“誰が研究するのか”
論評
大阪大学工学部教授 村岡 浩爾
国立公害研究所から国立環境研究所への名称変更,それに伴う組織の改変と予想される陣容,最近の環境科学の研究課題の目まぐるしい変貌,とりわけ地球環境に係わる研究要望の高まりなどを念頭において“誰が研究するのか”を考えてみた。
- 新組織では多くの新規構想の研究課題を集約した研究グループ,研究室の名称がソツなく配列されている。他者からみれば立派な組織改善である。しかし新組織に対応して機能できる研究陣容と成果を生むまでには何年か掛かる。その間に他機関との人事回転や研究者自身の研究志向の改変が含まれている筈である。このことに配備された研究者は慣れなければいけないのだ。
- 研究者には研究をいつまでも深めていけるタイプと,研究を総括しながら新機軸を求めて行こうとするタイプとがある。前者でありながら後者的顔をしたいという人もある。研究者層の老齢化が進んでも,まだまだ前者でいてほしい人がいっぱいいるのだ。
- 対象の環境空間が拡大すれば,飛び道具というハードな観測施設が生まれる例があるごとく,研究単位の物理的な分散が起る。それを支えるのは研究活動のネットワークであり,情報の交換・集積である。外国の諸機関があり,国内の研究所や大学があってその交流を目途とするものの,それにはkeyになる人材の配備と明確な性格付けが示されていないと困る。
(むらおか こうじ,前水質土壌環境部長)
目次
- 国立環境研究所に向けて巻頭言
- 不破敬一郎前所長の退官記念特別講演会その他の報告
- 地球環境保全に先導的役割を論評
- 環境モデル選択のこころ論評
- 大海に漕ぎ出せ,但しかじ取りを誤らぬように論評
- 国立環境研究所の発足に際して論評
- 国立環境研究所への期待論評
- 有機的な連携で論評
- 超目的と社会論評
- 新機構の国立環境研究所への期待論評
- 同じ国立試験研究機関の立場から論評
- 大学との研究交流の推進に期待する論評
- 農薬汚染の水生生物に対する影響調査環境リスクシリーズ(6)
- 地球流体中の非線形波動のモデル化と計算機シミュレーション経常研究の紹介
- 奥日光外山沢川の水生昆虫経常研究の紹介
- アスコルビン酸ペルオキシダーゼのcDNAクローニング研究ノート
- 環境週間について所内開催又は、当所主催のシンポジウム等の紹介
- 新刊・近刊紹介
- 表彰・主要人事異動
- 編集後記