ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方
2020年5月1日

第5回NIES国際フォーラム開催報告:
持続可能なアジアの未来に向けて

【行事報告】

企画部国際室 / 研究事業連携部門事務局

 国立環境研究所(NIES)は、NIES、東京大学未来ビジョン研究センター及びアジア工科大学院アジア太平洋地域資源センターを中核に、アジアの様々な研究機関と連携しながら、アジアの持続可能な未来に関して目指すべき方向やその方策についての議論を促進し、また、研究ネットワークをさらに発展・充実させることを目指し、2015年度からNIES国際フォーラムを毎年度開催しています。

 本年度は、2020年1月21日~22日にミャンマー・ヤンゴンにおいて、ヤンゴン第一医科大学(UM1)を共催機関に迎えて「第5回NIES国際フォーラム/5th International Forum on Sustainable Future in Asia」を開催しました。第5回フォーラムでは、Fostering a Healthy and Sustainable Environment to Achieve the Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標達成に向けて健康で持続可能な環境をはぐくむ)をテーマとし、アジア各国の合計33機関から約160名の参加者を得て、様々な角度から発表と議論が行われました。開催国ミャンマーからは、保健・スポーツ省をはじめとする政府機関や、ヤンゴン第一医科大学、ヤンゴン第二医科大学等20機関から学長などの参加を得て、ミャンマーの実情も踏まえながら持続可能な将来に向かうためにどのような取り組みを進めるかについて、幅広い観点からの議論が行われました。

参加者の集合写真
写真1 第5回NIES国際フォーラム 参加者の集合写真

 今回のフォーラム開催地であるミャンマーでは、環境中の様々な物質による健康影響や気候変動への対応、SDGs達成に向けた取り組みなどが重要な課題となっています。そこで、今回のフォーラムでは、「アジア諸国の環境課題、健康問題と研究チャレンジ」、「気候変動と生態系保全に関わるSDGsの同時解決に向けた方策の議論」及び「アジアにおけるSDGs推進に向けた統合的アプローチ」の三つのテーマを取り上げました。

 はじめに、ミャンマーの保健・スポーツ省及び主催・共催機関の各代表から開会の挨拶がありました。今回のフォーラムの開会を祝すとともに、ミャンマー開催の意義と2日間で展開される議論への期待が述べられました。続く基調講演では、UM1のZaw Wai Soe学長から環境健康影響に関する研究ネットワーク構築に関する講演が行われ、続いて大垣眞一郎元NIES理事長より、不確実な世界で持続可能な環境を設計するための統合的アプローチに関する講演が行われました。なお、基調講演を予定していた竹本和彦氏(国連大学サステイナビリティ高等研究所客員教授・OECC理事長)は所用により急遽欠席となりましたが、ご厚意により当日発表予定であった「SDGs達成に向けた政策関連研究」の講演資料が参加者に共有されました。

ミャンマー保健・スポーツ省副大臣による開会挨拶
写真2 ミャンマー保健・スポーツ省副大臣 Prof. Dr. Thet Khaing Winによる開会挨拶

 セッション1(アジア諸国の環境課題、健康問題と研究チャレンジ)では、次世代の健康的な生活と幸福の確保、大気環境評価、海洋ゴミとマイクロプラスチック、水質評価など、現在のアジアが抱える課題について発表が行われ、科学に基づく想像力が不可欠であり、他の分野の専門家やステークホルダーとの協力が重要であることが確認されました。セッション2(気候変動と生態系保全に関わるSDGsの同時解決に向けた方策の議論)では、日本、モンゴル、ミャンマーの事例が紹介され、気候変動の影響下でSDGsの相乗戦略を実現するための持続可能な実践と対策が提供され、議論されました。また、次世代への教育は、私たちの将来にとって最も効果的かつ公正な投資の1つであると特定され、青少年世代への質の高い教育の重要性が強調されました。セッション3(アジアにおけるSDGs推進に向けた統合的アプローチ)では、気候変動の急速に増大するリスクに対するレジリエンス、都市や産業の効率的かつ持続可能な方法による転換のための科学的プラットフォームや統合的政策決定プロセスについて議論が行われました。

NIES渡辺理事長による開会挨拶
写真3 NIES渡辺理事長による開会挨拶

 二日間にわたって開催されたポスターセッションでは、ミャンマー、日本、ベトナム等アジア各国の研究機関から多分野にわたる54件の研究成果紹介が行われ、参加者の投票による上位6点にポスター賞が贈られました。

 
 フォーラムの最後には、NIES、東京大学未来ビジョン研究センター、アジア工科大学院アジア太平洋地域資源センター及びヤンゴン第一医科大学が共同で、アジア太平洋域における今後の環境問題解決に向けた研究連携を強化し議論を牽引していくべく、今後さらにネットワークを強固にしながら研究を進めていく意思を示しました。

 
 フォーラム翌日の1月23日には、関連イベントとして、同会場において、NIESとUM1が主催する一般公開シンポジウムPublic Talk - Recent environmental issues faced in Asian countries - が開催され、現地の関心の高いトピックである災害防止、都市のレジリエンス、大気汚染管理等についての講演が行われました。Public talkには、ミャンマーの大学や研究機関の若手研究者を中心に約80名の参加がありました。

 
 国際フォーラムは今年度で第5回を迎え、テーマの広がりとともに、アジア地域の横断的な研究ネットワークが確実に拡大し強化していることが感じられます。各回のフォーラムの成果が着実に課題解決に繋がるよう、アジア各国の研究機関との連携のもとでの研究活動をいっそう強化するとともに、これまでの共催機関等と国際フォーラムなどの場を通じて国際的な環境研究のフロンティアを開いていくことができればと考えています。

ヤンゴン第一医科大学学長 Prof. Dr. Zaw Wai Soeによる基調講演
写真4 ヤンゴン第一医科大学学長
Prof. Dr. Zaw Wai Soeによる基調講演
ポスター賞受賞者
写真5 ポスター賞受賞者

関連新着情報

関連研究報告書

表示する記事はありません