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“誰が研究するのか”

論評

大阪大学工学部教授 村岡 浩爾

 国立公害研究所から国立環境研究所への名称変更,それに伴う組織の改変と予想される陣容,最近の環境科学の研究課題の目まぐるしい変貌,とりわけ地球環境に係わる研究要望の高まりなどを念頭において“誰が研究するのか”を考えてみた。


  1. 新組織では多くの新規構想の研究課題を集約した研究グループ,研究室の名称がソツなく配列されている。他者からみれば立派な組織改善である。しかし新組織に対応して機能できる研究陣容と成果を生むまでには何年か掛かる。その間に他機関との人事回転や研究者自身の研究志向の改変が含まれている筈である。このことに配備された研究者は慣れなければいけないのだ。

  2. 研究者には研究をいつまでも深めていけるタイプと,研究を総括しながら新機軸を求めて行こうとするタイプとがある。前者でありながら後者的顔をしたいという人もある。研究者層の老齢化が進んでも,まだまだ前者でいてほしい人がいっぱいいるのだ。

  3. 対象の環境空間が拡大すれば,飛び道具というハードな観測施設が生まれる例があるごとく,研究単位の物理的な分散が起る。それを支えるのは研究活動のネットワークであり,情報の交換・集積である。外国の諸機関があり,国内の研究所や大学があってその交流を目途とするものの,それにはkeyになる人材の配備と明確な性格付けが示されていないと困る。


(むらおか こうじ,前水質土壌環境部長)