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食物網構造とCO2ガス交換のカップリングによる浅海域における炭素循環の統一的理解(令和 4年度)
Unified understanding of carbon cycling by coupled CO2 gas exchanges and food web structures in shallow coastal ecosystems

予算区分
基盤A
研究課題コード
2022CD028
開始/終了年度
2020~2022年
キーワード(日本語)
浅海生態系,食物網,CO2ガス交換
キーワード(英語)
Shallow marine ecosystem,food web,CO2 gas exchange

研究概要

浅海生態系では,水温,栄養塩濃度,光量などの外部環境が海草藻類や植物プランクトンといった一次生産者の現存量や生産速度を決定するとともに(ボトムアップ効果),植食動物による植食(トップダウン効果)にも強く影響を受ける.すなわち,大気−浅海生態系間のCO2ガス交換は,ボトムアップ効果とともに植食者を鍵とする食物網構造によっても決定づけられると考えらる.
したがって本研究では,一次生産者の現存量と生産速度に影響を与える因子として植食動物に焦点をa当て,現地調査と操作実験により食物網構造とCO2ガス交換過程の関連性を実証する.そして,浅海域における望ましい炭素循環像に迫るため「炭素のストックとフロー」という共通の過程から食物網構造とCO2ガス交換過程を統一的に理解すること目的とする.

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

2020年度は,生態系純生産量に影響を与える一次生産や植食者に焦点を当て,比較研究が可能な現地調査場所や時期を選定し,炭素,栄養塩といった流入負荷物質や,温度,光環境などを勘案したうえで食物網構造の影響が検討できる砂泥性海草藻場と岩礁性大型海藻場において,現地実験を実施した.具体的には,現地の岩礁性大型海藻場をネットで囲い,植食魚をネット内に放した実験区と放さない対照区をそれぞれ複数用意し,それぞれの区における大型海藻のバイオマスや炭素動態等をモニタリングし,あわせて植食魚の食性を解析するためのサンプルを採取することで,植食動物による植食(トップダウン効果)による,大気−浅海生態系間のCO2ガス交換速度への影響を定量的に検証するデータを取得した.
今後は,生態系純生産量に影響を与える一次生産や植食者に焦点を当て,炭素,栄養塩といった流入負荷物質や,温度,光環境などを勘案したうえで食物網構造の影響が検討できるよう配慮しつつ現地観測や現地実験を実施しつつ,水槽実験の実施について検討する.また,被食前後の植生の空間分布とバイオマスの変化を三次元的に捉えるため,現場実測,リモートセンシング,ドローン空撮,GIS解析などの手法を適用する.炭素循環や食物網構造解析のための水底質や生物サンプルを採取し分析するととともに,CO2ガス交換速度に与える影響について解析する.今後成果をとりまとめ,論文等を執筆し公表する予定である

今年度の研究概要

生態系純生産量に影響を与える一次生産や植食者に焦点を当て,両者に顕著な差異がみられ比較研究が可能な現地調査場所や時期を設定する.また,炭素,栄養塩といった流入負荷物質や,温度,光環境などを勘案したうえで食物網構造の影響が検討できるようにする(全員).上記の条件を満たす砂泥性海草藻場と岩礁性大型海藻場において現地観測を実施する(全員).海草や海藻の卓越時期や植食者が来襲する時期を勘案し,一次生産者の現存量や光合成速度の変化と,食物網構造の変化に合わせたデータを取得する(全員).被食前後の植生の空間分布とバイオマスの変化を三次元的に捉えるため,現場実測,リモートセンシング,ドローン空撮,GIS解析などの手法を適用する(桑江・堀).炭素循環や食物網構造解析のため,安定同位体比測定用のサンプルを採取し分析する(渡辺・梅澤).バルク法あるいはチャンバー法を用いて,CO2ガス交換速度を測定し解析する(所・渡辺).無機炭素や有機炭素の動態を把握するため,pH,水温,塩分,酸素,クロロフィル,濁度といった水質項目が測定可能な計測器を用いて連続観測する(渡辺).さらに,繰り返し採水した試料を用いて,溶存無機炭素,全アルカリ度,溶存有機炭素,粒状有機炭素の各濃度を測定する(渡辺・梅澤).生物や水底質サンプルを用いた有機物分解実験を実施する(梅澤).

外部との連携

桑江 朝比呂 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, グループ長(研究代表者)
渡辺 謙太 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 主任研究官
梅澤 有 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授
堀 正和 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), グループ長

備考

研究自体の期間は2018年から2022まで.申請者が2020年度から環境研に在籍し,外当年度から予算が配分された.

課題代表者

所 立樹

  • 地球システム領域
    大気・海洋モニタリング推進室
  • 特別研究員
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