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環境情報のセンターを目指して

論評

鹿野 久男

 環境問題への取り組みに当たっての体系的な関連情報の重要性については,今さら指摘するまでもない。公害が激化した昭和30年代以降,環境の状況や被害の実態を把握するために種々の調査が行われ,それらのデータの集積が環境基準や排出基準の設定に結実し,公害の改善に大きく貢献する結果となった。

 このような深刻な公害問題が解消され,代わって,地球規模での環境問題,化学物質による低濃度汚染問題等が注目されるようになった今日において,環境情報を体系的に整理し,随時利用できるシステムを構築することの必要性は益々高まっている。

 大気圏,水圏等における人為起源物質の動態あるいはそれらによる影響を各種手法を用いて把握し,そのデータを理論的・実験的な結果と照合しながら将来の環境を予測すること,様々な社会経済データを駆使して人間活動の今後の動向を洞察し,適切な環境保全施策を選択していくこと等々,環境情報が今後の環境保全に果たす役割は大きい。公害に関する資料の収集,整理及び提供は,公害の防止に関する試験研究及び調査と並んで国立公害研究所における基本的任務の柱の一つに位置づけられ,設立以来環境情報部がその任に当たってきた。この度の国立環境研究所への改組に際し,専ら環境情報に関する業務を担当する組織として設置されることになった環境情報センターがその任務を引き継ぎ,発展させることになる。

 転換期を向かえた環境研究及び環境行政への支援機能を果たして行くため,名実共に環境情報のセンターとして,内外の関係機関とのネットワークを構築しながら,体系的かつ効率的な環境情報の収集と提供を目指していくことが期待されている。

(しかの ひさお,環境情報センター長)