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平成7年度国立環境研究所予算案の概要について

立川 裕隆

 平成6年12月25日に7年度予算案が閣議決定された。この予算案については,税収の伸び悩み等を反映し,全般的には実質ベースで0.3%増の緊縮型予算であったが,環境庁全体では714.6億円が計上され,41.4億円の増額,6.1%の伸びを示した。国立環境研究所については,現在,建築中の新実験棟及びその付属施設・機器の運転経費,地球観測プラットフォーム技術衛星ADEOS*1から送信されるオゾン層観測データの処理システムの借料の平年度化*2などの当然増的な経費の伸びが大きいが,全体で76.5億円(うち,試験研究費は42.1億円)*3が計上され,6年度予算に対して6.6億円(同5.7億円)の増額,9.5%の伸びを示した。以下に7年度国立環境研究所予算案に関する主要な点を紹介する。

 なお,当研究所とも関連の深い地球環境研究総合推進費及び科学技術振興調整費は,各々24.5億円(6.5%増),185億円(19.4%増)が計上された。

1.環境情報提供システム開発調査に係る経費 … 国民等の自主的な環境保全活動を推進するため,環境基本法により,環境に係る情報の収集・整備・提供が国の責務とされた。このため,6年度より環境情報源情報,すなわち環境に関する情報の利用方法等に関する情報の収集等を開始している。7年度においては,6年度事業を踏まえ,システム開発,環境情報の収集・加工等を行い,暫定的な運用を開始する(6年度:28百万円→7年度案:126百万円)。

2.特別研究費 … 現在,9課題の研究を実施しているが,6年度で終了する1課題に代わり,「化学物質の生態影響評価のためのバイオモニタリング手法の開発に関する研究」(〜9年度)を開始する。これは,化学物質による生態系への悪影響が注目されているが,自然生態系は複雑な相互関係を持った多種多様な生物から成り立っていることに着目し,生物間相互作用を考慮した新たな影響評価手法の開発について研究するものである。

3.開発途上国環境技術共同研究費 … 平成6年度,2課題の研究(総額50百万円)を実施しているが,新たに「富栄養湖沼群の生物群集の変化と生態系管理に関する研究」(〜11年度)を開始する(3課題総額85百万円)。これは,中国科学院水生生物研究所と共同し,揚子江流域の湖沼群及び霞ヶ浦を調査湖沼として湖沼の生態系管理手法(放流魚類としての適正な種と数の設定,管理手法等)の開発について研究するものである。

4.データベース経費 … 全体で165百万円が計上された(6年度:121百万円)。当研究所の地球環境研究センターは,UNEP*4のGRID事業(Global Resource Information Database,地球資源情報データベース)協力センターとしてデータ作成等を推進しているが,7年度は,IGBP(International Geosphere-Biosphere Programme,地球圏-生物圏国際協同研究計画)が衛星データを用いて進めている土地被覆データの作成事業に協力し,アジア・太平洋地域のデータ作成を開始する。

5.地球環境モニタリング経費 … 全体で1,002百万円が計上された(6年度:789百万円)。地球環境研究センターは平成2年の発足以降,温室効果ガス濃度の監視等各種事業を推進しているが,7年度は,ADEOS-II*5搭載センサーであるILAS-II(改良型大気周縁赤外分光計II型)によるオゾン層観測データの処理ソフトウエア開発基礎調査を開始する。また,新たに,北太平洋海域において,定期船舶を利用した気圏—水圏間の温室効果ガスの交換・収支の観測体制を整備する。

(たちかわ ひろたか,研究企画官)


*1 H2ロケットにより8年2月に打ち上げされることとなっている。
*2 6年度予算では6ヵ月分の借料が予算化されたが,7年度以降は12ヵ月分となる。
*3 いずれも当初予算であり,地球環境研究総合推進費等の移替予算(年度途中で当研究所の予算に移し替えられる予算。6年度:13.6億円)は除いた。
*4 United Nations Environment Programme,国連環境計画
*5 平成10年度末に打ち上げされる予定の人工衛星である。