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世界全域を対象とした技術・経済・社会的な実現可能性を考慮した脱炭素社会への道筋に関する研究(令和 3年度)
Global analyses of technological, economic, and social feasibility of the pathway towards a zero-carbon society

予算区分
1-2101
研究課題コード
2123BA007
開始/終了年度
2021~2023年
キーワード(日本語)
統合評価モデル,実現可能性,エネルギーシステム,ライフスタイル変革,社会的な受容可能性
キーワード(英語)
Integrated Assessment Model,Feasibility,Energy System,Lifestyle Change,Social Acceptability

研究概要

本研究は?革新的な統合評価モデルの開発・改良を行い、定量的なシナリオ分析を通じて技術的・経済的な実現可能性を評価する。統合評価モデルは、これまでIPCC、国際モデル比較研究等様々な場で使われてきたAIMモデルを基盤としつつ、新しいエネルギー・食料に関するモデル等をそこへ加える。特に、抽象的に扱ってきた技術種・部門分類・地域区分等の具体性・解像度を上げ、シナリオの実現可能性に迫る。そして、?その定量情報を基に社会的な実現可能性をステークホルダ会合等から明らかにする。?その結果を考慮し、革新的技術の導入・ライフスタイル変革や炭素税以外の様々な環境政策等を追加的な入力条件として、改良した統合評価モデルにて経済、排出量、エネルギー需給、食料消費等を定量化し、大規模GHG削減を実現する道筋を示す。

手法と対象の観点からサブテーマを3つ設定し研究に取り組む。テーマ1では、経済・社会的な観点から実現性を検討するもので、経済モデルとしては応用一般均衡モデル(AIM/CGE)と家計の所得・消費構造をミクロに扱うモデルを組み合わせた新しい経済モデルを用い、マクロ経済と格差を扱う。AIM/CGEは他サブテーマの数値を統合して整合的なシナリオを描くプラットフォームとしても用いる。また、ステークホルダ会合を実施し、統合評価モデルの出力及び本研究より得られる最新の科学的知見を社会的に問うことで、実現可能性を検討する。テーマ2では、主にエネルギー技術的観点からの実現可能性を検討する。エネルギー技術モデルは、最も先進的な発電部門の解像度を持つモデルを開発する。テーマ3では、農業・食料の観点からその実現性を検討するもので、食料需要の詳細な内容を定量化し、食のライフスタイル及び深く関連する健康影響を描写するモデルを開発する。

環境政策への貢献として、日本国内における長期目標の評価・検討、IPCC等の国際的な報告書への継続的な研究知見のインプットなどが期待できる。

研究の性格

  • 主たるもの:政策研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

パリ協定の2℃、1.5℃目標の達成に必要な短中期的な削減努力の実現可能性を技術的・経済的・社会的な観点から検討し、これらを考慮した上で脱炭素社会ビジョンへの道筋をライフスタイル変革・技術革新や環境政策と併せて提示する。
・技術的な観点は、エネルギー起源、農業起源排出量削減技術の普及スピード・マーケットシェア、座礁資産の規模で評価する
・経済的な観点は、マクロ経済影響(GDP損失、家計消費損失)と所得格差で評価する
・社会的な観点は、統合評価モデルの入出力条件を一般の市民・専門家を含むステークホルダに問うことで評価する

環境政策は既存研究で一般に用いられる炭素税だけでなく、各種環境配慮型機器や対策への補助金等を想定する。ライフスタイル変革は既存文献を参考にしつつ、エネルギー需要低減や環境負荷を低減する(畜産物を減らした)食ライフスタイルを主として検討する。これらを統合評価モデルによるシナリオとして提示する。

本課題で開発する日本を含むグローバルシナリオはインターネット上のデータベース、および一般向けに分かりやすくまとめた年次レポート形式で公開し、ESGやTCFDなどを含む広く環境に関連する企業戦略策定や日本の中央政府・地方自治体の環境政策策定時に使えるようにし、地域循環共生圏へ向けた参考資料となるようにする。

なお、新型コロナウィルスにより生じた行動変容等の影響は統計等の観測情報が整ってき次第随時将来の社会経済条件に反映させることを検討する。

今年度の研究概要

(サブテーマ1)
世界経済モデルを用いて大規模削減時の各種関連指標を定量化する。また、経済モデル(AIM/CGE)の改良を実施する。経済的な実現可能性として気候緩和費用、気候緩和による産業間への影響、労働投入量変化などを考慮する。社会的実現可能性の検討のためにステークホルダ会合の設計、既存の緩和策シナリオの実現可能性に関する論点整理を行う。

(サブテーマ2)
これまで日本を対象に分析を行ってきたエネルギー技術モデル(AIM/Technology)を改良し、対象範囲を世界全域に拡張するとともに、個別のエネルギー技術の普及速度や変動性再生可能エネルギーなど、急速なエネルギーシステム転換の障壁を明示的に考慮できるモデルを開発する。例えば、電力の需給を1時間単位で解析する分解能を持ち、詳細な技術的実現可能性が検討可能となる。

(サブテーマ3)
世界全域を対象とした食料需要モデルを開発する。食料需要の推計は将来の人口GDPが得られる全世界184か国で実施する。サブ1で用いる家計モデルのデータである家計調査等のマイクロデータ・それらを世界銀行が集計した消費データを活用することで所得階層別の食料需要のモデル化を行う。

外部との連携

研究代表機関は京都大学で、国立環境研究所はサブテーマ1と3の分担者として参画する。各サブテーマの研究体制は以下の通り。
サブテーマ1:京都大学、国立環境研究所
サブテーマ2:京都大学、滋賀県立大学
サブテーマ3:立命館大学、国立環境研究所

課題代表者

朝山 慎一郎

  • 社会システム領域
    経済・政策研究室
  • 主任研究員
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担当者