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2016年11月8日

日本、パリ協定を締結!

 私が、マラケシュという街の名前を初めて知ったのは、松田聖子さんの「マラケッシュ」という曲がきっかけでした。調べてみたら、1988年に発表された曲のようです。歌詞の中に、♪マラケッシュ 迷路の町♪という部分があるのですが、こちらに来て、本当に、迷路のようだと感じました。

写真1:筆者が宿泊しているリヤド(中庭を持つ伝統的なモロッコ建築の邸宅を改装した宿)の近く。迷路のようで、大通りに出るまでの道を覚えるのにしばらくかかりました。

 泊まっているリヤドの近くでは、猫をよく見かけます。人間と程よい距離感を保ち、自由に生きているように見えます。

写真2:毛づくろいをする猫。そーっと近づいてみたのですが、あまり気にしていないようでした。

 さて、今日(8日)、日本がパリ協定の締約国となる手続きを済ませたそうです。

 パリ協定の締約国になるには、どのような手続きが必要なのでしょうか。これは、パリ協定にどのように書いてあるかと、各国の憲法や国内法で国際条約を締結する手続きをどのように定めているかによって決まるので、国によって違います。

 日本が多数国間条約を締結する場合の手続きの流れを示します(図)。「条約を締結する」とは、その条約に拘束されることについて国が同意することを意味します。

図:国会承認条約の締結手続き(多数国間条約の場合)
出典:外務省作成の図「国会承認条約の締結手続」を筆者改変

 8日に、パリ協定の締結に必要な議案が衆議院本会議において、全会一致で可決・承認され、同日に国連事務総長宛に受諾書を寄託したとのことです。

 安倍首相は、パリ協定の受諾にあたり、「我が国は、全ての国による排出削減というパリ協定の精神が貫徹されるよう、各国による排出削減の透明性がより高まるようなルールの構築に向け、主導的な役割を果たしていく決意です」との談話を発表しています。

 日本は、8日に、パリ協定の締約国になるための手続きを済ませたわけですが、いつから締約国になるのでしょう?

 パリ協定には、発効後に締結した国については、批准書等の寄託の日の後30日目に効力を生ずる、という規定があります(第21条3項)。このため、日本は、COP22/CMP12/CMA1期間中(11月7日~18日)には、パリ協定締約国にはなりません。したがって、パリ協定第1回締約国会合(CMA1)(11月15日~18日)にはオブザーバー国として参加することになります。

写真3:ジャパンパビリオンで行われた、国立環境研究所(NIES)とマレーシア工科大学(UTM)によるサイドイベント「アジアにおける都市の気候変動実行計画の立案とその実施の最新状況」の様子。日本政府は、COP22でもパビリオンを設置し、日本の研究機関等が行っている温暖化研究の成果のお披露目など、各種イベントが毎日開催されています。詳細は、COP22ジャパンパビリオンのウェブサイトをご覧下さい。

 COP22の2日目は、COP22/CMP12合同全体会合が開催され、各国が今回の会合の成果としてどんなことを期待するかについての意見表明が行われました。気候変動交渉では、自らの意見が通りやすくなるように、意見が同じまたは近い国とグループを組んで交渉に臨みます。こういった意見表明も、交渉グループごとに行われます。

 途上国のグループ(G77+中国(途上国全体のグループ)、アフリカ・グループ、島嶼国グループ、LDC(最後発発展途上国)グループなど)は、概ね、①各国の2020年より前の排出削減目標をレベルアップさせるため、2018年に行われる促進的対話の場をどのように使うか、②途上国の温暖化影響の適応に対する支援が足りないので、これを拡充させること、③資金支援目標をどのように達成するかの見通しを示すこと、などを求めていました。

 これに対し、先進国のグループ(EU、アンブレラ・グループ(EU以外の先進国グループ。日本もここに入っています))は、パリ協定締約国以外の国も含めて、パリ協定の詳細ルールの議論をしていくべきだと発言していました。

 パリ協定の詳細ルールをどのような場で議論するのか。パリ協定締約国以外の国の扱いをどうするのか(詳細ルール策定交渉への参加を認めるか、資金支援等の対象に含めるかなど)。これがCOP22/CMP12/CMA1での大きな論点の一つとなりそうです。

参考資料:

文・写真・図:
久保田 泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)


※全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)ウェブサイトより転載