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水資源量に基づく乾燥・半乾燥牧草地の利用可能量とその脆弱性の評価(平成 30年度)
Evaluation of the pasture carrying capacity and its vulnerability based on water resources in arid and semi-arid regions

予算区分
AO 所内公募A
研究課題コード
1820AO002
開始/終了年度
2018~2020年
キーワード(日本語)
乾燥・半乾燥地域,水資源,牧草地環境容量,環境脆弱性
キーワード(英語)
Arid and semi-arid regions,Water resources,Pasture carrying capacity,Environmental vulnerability

研究概要

 本研究は、乾燥・半乾燥地域に分布している典型的な国であるモンゴルの代表的地域を対象に、気候変動に加え、鉱山開発、都市拡大など人為的攪乱が水資源および牧草地の利用可能量とその脆弱性に及ぼす影響を明らかにする。そのため、まず現地インベントリー調査や観測により水資源需要量の時空間変動を推定する。次に、プロセス型3次元水文モデルであるNICEモデルを適用し、水資源賦存量および利用可能量の時空間変動を推定する。最後に、牧草地の環境容量および脆弱性の評価モデルを検証し、影響評価を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

 モンゴルでは、急速な社会経済的な変化に伴い、大規模な都市拡大、鉱山開発および定住化に伴う農地開発が進行している。先行研究では、モンゴルの永久凍土地域において気候変動による永久凍土の融解が地表面水分状況および牧草生産量への影響評価を行ったが、上述のような都市拡大、鉱山開発など人為的攪乱による影響について評価できなかった。本研究は、先行研究で扱わなかった社会の変化が広域な水資源や牧草地の環境容量および脆弱性に及ぼす影響の評価を目的とする。特に鉱山開発、都市の拡大など人為的攪乱による水資源利用の変化が、その周辺の草原の環境容量や脆弱性に及ぼす影響を解明する。
 上述の目的を達成するため、先行研究で構築した研究ネットワークや開発してきた方法を生かしながら、新たに三つのサブテーマを設けて、お互いに協力しながら、研究を進めたい。サブテーマ(1)は水資源需要量の時空間変動の推定、サブテーマ(2)は水資源供給可能量の時空間変動の推定、そして、サブテーマ(3)は水資源量に基づく牧草地の環境容量およびとその脆弱性に及ぼす影響評価である。そのうち、サブテーマ(1)で作成した水需要インベントリーは、サブテーマ(2)の分布型水文(NICE)モデルの定常計算の入力データとして利用する。また、サブテーマ(2)で算定した水資源利用可能量(土壌水分量、地下水など)をサブテーマ(3)の環境容量および脆弱性指数の推定に利用し、最終的に、水資源の制約が牧草地の環境容量および脆弱性に及ぼす影響を明らかにする。

今年度の研究概要

 本年度では、主に生活用水、家畜飲水、産業用水量など水需要インベトリーの作成手法の開発を進め、水循環モデル(NICE)や、牧草地の環境容量および脆弱性の評価モデルに必要となる気象、水文、土壌、地形、植生などのモデル入力のデータベースを作成する。
 サブテーマ(1)においては、生活用水、家畜飲水、産業用水量など水需要インベトリーの作成手法の開発を進める。まず、人口、畜産頭数、鉱物生産量など統計データと地下水データを購入する。また、地下水データの検証用にそれぞれの地域で定点観測を行う。さらに、都市及び鉱山開発地域周辺で、井戸のポンプの性能と利用頻度などの実態調査を行い、取水係数の基礎データを整備する。
 サブテーマ(2)においては、気象、水文、土壌、地形、植生などのモデル入力のデータベースを作成し、既存データを用いたテストランニングを行う。また、サブ(1)あるいはモンゴル科学院等から収集した河川流量および地下水の観測データを用いてモデルの検証・同化を行うとともに、モデルパラメータの逆推定を用いてサブテーマ(1)のインベントリーの精緻化を試みる。
 サブテーマ(3)においては、牧草地の環境容量および脆弱性の評価モデルの開発に着手すると同時に、サブテーマ(1)と(2)と協力しながら、モデルに必要となる地形と植生のデータを収集しデータベースを作成し、メッシュ単位と地域レベルでのデータベースを作成する。そのうち、地形データは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による標高データセット(ALOS World 3D - 30mメッシュ)を用いて地形の勾配を計算する。一方、牧草生産量を推定するため、MODISやGCOMなどの衛星による得られた改良型植生指数(EVI)を利用する。また、モデルを検証するため、モンゴル科学院とモンゴル国立大学と協力し、4地域においてそれぞれ約10地点で家畜密度やバイオマス生産量などの実測を行う。

外部との連携

モンゴル科学院・地理地質生態研究所
モンゴル国立大学・文理学部

課題代表者

王 勤学

  • 地域環境保全領域
  • 主席研究員
  • 地球環境学 博士
  • 地理学,地学,農学
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担当者