ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

地球化時代の幕開けに研究者に望む

巻頭言

国務大臣 環境庁長官 林 大幹

はやし  たいかん の写真

 人類の存続の基盤としての有限な環境を守り,これを次の世代へ引き継いでいくことは,現代に生きる我々に課せられた重要な使命であります。国民に豊かな生活をもたらした社会経済活動の拡大は,同時に環境問題を引き起こしました。かつての激甚な公害に代わって,都市地域における窒素酸化物による大気汚染や生活排水による水質汚濁といった一般の国民生活や事業活動に起因する都市・生活型公害が深刻化しております。また,地球温暖化やオゾン層破壊といった地球環境問題が世界を挙げて取り組むべき最重要課題となっており,昨年6月に開催された地球サミットにおける持続可能な開発に向けた国際的合意を踏まえ,具体的な行動が求められております。今まさに環境への負荷の少ない持続的発展の可能な社会を構築するとともに,地球環境保全のための国際的取り組みを推進していくことが必要です。

 このような環境行政をめぐる情勢の変化に的確に対処するための新しい枠組みとして,政府部内において環境基本法案の策定作業を進め平成5年3月12 日に国会に法案を提出したところでありますが,環境政策は科学的基礎に基づいて形成され,実施されるものであり,環境研究の充実は政策を進めていく上で不可欠であります。

 国立環境研究所は,昭和49年に「国立公害研究所」として設立されて以来,我が国の環境保全に関する試験研究及び調査の中心的役割を担ってきました。特に,平成2年7月の国立環境研究所への改組以降は,地球環境や地域環境問題はもとより,自然環境保全分野も研究領域に加えた総合的な環境研究が日夜精力的に推進され,多くの研究成果が環境政策に反映されております。私も去る1月19日に研究所を視察し,限られた予算と人員の中で世界的にも極めて重要な研究が行われている様子を拝見し,改めて研究所のレベルの高さを実感したところであります。

 環境をめぐる社会的・行政的ニーズが広範かつ多様化しようとしている今日,環境分野における学際的・国際的な研究は,積極的に推進していく必要があります。国立環境研究所におかれては,国内のみならず,世界における環境研究の中核機関としての役割を担っていただきたいと思いますし,また,その力は十分に持っていると確信いたします。所員の皆様には今後ますます研鑽を積まれ,世界の環境研究のリーダーとして大いに活躍されることとなりますよう,切に望むものであります。

(はやし たいかん)