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地上観測・航空機による大気中のGHG動態の把握(令和 3年度)
Observation of the atmospheric GHGs by using ground sites and aircraft

予算区分
SII-8-1-(2)
研究課題コード
2123BA013
開始/終了年度
2021~2023年
キーワード(日本語)
温室効果ガス,大気観測,都市大気,同位体
キーワード(英語)
greenhouse gases,Atmospheric observation,Urban air,isotope

研究概要

令和3年度戦略的研究開発課題(推進費SII-8課題)のテーマ1では、都市から全球に及ぶ様々な空間スケールの温室効果ガス収支を定量的に評価するために最適な大気観測ネットワークの構築および大気モデル・逆解析システムの開発が目指されている。同様のプログラムは欧米では既に進行中であるが、アジアではそうしたプログラムの確立が急務となっている。本研究課題では、上記テーマ1のサブテーマ(2)として、マルチスケール温室効果ガス収支の迅速かつ継続的な定量化を実現するために、アジア・太平洋地域での大気観測データの継続的な取得体制および速報性のある整備体制の構築を目的とする。推進費SII-8課題全体では2022年12月末までに2021年度中の温室効果ガス収支評価の速報値を出し、それ以降も継続して収支評価を続けることを目標にしており、本研究ではその目標に合わせてデータ取得・整備体制を構築する。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

・都市域からのGHG排出の把握のための大気観測システムの開発
推進費SII-8課題のテーマ1のサブ1で計算される濃度変動を観測結果と比較し、観測がどの程度東京都市圏の排出シグナルを捉えているかを調べる。その上で、さらに有効な観測について検討する(1年目)。また、簡易設置型高精度大気中GHG観測システムを開発し(2年目)、上述の都市排出把握に有効と推定された地点(1地点)において追加観測を実施することを目指す(3年目)。都市域からのGHG排出量を効率的にとらえるための移動体を用いた観測として、日本沿岸域を定期的に運航する貨物船での大気観測を開始する(1年目)。最初に船舶の排気ガスの影響を取り除き、都市域からの排出シグナルを分離する手法の開発を目指す(2年目)。また、貨物船観測が捕捉できる範囲をモデル計算結果との比較から明らかにする(3年目)。
・同位体・多成分観測に基づく起源分離・放出量変動推定
波照間やアジア域で採取される大気試料の13CH4測定から、CH4変動に対する発生源毎の寄与率を推定する(1年目)。さらに、13CH4観測をより高時間分解能で実施するために、レーザー分光装置を用いた半連続的測定システムの開発を目指す(2年目)。最初に高精度化のためのCH4の分離・濃縮システムの開発に着手し、これをレーザー分光装置と組み合わせることで実際の大気観測への応用を目指す(3年目)。また、GHGと同時に各種関連成分の観測(CO、O2、14CO2等)を実施し、GHGとの相関関係から放出量の時間変動や空間分布についての制約条件を課すことができるかどうか検討する(1〜3年目)。
・マルチスケール大気観測データの迅速な整備体制の構築
これまで国環研が構築してきたアジア太平洋域における大気中GHGの観測網を活用し、取得されたデータ精度の検証を進めながら、定常的に大気中GHGの時空間変動を把握することで、テーマ3で取りまとめる速報的な評価報告書作成に貢献する(1〜3年目)。また、観測結果を精査しできるだけ速やかにサブ1に提供できるよう、データ処理システムを構築する(2年目)。さらに、一般のデータ利用促進のため、データ公開の手続きを確定し、国環研が運営する地球環境データベースでの公開を目指す(1〜3年目)。

今年度の研究概要

都市域からの温室効果ガス排出量を把握するために、東京スカイツリー・代々木等で観測されるCO2・CH4についてサブテーマ1−(1)で実施されるモデル計算結果と比較し、観測される短期的な変動がモデル計算によってどのように再現されるかを調べ、実際の観測の空間代表性を評価する。また、排出量推定精度を向上させると期待される追加的な観測地点での観測に即応するための簡易設置型高精度大気中温室効果ガス観測システムの開発に着手する。さらに、内航船をプラットフォームとした大気観測を開始して得られた結果について、自船や他の船舶の排ガスの影響を除く手法を開発して観測データに適用することで、沿岸都市域からの温室効果ガス排出の影響を検証する。
波照間ステーションにおいて大陸で排出の影響を受けた汚染イベントを捉えるための大気サンプリングを実施し、同位体比分析を利用して大陸におけるメタン発生源の寄与率を推定する。同様に、インドやバングラデシュで実施されたボトルサンプルを分析し、アジア域におけるメタン起源について調べる。また、レーザー分光装置による13CH4の高精度連続測定に向けてCH4濃縮システムの開発に着手する。さらに、関連トレーサー成分と温室効果ガスとの相関関係を調べ、相対的な発生源強度や分布の変化に係る情報を抽出する。
地上ステーションや貨物船などの既存ネットワークから得られる大気中温室効果ガスの観測データを収集・整備し、サブテーマ1−(1)へ速やかに提供する体制を構築する。また、得られた結果からアジア・太平洋地域における温室効果ガスの大気中の動態を把握する。

課題代表者

遠嶋 康徳

  • 地球システム領域
    動態化学研究室
  • 特命研究員
  • 理学博士
  • 化学
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担当者