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2020年2月26日

SATテクノロジー・ショーケース2020でポスター発表を行いました

地域環境研究センター 海洋環境研究室 中田聡史

2020年1月24日(金)に、つくば国際会議場において開催されたSATテクノロジー・ショーケース2020に出展させていただきました。

SATテクノロジー・ショーケースは、SAT(つくばサイエンスアカデミー)が2002年より毎年開催してきた「研究展示会」です。SAT(会長:江崎玲於奈)は「異分野交流による知の誘発」を目指す研究者の交流団体であり、「エネルギー革命~水素社会」というテーマで今年のショーケースが開催されました。会場では、つくばの研究機関のみならず、茨城県内の高校、全国の大学、企業から様々な分野の研究発表展示があり、研究所や学会の枠を越えた活発な意見交換がされているようでした。このような幅広い分野において得られる出会いや知的好奇心はショーケースならではのものです。研究者にとっても企業家にとっても、ショーケースは異分野交流によって研究成果に直接触れられる貴重かつ絶好の場なのだと感じました。また、高校生も熱心に発表しており、研究者顔負けの研究内容を披露されていました。

発表ポスター「四胴ロボット船が収集したビッグデータを活用する海洋予測技術開発 SOCIETY5.0社会へ向けて」PDF[3.2MB]

国立環境研究所からは、研究所の紹介展示と研究者4名によるポスター発表がありました。地域環境研究センターからは海洋環境研究室の私が、共同研究者の二瓶泰範准教授(大阪府立大学)と日本海工(株)の増田憲和氏らともに、ポスター発表を行いました。多くの方に貴重なご意見と熱い応援をいただきました。そして、大変嬉しいことにベスト産業実用化賞を受賞し、私たちの研究成果がある程度評価されたのだという感触を得ることができました。その後の懇親会ではみなさんと呑んだお酒がとても美味しいものとなりました。

二人がかりで参加者に内容紹介する様子(左から増田氏、中田、参加者)。なんとかわかってもらえるよう説明に必死な本人。

私たちは、「四胴ロボット船が収集したビッグデータを活用する海洋予測技術開発」というタイトルで研究発表させていただきました。四胴ロボット船は、自律航行型四胴ロボット船(商標登録:ロボセン)の略称で、沿岸海洋環境を高密度かつ高頻度で自動計測できることを目的に研究開発を進めてきました。それと同時に、このロボセンによって収集された膨大な現場海洋観測ビッグデータを、高分解能海洋シミュレーションにデータ同化という手法で組み合わせて、沿岸海洋環境を高精度に予測する技術開発に取り組んでいます。

興味を持っていただいた大学院生の参加者にロボセンの模型(1/3スケール)を使って説明。日本海工さんが製作された模型はちゃんとホンモノそっくりに動きます。

近年、海洋環境の変化が広く報じられるようになってきました。例えば、気候変動に伴う水温の上昇、豪雨による大量河川出水による低塩分化、それらに付随して貧酸素水塊の発生が併発するという現象が報告されています。この現象によって、養殖魚介類のへい死や生育不良等の課題が顕在化する問題が起きています。さらに、内湾域の水質や流動は時々刻々変化します。それらの実像を正確に把握するためには、高頻度かつ高分解能の3次元的な観測が必要です。しかし、ブイによる定点計測や人力による定期海洋観測などによって収集されたデータは、海洋再現・予測シミュレーションの“答え合わせ”(検証用)としては、観測密度・頻度の点で不十分なのが現状です。こうした制限を克服するために、私たちの研究成果が活かせるだろうと期待しています。そして、閉鎖性水域や養殖場での活用はもとより、湖沼や河川でも適用・拡張できると考えています。現在は、石川県七尾湾において試験運用を計画しており、琵琶湖においても運用実験計画を模索しています。このような研究活動が、内閣府が提唱するSociety5.0を念頭にした、水環境計測/予測の自動化およびIoT化に向けた取り組みに貢献できると期待しています。

共同研究者3名でポスター前記念写真(左から二瓶准教授、増田氏、中田)

ベスト産業実用化賞の授賞式では代表で中田が壇上に立ちました。江崎玲於奈会長と握手

(海洋環境研究室 中田聡史)

関連動画

ポスター発表の研究内容を1分間で簡潔に紹介した、インデクシング発表の様子です。

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