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気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)・京都議定書第3回締約国会合(CMP3)参加報告

亀山 康子

 昨年(2007年)12月3日から15日までの2週間,インドネシアのバリにて,上記会合が開催されました。国立環境研究所からは大塚理事長をはじめ十数名が参加し,さまざまな形で関わりました。以下,会議の概要を簡単に説明し,国立環境研究所職員の役割を紹介します。

1.COP13,CMP3の概要

 気候変動枠組条約は1992年に採択された条約で,地球温暖化問題への国際的取り組みに関する包括的な国際合意です。1995年に第1回締約国会議(COP1)が開催されて以来,毎年締約国会議が開催され今回が第13回目となりました。他方,京都議定書は,気候変動枠組条約の下に1997年に採択された国際合意で,先進国の2008~2012年の5年間の排出量目標が掲げられている他,排出量取引制度や森林吸収量の算定方法など,主に先進国での取り組み方法について詳しく決められています。こちらは2005年に第1回締約国会合(CMP1)が開催されて以来,やはり年に1回の頻度で開催され,今回が3回目でした。これら2つの会議の構成国は,京都議定書に米国が参加していない点を除けばほぼ同一ですので,同時期・場所で開催することになっています。

 今回バリで最大の争点となったのは,京都議定書の排出量目標が終了する2012年以降の国際的取り組みについてどのような交渉を実施していくかという点でした。京都議定書が採択された10年前と比べると,一部の途上国の経済発展やそれに伴う温室効果ガス排出量は急速に拡大しており,先進国にさらなる削減努力を求めるとともに,一部の途上国に対しても対策を始めてもらう必要性が高まっていました。昨年の会合までは,米国の京都議定書への不参加を理由に自らの対策を拒んでいた途上国でしたが,今年は違いました。世界各国での異常気象の増加,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書の公表や,IPCCおよびゴア前米副大統領によるノーベル平和賞受賞などにより,地球温暖化問題に関する国際世論の関心が大きく高まる中で今回のバリ会合が開催されました。

 最終日に合意された2つの合意文書は,地球温暖化に立ち向かおうという国際的機運の高まりと今後の交渉の困難さを同時にはらむものでした。COP13では,包括的な協力を今後2年間で深めていこうとするバリ活動計画(バリ・ロードマップ)が合意されました。ここでは先進国,途上国ともに排出抑制策や温暖化影響への適応策について議論すること,その過程において途上国の森林保全や技術移転,資金的支援の重要性を考慮していくことなどが決められました。他方,CMP3の方では,2001年以来協議が続いている先進国の2013年以降の排出削減目標の設定に関して,2009年までに合意できるよう詳細なスケジュールがとりまとめられました。

 2009年末の合意に向けて,今年(2008年)には上記2合意をふまえた交渉が本格化するだけでなく,7月には洞爺湖でG8主要国サミット,秋には米国大統領選など,温暖化対策に関する交渉に影響を及ぼす重要なイベントが目白押しです。国立環境研究所も世界の動向に適切な時期に適切な情報をインプットすべく,研究活動を進展させていく予定です。

会議の写真
写真 COP13,CMP3の本会議場の様子

2.国立環境研究所スタッフ@バリ

 バリ会合では,国立環境研究所職員はさまざまな形で参加しました。

 a.交渉団の一員として : 毎年数名が日本政府の交渉団の一員としてCOPやCMPに参加してきました。研究所の研究成果を逐次交渉に反映させられるというメリットと,交渉の中身を研究者が直接理解することで,今後より政策に役立つ研究が遂行されるというメリットの2つがあります。通常,研究者が行政官よりも長期にわたって同じテーマを追うことが多いことを考えれば,一つの議題を何年にもわたって担当できるという長期的なメリットも挙げられます。

 b.サイドイベントの開催 : 毎年COPには,交渉に従事する政府の行政官のみならず,研究者,環境保護団体,産業界関係者など多数の関係者が集まります。今年バリでは総勢1万5千人ほどの参加者があったと聞きます。これらの関係者の多くは,昼休みや夕刻時の時間帯にサイドイベントという2時間ほどの会合を開催し,日頃の研究成果を発表したり著名な専門家を招待したパネルディスカッションを行ったりします。今回国立環境研究所は2つのサイドイベントを開催し,どちらも多数の聴衆を得ました。このようなサイドイベントは,研究所の研究成果を世界中の研究者にアピールするためには大変有効な手段といえます。

 c.展示ブースの開設 : これだけ多数の参加者が集う会議の会議場では,廊下やホールに世界各国の研究所や団体が展示ブースを設置して,報告書などを配布します。国立環境研究所でも会期中ブースを開設し,訪れる会議参加者には研究所や報告書の内容を適宜丁寧に説明しました。

 このような多様な形で会合に関わることで,国立環境研究所の活動を国際的にアピールすることができました。今後ともこのような効果的な宣伝の場をとらえていきたいと考えています。

(かめやま やすこ,地球環境研究センター
温暖化対策評価研究室主任研究員)