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漢字語のとまどい

海外からのたより

松重 一夫

 私にとって初めての海外生活である。大韓民国の首都、ソウル市は人口が1,200万人、東京都とほぼ同じ人口がひしめきあう大都会である。金浦空港からソウル市へ通じるオリンピック道路には車があふれ、町並みは活気に満ちている。街中の景色も東京と見間違うほど良く似ている。さらに、韓国の人々は、体型や顔つきも日本人と似ているので、看板のハングル文字と人々の会話がなければ、まさに、東京の街角に立っているのかと思えるほどである。また、調査に行く八堂ダム(研究所から車で1時間くらいの所にあるソウル市民の水瓶)の付近の風景も、日本の郊外ののどかな田園風景に似ている。

 さて、いろいろな面で非常に似ている韓国において、言葉もまた似ている。韓国語と日本語は、語順がほぼ同じで、単語もハングル固有の言葉もあるがたくさんの漢字語がある。不思議なもので漢字語で表現されると、すぐに理解した気持ちになるところに問題が生じる。同じ漢字語でも韓国語の意味と日本語の意味の違いを痛感させられたことがたびたびある。その一つに、水環境問題を考える上で重要な「下水道」という言葉がある。この言葉の意味の違いは、日本と韓国の下水道システムが異なっていることが原因である。

 下水道とは、下水を処理場へ移送する管路の意味である。しかし、日本の下水道システムでは、各家庭のトイレや排水口から直接下水道へ下水を放流するため下水処理場の無い下水道は存在せず、日本では一般的に、このシステム全体を下水道と言っているように思う。だが、韓国の場合は、し尿がいったん浄化槽で処理された後放流されるため、衛生的な問題がなく、下水道とは、まさにこの管路の意味である。そのため、日本のように下水道=下水道+下水処理場とは理解されないのである。

 環境問題を考える上で、生活様式や生活の中の様々なシステムを理解することが大切である。しかし、生活様式にも言葉にも違いがあり、短い期間で理解することは非常に難しいことだと思う。

(まつしげ かずお、地域環境研究グループ水改善手法研究チーム)

写真 韓国環境庁のスローガン「より清く,より青く」