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リスクに対する頑健性と柔軟性を備えた環境調和型サプライチェーン設計手法の開発(平成 24年度)
Life-cycle system modeling to design environmentally conscious supply chain with robustness and flexibility

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1214CD002
開始/終了年度
2012~2014年
キーワード(日本語)
サプライチェーン,リスク,物質フロー分析 (MFA),ライフサイクルアセスメント(LCA),リサイクル
キーワード(英語)
Supply chain, Risk, Material flow analysis (MFA), Life cycle assessment (LCA), Recycle

研究概要

 本研究課題は,リサイクルを含む国内のサプライチェーン全体を対象として,リスクに対する頑健性・柔軟性と,低炭素や循環型といった環境調和性を併せ持ったサプライチェーンの構築に向けた分析・設計手法を開発することを目的とする。
 そのために,1700品目分類以上の製品・サービス間の地理的分布を含めた物質連関を可視化し,それに地理的偏在性などのリスク要因を付加した「サプライチェーンマトリクス」を整備する。
また,サプライチェーンの「頑健性・柔軟性」を指標化し,それらと環境調和性の分析手法を確立する。実装した分析手法によって,リスク回避と環境調和性の観点から産業プロセスの立地の検討や原料供給源としてのリサイクルの再評価を行い,国家レベルでのサプライチェーン再構築に向けた戦略的な提言につなげる。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

本研究課題は,同時並行的に実施される[A]データベースの整備と[B]フレームワークの構築,および[C]ケーススタディへの適用によって構成される。[A]では,LCAのインベントリデータベースの改良による約1700品目分類の製品・サービス間の物質連関と,生産プロセスや廃棄物処理施設の位置情報に基づいて,国家レベルでのサプライチェーン構造を地理的分布も含めて可視化した上で,リスク要因と地理的情報を付加したサプライチェーンマトリクスを整備する。[B]では,国内のサプライチェーン構造に潜在するリスク要因と有効な対策を事例調査やヒアリング調査によって抽出し,リスクに対する頑健性・柔軟性の評価基準を確立・指標化して,環境調和性も含めた分析手法を実装する。[C]では,今般の震災で問題が引き起こされた製品・サービスに分析手法を適用し,国家レベルでのサプライチェーンの強化に向けた提言につなげる。

今年度の研究概要

1. 国内のサプライチェーン構造のデータ収集と可視化
既存のインベントリデータベースに,統計データやヒアリング調査により収集する量的情報と地理的情報を加えることにより,1700品目分類以上の製品・サービス間の物質連関を分析する。生産プロセスの位置情報および国内の各地域と輸入のシェアなどの情報収集には,各種の統計データを活用する。適宜,産業連関表による環境負荷原単位の約400品目分類のデータとのクロスチェックを行う。
地理情報システムを活用した地図化や空間解析機能によって,各種の製品・サービスのサプライチェーン構造を,生産プロセスの地理的偏在性も含めて可視化する。このことで,任意の製品やサービスが,どこから,どういった素材や原料を調達しているか,任意の原料・素材が,国内のどこで,どういった製品やサービスに使用されているかといった,地域間のサプライチェーンの追跡を可能にする。
2. リスク要因の抽出と頑健性・柔軟性の評価基準の確立
国内のサプライチェーン構造に潜在するリスク要因の仮説設定と,サプライチェーン寸断事例に関する産業界へのヒアリング調査およびアンケート調査によって,リスク要因を抽出する。また,どのようなサプライチェーン構造であればリスクを分散・回避しえたか,リスク要因への有効な対策を抽出する。抽出したリスク要因に対する有効な対策を,各生産プロセスの入力および出力の頑健性・柔軟性に関連付ける。例えば,特定地域への原料調達の依存度を低下させて多様な調達先を確保することは生産プロセスの入力の「頑健性」,他の材料でも同等の製品を製造できるプロセスを開発することは生産プロセスの「柔軟性」に関連付けられる。静脈(リサイクル)に関しても,事例調査やヒアリング調査によって抽出したリスク要因に対する有効な対策を頑健性および柔軟性に関連付けることで,それらの要件を明らかにする。例えば,廃棄物の受皿として,焼却施設や埋立処分場の余力を確保しておくことはリサイクルの「頑健性」,再生原料に対する需要の喪失に対応するために,より汎用的な原料への再生を推奨することは「柔軟性」に関連付けられる。

以上の分析をもとに,リスク要因の影響を受けにくいサプライチェーンに必要な要件を定義し,これらの要件の取捨選択・優先順位・重み付けにより評価基準を確立し,リスク要因に対する頑健性・柔軟性を指標化する。

外部との連携

【代表者】
森口祐一(東大)

【分担者】
田原聖隆(産総研)、松八重一代(東北大)、醍醐市朗(東大)、栗島英明(芝浦工大)、井原智彦(産総研)、中谷隼(東大)、菊池康紀(東大)

備考

重点研究プロジェクト1と関係。

課題代表者

中島 謙一

  • 資源循環領域
    国際資源持続性研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(工学)
  • 工学,材料工学
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