化学物質を中心に,環境標準試料を作成する。また,社会的な要請に応じて可能な範囲で分析用標準物質を作製,提供する。

 環境試料の長期保存については,所内外の長期環境モニタリング事業と連携を図りながら,これまでの試料及びデータの収集,保存を継続するとともに,より長期的,広域的な視野に立った環境試料の長期保存体制の確立を目指している。

 2)標準機関(レファレンスラボラトリー)としての機能

 標準機関の機能として,(1)分析精度管理手法の改善の検討や分析法のクロスチェックなどを行うことにより,また(2)微細藻類や実験生物の分類学的同定手法の改善の検討,タイプ株(新たに種や属を記載した際に使われた株),リファレンス株(同定時に参考にする株)や特殊な機能を持った株(系統)などの維持・管理・提供を行うことにより,我が国における環境研究のレファレンスラボラトリーとしての役割を担うこととしている。

 3) 環境保全に有用な環境微生物の探索,収集及び保存,試験用生物等の開発及び飼育・栽培のための基本業務体制の整備,並びに絶滅の危機に瀕する野生生物種の細胞・遺伝子保存

 (1)環境微生物については,現在1000株が保存されているが,今後一層の充実を目指している。さらに,環境微生物についての分類と遺伝子及び有用機能の解析を実施し,得られた情報のデータベース化を行うとともに,それらの凍結保存技術を開発することとしている。

 (2)試験用生物については,それらの遺伝子解析,有用遺伝子のストック,スクリーニング,純化等基礎研究を実施して,高品質の生物資材を選択するとともに,それらの効率的な飼育・栽培及び提供体制の構築を目指している。

 (3)絶滅危惧種の保存については,絶滅の危機に瀕する野生生物の体細胞,生殖細胞及び遺伝子並びに絶滅の危機に瀕する水生植物を保存することを目指している。

 (4)生物資源関連情報ネットワーク

 生物資源にかかわる情報・分類・保存に関する省際的・国際的協力活動を展開し,国内外の生物資源情報ネットワーク体制の構築を推進している。

 これらの研究基盤技術のほかに,これまで研究所の環境試料分析の高感度化や高精度化,そして新たな分析手法の開発を支えてきた共通機器の管理・運営も環境分析化学研究室の業務として加わっている。

 独立行政法人への移行に伴って,当研究所内外の環境も大きく変わろうとしています。これを機会に,これまで蓄積してきた研究基盤技術の関係機関への普及に一層努めるとともに,関係機関との間の双方向の交流を目指す所存です。

 関係諸機関のこれまで以上のご指導ご鞭撻をお願いする次第です。

<div style="text-align:right;">(かや くにみつ,環境研究基盤技術ラボラトリー長) </div>

執筆者プロフィール

富山県生まれ,昭和53年4月より当研究所に勤務。10年位前から環境有機化学が専門と吹聴しています。

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