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内閣府で仕事した2年2ヵ月

【巻頭言】

原澤 英夫

 日本の科学技術政策の司令塔の役割を果たしているのが、内閣府の総合科学技術会議です。今回、国立環境研究所(国環研)から内閣府に出向し、総合科学技術会議事務局の環境・エネルギー分野の担当参事官として、平成20年4月より2年2ヵ月にわたり、科学技術政策を担う貴重な機会を得ました。担当した仕事の一端を紹介します。

 日本の科学技術政策の基本方針を示すのが、科学技術基本法とその実施計画である科学技術基本計画です。赴任した年は、第3期科学技術基本計画(平成18~22年度)の3年目に当たる年で、この基本計画に沿って環境・エネルギー分野の科学技術施策の進行管理、すなわちPDCA(計画・実施・評価・改善)サイクルを回すことが主たる仕事で、比較的楽と聞いていました。ところが科学技術を取り巻く内外情勢は変化しており、赴任したその日から、「環境エネルギー技術革新計画」のとりまとめを、有識者議員、外部専門家によるワーキンググループの主導のもとに進める事務局を担当したのが初仕事でした。非常に短期間で計画をとりまとめ、5月19日の総合科学技術会議の本会議で承認されました。以降、この計画がいろいろなところで活用されることになります。同年7月には洞爺湖サミットがあり、その際に、温暖化対策や低炭素社会づくりなどの基本的な報告書(英文)として配布され、その直後に閣議決定された「低炭素社会づくり行動計画」にも活用されました。この計画は、各省連携で環境エネルギー技術の研究開発を促進するための羅針盤としての役割を果たすものとなりました。

 2年目は第3期計画の中間フォローアップで始まりましたが、9月に政権交代があり、それ以降、科学技術政策も驚くほど大きく転換しました。10月に総合科学技術会議で了承された平成22年度の概算要求の方針(この年2回目)では、グリーンイノベーションを中心とした新たな方向性を打ち出しました。12月30日に公表された新成長戦略(基本方針)でも、グリーンイノベーション、ライフイノベーションが将来の日本の成長や雇用を支える中核として位置付けられ、それらを進めるための予算システムも、パブリックコメントや記者発表などを通じて公表、透明化が進みました。また、各省庁の概算要求前に取り組むべき科学技術の重要な課題を示すアクションプランなど、次々と新しい施策が政治主導のもとで打ち出されました。アクションプラン作成の途中で、同じく国環研のアジア自然共生研究グループの村上正吾・副研究グループ長と交代しました。

 こうした新しい流れと並行する形で、第4期科学技術基本計画(平成23~27年度)の策定が進んでいます。赴任した平成20年の年の暮れから、内外の科学技術の動向、第3期計画の問題点の分析などについて有識者議員を中心とする懇談会で議論が開始されました。その後基本政策専門調査会で継続して審議が進んでいます。第2期と第3期計画は、環境やエネルギーなど分野別に推進戦略が策定され、それにもとづいて研究や技術開発が進められてきましたが、第4期計画は、これまでの成果をもとに、より課題解決を重視した研究へと舵が切られようとしています。私は、直接担当していませんでしたが基本計画が大きく変わりつつあることを日々実感していました。本稿が国環研ニュースとして出版される頃には、第4期計画の全容が明らかになるはずです。日本の将来の成長のために、その原動力となる科学技術の研究開発は今後とも重要性が高まることは確かです。そうした中で、環境を守り育てる研究をどう進めるか、来年4月から開始される国環研の第3期中期計画もこうした大きな流れにどう対応し、貢献していくかが問われていると言えるでしょう。

(はらさわ ひでお、社会環境システム研究領域長)

執筆者プロフィール

原澤 英夫

 内閣府で仕事をした2年2ヵ月は忙しい毎日で、つくばから霞ヶ関への通勤は結構大変でした。さらに政権交代といった大きな変化もあり、貴重な経験ができました。折角の経験を国環研の第3期中期計画にどう活かしていこうかと思料している今日この頃です。