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日本とシンガポールにおけるサイガ角の需要減少(令和 5年度)
Reducing demand for saiga horn in Japan and Singapore

研究課題コード
2326KZ001
開始/終了年度
2023~2026年
キーワード(日本語)
野生動物取引,サイガ,消費者行動,行動変容,マーケティング
キーワード(英語)
Wildlife trade,Saiga,Consumer behaviour,Behaviour change,Marketing

研究概要

サイガ(Saiga spp.)は中央アジアからカザフスタンを主な生息地とする羚羊種であり、オスは特徴的な角を有する。アジア諸国では、野生生物の角は伝統的な薬品として重宝され、古来より医学的分野で利用されてきた。しかし、角の取引を目的とした無計画なオスの選択的狩猟や密猟により、ここ数十年で野生のサイガの個体数は著しく減少した。これを受け、1995年には絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)の付属書IIに登録されたのを契機に、アジア各国で、サイガの保全に向けた介入や消費者動向の調査研究が行われた。その結果、ここ5年で個体群が増加傾向に転じたことが確認され、2023年には絶滅が危惧されないレベルまでの回復を遂げた。その一方で、依然としてサイガの角の取引は継続されている。そのため、サイガの持続的な保全の観点から、角への需要削減や変化を目的に需要者側に対する介入や行動変容アプローチの重要性が近年ますます認識されるようになってきている。
本研究では、サイガの角における主な貿易国である日本とシンガポールに着目し、需要者である消費者の動向把握および行動介入を通じ、消費の普及と促進に寄与する要因を明らかにし、需要減少のアプローチを構築することである。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:政策研究

全体計画

本課題は2023年から2026年にかけて以下の年次計画を軸に遂行する。
【2023年度】
先行して実施しているシンガポールチームの研究成果を念頭に、オックスフォード大学等の研究者等と研究デザインについて議論を開始する。

【2024年度】
日本におけるサイガの角に対する消費者の意識や態度の把握を目的に、国内でのアンケート調査を実施する。さらに、消費者や医師、小売業者等の販売に係るステークホルダーへのインタビュー調査を併用し、消費者需要における社会文化的背景を把握すると共に、需要減少に向けた行動変容を促進する上での重要因子の特定を目指す。さらに、特に需要が高い消費者を対象としたワークショップを開催し、これらのグループの見解や潜在的な認識を把握し、行動介入策のアイデアを創出する。

【2025年度】
サイガの角に対する消費者需要は、消費者の性別、年齢等の属性により異なると予想される。そのため、既にアンケート調査等から得られている知見をベースに、消費者のセグメントを行う。その上で、サイガ角の需要削減に最も寄与する消費者グループを特定し、介入の優先順位を明らかにする。また、ワークショップの結果と特定された行動促進要因に基づき、実現可能性、期待される効果、国特有の状況、利用可能な資源に基づいて、少数の介入策を選択する。


【2026年度】
混合研究法によるインパクト評価の枠組みを導入する。質問票ベースの準実験的アプローチをもとに、介入が行われなかった場合の反実仮想を構築し、変化の大きさを測定できるようにする。同時に、専門家や関係者の知識を活用した参加型の行動変容理論を構築し、介入と関心のある結果との因果関係(またはその欠如)への理解を深め、理論に基づく評価も行う。

今年度の研究概要

先行して実施しているシンガポールチームの研究成果を念頭に、オックスフォード大学等の研究者等と研究デザインについて議論を開始する。

外部との連携

本研究課題はオックスフォード大学(代表:Dr. Amy Hinsley)、シンガポール国立大学等との共同研究である。

課題代表者

久保 雄広

  • 生物多様性領域
    生物多様性保全計画研究室
  • 主任研究員
  • 博士(農学)
  • 経済学,心理学,農学
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