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新しい自然保護の理念

巻頭言

環境研修センター所長 橋本 善太郎

はしもと  ぜんたろう の写真

 バイオサイエンスの教えるところによれば、人類は動物の進化過程の中では、中間段階の存在であるらしい。ホモ・サピエンスの次には、正に新人類が出現する可能性がある。しかしながら、それがいつの時点で、どのようなメカニズムで実現するかという疑問には、現在の知見は答えてくれない。さて、生物の歴史31億年の中で、非常にドラスティックな事件の一つに、恐竜の絶滅があった。人類の出現する遥か以前、6500万年前に恐竜は忽然と地球から姿を消した。その原因を巡り諸説があるのはご案内のとおりである。一方、生物社会は進化という機能を供え、常に進化し続けてきた。恐らく、原因はなんであれ、恐竜の存在が植物との量的バランスを崩すなど、生物社会にとって重大な支障をきたす結果をもたらしたのではなかろうか。そう考えれば、恐竜の絶滅も生物社会にとっては進化過程のの一現象であった、という考えも成り立つ。

 300万年の歴史しか持たない人類であるが、キリスト誕生の頃人口2〜4億人、今世紀初頭には約17億人、今年初頭が54億人、2050年には 100億人を突破するという。人口だけでなく、一人当たりの資源エネルギー、食糧等の消費原単位も大きな伸びを見せている。地球的規模の環境問題は、すさまじい勢いで伸び続ける(人口)×(原単位)の影響の結果であり、地球環境破壊の行き着くところは生物社会の破綻である。絶滅か、あるいは新人類に地球支配の座を奪われてオランウータンやチンパンジーの仲間入りか、生物社会は自らの進化過程を守るために、遠からず人類に回答を提示するのではないか。

 と言うようなSFを、「環境と開発に関する世界委員会」の裏方をやっていた頃、ケニヤのサバンナに沈み行く太陽を眺めながら考えたものだ。しかし、最近の世の中の状況を見るにつけ、そろそろこんなことも念頭においた、新たな自然保護の理念を立ち上げる時期にきたのではないか、と考えている。

(はしもと ぜんたろう)