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ラムサール条約

環境問題豆知識

広木 幹也

 日本では200種以上の水鳥がみられますが,その70%以上は高層湿原や湖沼,あるいは干潟などの湿地に季節的に飛来して繁殖したり,冬を越したり,あるいは渡りの途中で餌をとり休憩していく渡り鳥です。これらの渡り鳥を保護するためには,繁殖地,越冬地さらには渡りの途中で餌をとり休憩する湿地も含めて保全する必要があります。そのため,これらの国境を越えて渡りをする鳥を保護するためには,一つの国の努力のみでは不十分で,国際的に取り決めに基づいて,それぞれの国が重要な湿地を保護することが必要となります。そこで,世界各地で危機に瀕している湿地と水鳥など湿地特有の動植物の保全を図るために,1971年にイランのラムサールで「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)」が締結されました。条約では,締約国は国内に一つ以上の重要湿地を指定し,条約事務局に登録して保全し,適正に利用するための計画を作成し,実施することを定めています。

 日本は1980年に25番目の加盟国として条約を批准し,これまでに,釧路湿原,クッチャロ湖,ウトナイ湖,霧多布(キリタップ)湿原,厚岸(アッケシ)湖・別寒辺牛(ベカンベウシ)湿原(北海道),伊豆沼・内沼(宮城県),谷津干潟(千葉県),佐潟(サカタ,新潟県),片野鴨池(石川県),琵琶湖(滋賀県)の10カ所の湿地を登録しています。

 また,ラムサール条約締約国会議が3年に一度開催され,1993年には第5回の締約国会議が釧路市で開かれ,締約国政府代表のみならず多くのNGOもオブザーバーとして参加して,活発な議論が行われました。本年5月10日から18日にはコスタリカで第7回の締約国会議が開催され,加盟各国の湿地保全への取組状況や問題点について,報告および議論がなされることになっています。

(ひろき みきや,生物圏環境部環境微生物研究室)