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霊長類モデルによる新たな発達神経毒性評価(令和 5年度)
A novel developmental neurotoxicity assessment using a primate model

予算区分
基盤A
研究課題コード
2326CD007
開始/終了年度
2023~2026年
キーワード(日本語)
化学物質,脳,行動
キーワード(英語)
Chemicals,Brain,Behavior

研究概要

工業生産される10万種類の化学物質の中から数百種類を選定しリスク評価を行っていく国際的・包括的な取り組みが進んでいる一方で、発生から50年経過したカネミ油症も水俣病も胎児性・小児性患者の診断基準等の次世代影響を巡る諸問題は全く解決しておらず、近年のビスフェノール類やネオニコチノイド等新規農薬の有害性やリスク評価に関しても未解決のままブームだけが下火となっている。本研究では、化学物質の曝露がASDや認知症など「こころ」の疾患の発症や重症化の要因となりうる可能性を前提として、「こころ」の問題を毒性試験として取り扱うことを目指し、新たな霊長類モデルによる発達神経毒性評価を構築する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

我々は環境中化学物質の曝露が「こころ」の発達に深刻な影響を及ぼしうることをマウス毒性試験で報告してきた。本研究では、小型で扱いが容易な真猿類であるコモンマーモセット(以下マーモセットと略す)を用いることで、「こころ」をエンドポイントとした発達神経毒性のin vivo毒性評価技術をマウスとマーモセット試験の双方で構築することを目的とする。精神や知恵の総体としての「こころ」は、霊長類において特に発達した機能である。開発済のマーモセット・テストを毒性試験に実装することで、新たな確定的毒性試験として提示する。さらに本研究では、マーモセット版を小型化したマウス版テスト装置を製作し、マウス毒性試験も実施する。同一パラダイムの試験結果を種間比較し、マーモセット・テストとマウス・テストのメリットとデメリットを明らかにすることで、動物実験のヒトへの外挿性について新たな基礎情報を提供する。

今年度の研究概要

本年度は、マーモセットとマウスの同一プラットフォーム行動テストを整備し、仔動物の発達段階に応じて行動毒性試験を行う。対象化学物質について、工業生産される10万種類の化学物質の中から数百種類を選定しリスク評価を行っていく国際的・包括的な取り組みが進んでいる中で、一つの化学物質に時間と費用をいかほどかけるのかの問題はある。しかしながら、発生から50年経過したカネミ油症も水俣病も胎児性・小児性患者の診断基準等次世代影響を巡る諸問題は全く解決しておらず、近年のビスフェノール類やネオニコチノイド等新規農薬の有害性やリスク評価に関しても未解決のままブームだけが下火となっている。循環型社会への転換に伴い曝露機会が増大しているリン系難燃剤や臭素系ダイオキシン類の問題はこれからである。影響を見逃さず、未然に防ぐことが毒性試験の使命であるという観点から選定する。また、我々は様々な物質の毒性試験を実施し、これまでに、ダイオキシン胎仔期曝露マウスが行動と脳活動の双方で自閉スペクトラム症(ASD)様の症状を示すことを見出した。その後も、ダイオキシンやヒ素、ビスフェノールAの発達期曝露が行動表現型と神経微細形態の双方で認知症様の症状を示すことを報告してきた。ASD発症は3歳(まで)、認知症に至っては一般的に65歳以上であり、胎児期の化学物質曝露との因果関係を捉えることが難しいエンドポイントである。化学物質の曝露がASDや認知症など「こころ」の疾患の発症や重症化の要因となるのか、さらに捉えにくい僅かな「こころ」の歪みや疾患前段階の問題に関わる可能性を踏まえ、「こころ」の問題を毒性試験として取り扱うことを目指す。高い本研究では、母体にはなんら影響が観察されず、仔の巨視的な解剖学的所見では異常が認められない低用量の経母体曝露を行い、その仔動物の発達神経
毒性試験を行う。行動テスト時の動物の脳神経活動をリアルタイムで測定する神経活動解析、行動テスト終了後のサンプルを用いた質量分析イメージングも実施する。

外部との連携

早稲田大学

関連する研究課題

課題代表者

前川 文彦

  • 環境リスク・健康領域
    生体影響評価研究室
  • 上級主幹研究員
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