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温暖化に対して脆弱な日本海の循環システム変化がもたらす海洋環境への影響の検出(平成 30年度)
Global warming impacts on thermohaline circulation and subsequent biogeochemical change in the Japan Sea

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) 2-1604
研究課題コード
1618BA006
開始/終了年度
2016~2018年
キーワード(日本語)
日本海,温暖化,熱塩循環,炭素循環
キーワード(英語)
Japan Sea,global warming,thermohaline circulation,carbon cycle

研究概要

日本海は小さいながらも外洋で見られる様々な海洋現象が存在していることから、ミニチュア大洋とも呼ばれている。外洋の海洋循環システムがおよそ2000年のタイムスケールであるのに対して、日本海ではおよそ100年と推定されている。したがって、日本海をモニタリングすることで、あたかもDVDの早送り再生のように地球規模の海洋環境の変化を比較的短時間で観察することが可能となる。実際、過去数十年間に日本海底層水中の水温が上昇、溶存酸素濃度が減少していることが明らかになっている。IPCC第四次評価報告書では「日本海は地球温暖化に対して最も脆弱な海域のひとつ」として継続的な監視の重要性を訴えている。本研究班は、過去の推進費課題(A-1002)によって温暖化にともなう表層水の深層への沈み込み規模が最近40年ではそれ以前の15〜40%程度にまで激減していることを発見するなど、温暖化の進行にともなって日本海の海水循環システムが急激に変化し始めていることを突き止めた。
温暖化の影響を正確に予測することは、温暖化の抑制・適応策等の政策決定において極めて重要である。特に、海洋国である日本においては、海洋環境における温暖化影響を早期に把握し、より正確な影響予測を行うことは極めて重要な課題である。上述のように、日本海では温暖化の影響を受けて海水循環システムが変化を始めており、海洋環境の変化、すなわち生物生産や炭素循環の変化、さらには海洋酸性化の進行度などの検出が可能な状況にあるものと考えられる。
以上を踏まえて、本研究課題では日本海の3つの海盆を中心とする海域において、地球温暖化にともなう海水循環の変化や酸素減少傾向の監視を継続するとともに、循環システムの変化にともなう海洋環境の変化を検出する。それらを敷衍することで、国民にとって馴染み深い日本海の環境及び水産保全に向けた施策立案の根拠となる科学的知見を獲得・提示する。さらにはミニチュア大洋たる日本海の研究から得られる知見を、地球システムの視点から考究することにより、温暖化による全海洋への影響やその将来像の理解へと深化させる。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

本課題は以下の3つのサブテーマからなる。
(1)海水循環および炭素循環の変動の検出
(2)深層水の構造変化とそれにともなう深層流の変化
(3)海洋生物生産量の変動の検出
国立環境研究所が担当するサブテーマ(1)では、海水試料中の化学トレーサーの分析と過去の観測データを数値モデルに組み込み、海水循環の変動を検出する。また、表層pCO2やCO2関連化学種濃度の断面観測を実施し、ニューラルネットワーク法を適用することで日本海全域のpCO2分布を推定する。ここで得たアルゴリズムを歴史的資料にも適用することで時間変動を把握し、炭素循環の変化、酸性化の進行度を検出する。さらに、日本海流動・物質循環シミュレーションモデルを構築し、再現計算・感度解析を通じて温暖化の影響を定量的に評価するとともに、将来予測を行う。

今年度の研究概要

前年度に引き続き、海洋観測を継続する。pCO2分布推定から日本海全域の全炭酸および栄養塩の空間分布図を作成する。この手法もとに最近20年間の全炭酸および栄養塩の空間分布復元を試みる。海洋環境シミュレーションモデルでは、深層の溶存酸素の長期変化などの温暖化影響を、感度解析を通じて、定量的に評価するとともに、将来予測を行う。

外部との連携

九州大学、海洋研究開発機構

課題代表者

荒巻 能史

  • 地球システム領域
    炭素循環研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(地球環境科学)
  • 化学,地学,水産学
portrait

担当者