ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方
2020年9月29日

アジアのごみ管理と貧困のつながり

コラム4

 アジアのごみ管理には、増え続けるごみ量に応じてさまざまな問題が山積しています。ここでは私たちの研究で着目した「ごみ収集」と貧困問題の関連性について取り上げます。

 東南アジアの都市には多くの水路が存在しています。水路とその周辺の土地は公共が管理していますが、収入が比較的少ない貧困層の人々や出稼ぎ労働者などが不法に住みついていることが少なくありません。私たちが調査したタイのバンコクを流れるラップラオ水路でも、水路に張り出した住居が密集して並んでいました。ここは各々が勝手に住みついて形成されたコミュニティなので、道も細く、車両が通行できる公共道路へのアクセスが難しくなっています。そのため、行政としては、公的サービスやサポートが必要な貧困層へのアプローチが難しいという問題に直面しています。

 ごみ収集に関しては、陸路とは別に水路でのごみ収集部隊を組織して、ボートでコミュニティのごみを収集するなどの工夫をしていると自治体から聞いていました。しかし、現地の大学生との共同調査によれば、実際には水路沿いのコミュニティからのごみ収集は1.各家庭が水路にせり出した公共ごみ収集所に直接持参する以外にも、2.住居の近くに勝手に個人的なごみ出しスペースを設置する、3.自治体のごみ収集員が各家庭を訪問し収集する、4.支援が必要な家庭がいくつかあるが、そのような家庭には有償ボランティアがごみ出しを支援する、などのパターンがあることがわかりました。さらに、住民と自治体の間ではごみ収集サービスの頻度やタイミングに関する認識に乖離があり、収集所にごみがたまってもなかなか収集されない現実がわかりました。

 ごみ収集と貧困問題を結ぶ線が少し見えたでしょうか?ごみ収集は住民が安全、快適に生活するために必要不可欠な行政サービスにもかかわらず、貧困層の人々が住む地域はアクセスが悪いことが多いため、ごみ収集頻度が少なくなることが考えられます。ごみが適切に収集されないと、衛生状態が悪化し、感染症も発生・蔓延しやすくなります。貧困層の人々はごみ管理の点からも脆弱な環境に置かれ続けるのです。国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の目標(11)では、2030年までに適切、安全、安価な基本的な都市サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善することを目標にしています。その実現のため私たち研究者も都市サービスの提供方法を考えることを使命に研究しています。

細い生活道路に並べられたごみ収集ボックスの写真
細い生活道路に並べられたごみ収集ボックス

関連新着情報