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大気鉛直観測を輸送モデルに同化した東アジアのエアロゾル排出量の改善(令和 2年度)
Improvement of aerosol emission estimate in East Asia from chemistry transport model with vertical observation of atmosphere

予算区分
CD 文科-科研費 基盤研究(C)
研究課題コード
2022CD002
開始/終了年度
2020~2022年
キーワード(日本語)
エアロゾル輸送モデル,大気観測,データ同化
キーワード(英語)
Aerosol transport model, Atmospheric observation, data assimilation

研究概要

冬季~春季の日本周辺では、しばしばエアロゾル等の大気汚染物質が増加し、越境汚染の問題など社会的影響も大きい。しかし、東アジアのエアロゾル放出量には推定精度の低い場所の情報も含まれるため、日本付近へのエアロゾル到達量予測やエアロゾルの気候影響評価の精度を下げてしまう問題がある。本研究では、放出量の推定精度の低い場所の汚染物質を検出しやすい秋田県で地上観測とドローンによる大気鉛直観測を行い、IPCC報告書等に用いられてきた化学輸送モデルに観測情報を同化する画期的な手法で、東アジアの放出量を大幅に改善したエアロゾル予測モデルを開発することを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

輸送モデルで用いるエアロゾル除去効率やBC濃度の鉛直分布情報を得るため、これまで研究分担者(井上)がドローン観測等を行ってきた秋田県立大学の大潟キャンパスで、分担者2名が観測を行う。放出量の推定精度の低い中国東北部付近の汚染物質は、冬季~春季の日本海側で東寄りの風となるケースで秋田付近に到達しやすい。例えば、冬季~春のはじめ頃に多く見られる北海道の東側に発達した低気圧があり冬型の気圧配置となるようなケースや、春季に移動性高気圧が本州の南側に到達するケースが挙げられる。
冬季~春季に観測されやすいため、観測期間は初年度の冬季~春季(2年目の最初)と2年目の冬季~春季(3年目の最初)を予定している。初年度の夏季は観測の準備期間にあてる。分担者(井上)は準備期間に予備観測を行い、得られたデータの補正手法等について分担者(宮川)と議論する。東アジアの放出量の推定精度を向上させるため、これまで代表者(山下)が数値実験を行なってきた水平解像度56 kmの化学輸送モデルに観測データを同化して代表者が逆推定を行う。その際に、協力者(八代)が開発を進めてきたデータ同化システムを利用する。
観測されたエアロゾル濃度をもっともよく再現するように放出量を最適化し、その際の汚染源付近の放出量を「真の値」として逆推定する。このため、放出源から離れた場所の観 測を増やすほど精度向上が期待される。次の3つの開発段階で実験を行い、放出量の推定精 度を順次向上させる。(i)元のモデル、(ii)福江島の観測結果を反映したモデル、(iii)秋田の観測結果も反映したモデル。初年度の準備期間には、既に利用可能な輸送モデルで(i)の予備実験を行う。また、2014年からデータが蓄積されている福江島のBCとCO観測データを用いて (ii)の実験も行う。
2年目~3年目には、秋田の観測が得られるので (iii)の実験を行う。逆推定、及び出力の解析のため、放出量に加えてエアロゾル濃度、気象場や沈着量等の詳細なデータを出力しておく。このように観測を輸送モデルに同化した画期的な手法により、東アジアの放出量の推定精度を大幅に改善し、改善された放出量を入力した輸送モデルを開発する。

今年度の研究概要

初年度の冬季~春季(2年目の最初)にかけ、秋田県立大学の大潟キャンパスで観測を行う。また、観測データ同化に用いるため、福江島など定常的に観測が行われている場所のデータを取得する。これと並行して、代表者(山下)が水平解像度56 kmの化学輸送モデルに観測データを同化して計算を行うシステムを構築する。

外部との連携

秋田県立大学
海洋研究開発機構

関連する研究課題

課題代表者

山下 陽介

  • 地球システム領域
    地球環境データ統合解析推進室
  • 主任研究員
  • 博士(理学)
  • 地学,物理学,コンピュータ科学
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