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2016年5月23日

PM2.5に関する中国環境科学研究院(CRAES)との共同研究の推進
~スモッグチャンバー実験での連携~

2015年8月11日に大気汚染研究に関する意見交換を行う目的で、中国環境科学研究院(以下CRAESと記す)の李紅博士の研究室を訪問しました。国立環境研究所(以下NIESと記す)とCRAESとは、日中韓三カ国環境機関長会合(TPM)の枠組などを通し、大気汚染やその他の環境分野に関する研究交流を行っています。

近年、中国でのPM2.5を中心とした大気汚染に対する関心の高まりを受けて、CRAESでは大気汚染研究に関する大型装置の導入に力を入れてきました。その一つが、光化学オキシダントや二次粒子の生成メカニズムを調べるためのスモッグチャンバーです。これまでNIESとCRAESの大気汚染に関する共同研究は大気のフィールド観測を協力して行うことなどが中心でしたが、スモッグチャンバーを用いたラボ実験についても共同研究や情報交換などを行うようになってきました。

2013年にはNIESの国際調整費によってCRAESの李紅博士と王学中博士が来日し、技術トレーニングを目的としてNIESのスモッグチャンバーを用いた共同研究を行いました。また、CRAESの屋外型チャンバーの技術的な問題点について意見交換を行いました。

今回は、筆者が学会出席のため北京を訪問したのに合わせて、学会終了後にCRAESの大気環境研究所のセミナーで2013年の共同研究に関する成果を発表する機会をいただきました。セミナーに参加した大学院生から熱心に数多くの質問が出て、質問時間を約30分と長めに設定してもらったにもかかわらず時間があっという間に過ぎてしまったのが印象的でした。

筆者による発表の後、王学中博士によるCRAESのチャンバーを用いた最近の研究に関する発表を聞きました。技術的問題の解決に関する進捗状況や現在の研究についてこちらも沢山の質問をしました。

セミナーの後、CRAESのスモッグチャンバーを見学しました(写真)。CRAESのスモッグチャンバーは開閉式ドーム付でCRAES内にある大気環境研究所ビルの屋上に設置されています。写真の温室のようなものがスモッグチャンバーで、太陽光を通すテドラーフィルムでできています。スモッグチャンバー内に目的の大気汚染物質を導入し、太陽光を照射して、光化学反応による生成物を追跡します。分析装置は階下の実験室にあり、スモッグチャンバー内の汚染物質をオンラインあるいはオフラインで分析できます。

ラボ見学の後さらに、李博士や研究室のポスドク研究員と今後の研究に関する意見交換も行いました。最近の研究や今後の研究計画、今後の国際ワークショップの予定などについて情報を共有し、今後も国際協力が必要な場面で適宜協力し合うことを確認しました。

写真.中国環境科学研究院の屋外型スモッグチャンバー前で李研究室メンバーと(前列右から3番目が李博士、4番目が筆者)

広域大気環境研究室 佐藤 圭