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2019年3月4日

実はごみが原因。アジアの都市部で起こる洪水、どうやって防ぐ?

NIES国際フォーラムレポート

東南アジア各国では都市部で頻発する洪水が問題になっています。なぜ都市部で洪水が起こるのでしょうか。

都市部での洪水の様子
都市部での洪水の様子(写真提供・石垣智基(資源循環・廃棄物研究センター))

セッション1「洪水リスクと廃棄物管理:『研究から実践へ』-アジアの都市における洪水リスクの低減に向けた廃棄物管理の研究にかかる多分野アプローチ」

このセッションでは、都市部での洪水発生のメカニズムに関わる研究成果が紹介されるとともに、どうやって洪水を防ぐかについての議論がなされました。

今回7人の研究者からの発表で分かったことは、ごみが洪水に深く関わっていることです。 下の写真の通り、アジアの都市ではしばしば水路にごみが溜まり、それらが排水路を塞いでしまうことによって排水できなくなり、洪水の発生につながっています。特に、工事現場から出るごみが最大の要因となっていることが研究から分かってきました。

水路に溜まったごみ。これが原因で都市部でも洪水が起こりやすくなります(写真提供・石垣智基(資源循環・廃棄物研究センター))

ごみがどのように水路を塞いでしまうのか、ごみの種類によって水流の変化が異なることを示したシミュレーション動画は、視覚的にとても分かりやすかったです。発泡スチロールなどの軽いごみは浮くので水路を塞がないけれども、木材などの重いごみは沈んで塞いでしまうのでその分水流が上昇し洪水が起こりやすくなります。

また、洪水のメカニズムに関する研究だけでなく、ごみを捨てるという行動に関する分析結果についても発表がありました。インタビューなどの質的調査を通して、ごみを捨てることで自分の環境に悪影響が及ぶことを認識しているかどうかが重要だということが分かってきました。

パネルディスカッションの様子
セッション1のパネルディスカッションの様子

最後のパネルディスカッションでは、この問題をどのように防ぐのか、対策についての議論がなされました。
発表者らの研究チームでは、ごみの投棄防止のセミナーを開催したり、意識啓発のための動画を作成したりするなどの対策も試みています。人々の意識を変えることは簡単ではありませんが、科学的な知見を提供しながらこの問題に対する理解を深め、長期的な取り組みを続けていくことが重要です。

続いてのセッションは、「メコン河流域:メコン河流域の環境変化と新たな適応戦略」です。

(文・杦本友里(研究事業連携部門))
(写真・成田正司(企画部広報室))