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2013年7月31日

国立環境研究所の災害環境問題への取り組み

Summary

国立環境研究所では、東日本大震災の直後から災害環境問題に取り組んできました。
その取り組みの成果を紹介します。

災害・放射能汚染廃棄物への取り組み

 これまで国立環境研究所に蓄積してきた資源循環・廃棄物研究分野の知見や経験、ネットワークをベースに、研究を進めました。

 災害廃棄物の処理や処分への取り組みとしては、まず、震災直後に「震災対応ネットワーク」を立ち上げ、被災地で発生するさまざまな技術的課題に対応した技術レポートを作成しました。このレポートは環境省の通知などにも活用され、現場での災害廃棄物や生活廃棄物への対応に大きく貢献しました。

 また、海水をかぶった廃木材の焼却処理の安全性の確認や津波堆積物の化学性状の把握、仮置場での火災発生防止策などの調査、技術的助言や指導も行いました。これらの成果は環境省の通知や指針にも反映されています。

 放射能汚染廃棄物の処理や処分への取り組みとしては、まず廃棄物の種類によって、放射性セシウムが溶け出す特性が大きく異なる原因を突き止めるとともに、草木類などの腐敗性の廃棄物を保管する際に、廃棄物を積み上げる山の高さを制限することなどが、火災の予防措置に必要であることや、放射性セシウム濃度の高い焼却飛灰の洗浄技術に関する知見を得ました。

 さらに、温度が高い焼却炉内では、放射性セシウムが耐火物に蓄積することで空間線量が高い場所と付着灰のセシウム濃度が高い場所が異なり、耐火物中に放射性セシウムが浸透し、蓄積していることを明らかにしました。また、溶出性の高い焼却飛灰を埋め立てる時は上部に遮水層を設け、降雨浸透水と飛灰を接触させないようにすることが必要だとわかりました。

 こうした知見をもとに、各研究機関と連携して廃棄物などの放射能調査や測定に関する暫定マニュアルを早期に策定し、公表しました。このマニュアルは、国のガイドラインのベースになりました。また、焼却施設の排ガス試料採取方法に関する技術的課題に対する対応策を検証しました。

 また、一般廃棄物焼却施設の焼却灰に含まれる放射性セシウム濃度を調査しました。その結果、放射性セシウムは季節変動をしながら減少していることや、地域に沈着した放射性セシウムの焼却ごみへの移行率は、一般廃棄物焼却施設の多くで1%未満であり、人口密度の高い地域ほど焼却ごみへの移行率が高くなる傾向があることがわかりました。

図7
図7 災害・放射能汚染廃棄物への取り組み
 この図に示す研究構成を基本として、中長期的な視点から、災害・放射能汚染廃棄物に関する研究をさらに深化させ、従来研究の学術的基盤強化にフィードバックさせるとともに、災害と環境に関する新たな学術体系の構築にも取り組んでいきます

環境の実態把握と影響評価

 放射性物質による環境汚染に対処するために、事故直後から環境中の放射性物質の実態を把握し、その動態を解明しました。さらに、今後の動向を予測するための研究を行いました。

 事故直後から大気中の放射性核種を測定し、核種構成や粒径分布を明らかにしました。さらに、筑波山や霞ヶ浦において放射性物質の動態の計測も開始し、森林や湖沼、河川などにおける放射性物質の蓄積・循環・移動の過程を把握し、森林除染などの対策に貢献しました。

 さらに、大気シミュレーションモデルを用いて、放射性物質の大気中での広がりと地表面への沈着量分布をいち早く明らかにするとともに、放射性物質の広域的な環境動態モデルの構築を進め、将来予測を含む環境シミュレーションを開始しました。また、家庭内のさまざまな被ばく経路ごとに被ばく量を測定し、ヒトの被ばく総量を把握しました。

図8
図8 環境中での放射性物質の動態解明と影響評価研究の概要
 ①環境動態計測、②環境モデリング、③ヒト暴露解析、④生物・生態系影響調査を総合的に実施し、汚染された地域の環境を回復し、安全・安心に生活できる環境を取り戻すための科学的情報をさらに蓄積、発信していきます。

安全・安心な社会の創造

 被災地では、基幹となるライフラインや住宅の復旧整備が急速に進められています。まちづくりを支援するために、地理情報システムを活用した環境都市の評価システムを被災都市に適用しています。このシステムは、環境都市研究の一環として開発したものです。また、環境未来都市として選定された福島県新地町と協定(平成25年3月13日)を結び、協力体制を築きました。さらに、原発事故後のエネルギー需給や温暖化対策の見直しが進められているため、日本のエネルギー需給や低炭素社会へのシナリオの再検討を始めました。

 まず、復興都市づくりの計画に対して地域エネルギーシステムの分野から貢献するため、地理情報を活用した計画評価システムを構築しました。次に、福島県北部と宮城県南部の沿岸域9市町を対象としてケーススタディを行い、この地域の民生需要と賦存エネルギー量を比較しました。その結果、地域には十分な資源が存在しており、循環・再生可能エネルギーを活用すれば効率の高い都市再生が可能なことがわかりました。また、大震災・原発事故後のエネルギーと温暖化対策について、統合評価モデルを用いて原発比率ごとの、GDP、家計消費支出、温室効果ガス排出量への影響を推計しました。

津波・地震による環境、健康、生物・生態系への影響評価

 津波により、化学物質を含んだ海底堆積物が被災地に拡散し、地震による地形変化は、人と生物の生息環境を大きく変化させました。こうした災害に起因するさまざまな環境変化が環境や人の健康、生物・生態系にもたらした影響を調査し、評価するための研究を行いました。

 被災直後から継続的に被災地の津波堆積物の大気・環境水への影響調査を行い、化学物質などの環境や健康影響についての情報を発信しています。

 また、現地調査の結果、津波によって大きな攪乱を受けた後の沿岸・海浜生態系は、津波攪乱前に設置された人工構造物の影響と新たな環境変化の双方の影響を受けていました。海中では、津波により流出した重油や海底堆積物、炎上軽質油由来の多環状芳香族炭化水素が混合し、海底に沈殿していました。再生に向けて観測を続けるとともに、底質環境への影響を注視していくことが必要です。

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