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長良川流域における森・里・川の気候変動適応が中山間地域の生業の持続性とウェルビーイングに与える影響の研究(令和 5年度)
Assessing the influence of climate change adaptations on the sustainability and well-being of mountainous livelihoods in the Nagara River basin.

予算区分
2MF-2301
研究課題コード
2325BE001
開始/終了年度
2023~2025年
キーワード(日本語)
水産業,林業,生態系サービス
キーワード(英語)
fishery,forestry,ecosystem service

研究概要

国内で把握されつつある水温上昇が,長良川流域においてはアユの分布及び生活史に明瞭な影響を及ぼしており,渇水・猛暑では1300 年続く長良川鵜飼の区間を含む約 20kmからアユが姿を消すという過去にない形で顕在化している.秋季の水温上昇はアユの産卵降河を約一か月遅らせており,再生産を含む生活環全体に影響が及んでいる.一方,流域の大部分が人工林である主要支川からの水が長良川本川を冷却し,水温上昇を抑制していることも明らかとなっている.これらの支川流域は森林環境譲与税や J-credit 等を活用した森林整備が進むことが期待されている地域でもあり,皆伐地・再造林地が増加する見込みである.炭素吸収源としても期待される森林の在り方は,流量変動(洪水・渇水)・水温・土砂栄養塩等の物質循環を介して,河川生態系とこれを地域資源とする産業への温暖化影響とのトレードオフを生じさせる可能性が高い.本研究では3つのサブテーマを設定し,生態系サービスの源泉となる自然環境システムと社会制度・産業・行政施策との調整という側面に加え,適応シナリオが農林水産業の持続可能性や中山間地域住民の Well-being にどのような影響をもたらすのかを明らかにしながら,環境課題と地域課題の同時解決が可能な地域シナリオを提示することを目指す.

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:政策研究

全体計画

本課題では以下の3つのサブテーマごとに研究を進める
【サブテーマ1: 森林管理・中山間地農業が長良川システムと炭素循環に与える影響】
皆伐地・再造林地の中長期モニタリングデータと,3 種のモデルシミュレーション(森林炭素固定, 森林水文,水温形成プロセス)を活用し,長良川流域における森林整備(皆伐・再造林)が,長良川システム全体に及ぼす影響を検討する.
【サブテーマ2: 気候変動適応策としての河川環境管理・水産資源管理・持続可能な観光を支える科学的知見創出】
県が構築する水産資源管理体制に研究者が参画し,気候変動下における資源管理の根拠となる科学的知見を創出・提供する.アユの再生産も含む生活環に対する温暖化影響を調査・分析する.長良川鵜飼等,生態系の恵みに依拠する観光資源の持続可能性を高めるための適応策を共創する.
【サブテーマ3: 生態系の恵みに関わる生業の持続可能性とウェルビーイングに適応シナリオが与える影響】
中山間地域の人口や生業の衰退が適応シナリオに限界をもたらす可能性,適応や脱炭素の施策が住民の幸福度に与える影響に着目する.長良川流域において生態系サービスを涵養/利用する主要な生業の実態を把握する.移住者・旧住民の主観的幸福度と 環境要因(自然とのふれあい,生態系の恵みとの関わり)の関係性の調査手法を開発・ 試行し,適応シナリオが生業と Well-Being に及ぼす影響を分析する.

今年度の研究概要

担当者が加わるサブテーマ2では、気候変動下での水産資源、河川生物多様性の予測を行うために、流下仔魚調査やアユ耳石分析による再生産期横帯の生息履歴解明、河道掘削後の瀬淵環境のモニタリング調査並びに水理モデルによる再現計算を行う。担当者は、この中で水温を含めた環境要因のモニタリングと、環境DNAと実調査データを用いた水温-魚類分布モデルの構築を行う。

外部との連携

代表機関・研究者:岐阜大学・原田守啓准教授

課題代表者

末吉 正尚

  • 生物多様性領域
    琵琶湖分室(生物)
  • 研究員
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