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ウェアラブルデバイスを用いた紫外線照射量とビタミンD生成量の定量化に関する研究(令和 5年度)
A study on relationship between UV-B exposure and vitamin-D synthesis amount using a wearable device

研究課題コード
2326CD005
開始/終了年度
2023~2026年
キーワード(日本語)
ビタミンD,太陽紫外線,UV-B,ウェアラブルデバイス
キーワード(英語)
vitamin D,solar ultraviolet radiation,UV-B,wearable device

研究概要

 近年特に若年女性の間でビタミンD(VD)不足・欠乏状態が増えていることが報告されている。妊婦の間でもVD不足・欠乏が児の出生時体重の低下や妊娠高血圧症候群と関係することが示唆されており、若年女性の間でのVD不足・欠乏状態を改善することが求められている。
 我々は、妊婦309人を対象に、過去1週間の外出パターンをアンケートで調べ、過去1週間に生成して体内に蓄積したであろうVDを計算し、実際に採血によって得られた血液中のVD濃度との比較を行った。その結果、皮膚で生成したであろうVD量に比べ、血中濃度は明らかに低値を示すケースが多く、実際の妊婦は、想定よりかなり少量のVDしか皮膚で生成していないことが推測された。
 そこで本研究では、東北大学大学院工学研究科で開発されたUV-Bに感度があるセンサーチップを用い、腕時計型のウェアラブル紫外線計測センサーを開発する。これを対象となる被験者に装着してもらい、実際の日常生活の外出時に浴びた紫外線強度を測定する。2週間程度の被験の前後で対象者から採血し、血中VD濃度を測定する。このことによって、健康な生活を送るために必要な外出時間や紫外線照射時間を、各季節・各地ごとに定量的に明らかにし、最近の日本人のVD不足の解消を目指すことを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

 研究の初年度(2023年度)はまずウェアラブルデバイスとスマホアプリの開発を行う。東北大学で開発した、ビタミンDを効率的に生成する300 nm付近のUV-Bに感度があるSi素材のセンサを用い、腕時計型で歩数計測も可能なウェアラブルデバイスを、東北大発のベンチャー企業「フィッツ」と共同で開発する。また、ウェアラブルデバイスと連携してデータを収集するスマホのアプリを開発する。スマートフォンアプリでは、現在の紫外線量、日積算紫外線量、ビタミンD生成推定量、必要ビタミンD到達時刻、紅斑障害などの情報を提供させる。また順天堂大学附属練馬病院を受診する患者さんの中から、次年度以降の研究で行う治験者約40名のリクルートを行う。
 2024年度は、治験者にウェアラブルデバイスを装着してもらい、春・夏・秋・冬各季節2週間をめどに実際に浴びた紫外線量の計測を行ってもらう。その際、日焼け止め使用の有無とその使用部位、衣服による露出面積をその日ごとにスマホアプリに入力してもらい、紫外線照射量計算の時に用いる。また、簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)に食事内容を記入してもらい、食事からのビタミンD摂取量の推計を行う。治験の後で血液採取を行って、血中25(OH)D濃度を測定する。その測定結果から、日光から生成したと推定されるビタミンD量、食事から摂取したと思われるビタミンD濃度、あと年齢、身長、BMI、既往症などを説明変数とする、25(OH)D濃度への多変量相関解析を行い、血中25(OH)D濃度へ及ぼす各変数の影響に関して検討する。その結果、血中ビタミンD濃度が充足するための外出時間と紫外線照射量に関し、判りやすい指標で示すことを目指す。
 2025年度は、前年度の検討の結果、血中25(OH)D濃度が20-30 ng/mLのビタミンD不足者、及び20 ng/mL以下のビタミンD欠乏者を対象に、肌に紅斑を生じさせない範囲内で最適な、その季節の日光浴時間と日焼け止め使用の有無を指導したうえで、前年度の指標に従った外出と紫外線照射を心がけてもらい、同様の治験を行ってもらう。この年の治験は2ヶ月おきに2週間をめどに行ってもらい、その前後で採血して、血中25(OH)D濃度の改善の有無を調べる。
 2026年度は、昨年度の介入でもなお血中25(OH)D濃度が20 ng/mL以下のビタミンD欠乏者を対象に、ビタミンDサプリメントの服用を併用してもらい、昨年度と同様に2ヶ月おき2週間の治験を行ってもらう。治験前後の採血により、血中25(OH)D濃度の改善の有無を調べる。

今年度の研究概要

 研究の初年度(2023年度)はまずウェアラブルデバイスとスマホアプリの開発を行う。東北大学で開発した、ビタミンDを効率的に生成する300 nm付近のUV-Bに感度があるSi素材のセンサを用い、腕時計型で歩数計測も可能なウェアラブルデバイスを、東北大発のベンチャー企業「フィッツ」と共同で開発する。また、ウェアラブルデバイスと連携してデータを収集するスマホのアプリを開発する。スマートフォンアプリでは、現在の紫外線量、日積算紫外線量、ビタミンD生成推定量、必要ビタミンD到達時刻、紅斑障害などの情報を提供させる。また順天堂大学附属練馬病院を受診する患者さんの中から、次年度以降の研究で行う治験者約40名のリクルートを行う。

外部との連携

坂本優子:順天堂大学医学部附属練馬病院・准教授
本田由佳:慶應義塾大学政策・メディア研究科・特任准教授

関連する研究課題

課題代表者

中島 英彰

  • 地球システム領域
    気候モデリング・解析研究室
  • 特命研究員
  • 博士(理学) (1993.3 東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)
  • 地学,理学 ,物理学
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