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プロトン化有機化合物を一次イオンに用いた陽子移動反応質量分析法の大気計測への適用(平成 22年度)
Novel proton transfer reaction-mass spectrometry by using protonated molecules as a primary ion

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0810CD005
開始/終了年度
2008~2010年
キーワード(日本語)
陽子移動反応イオン化,プロトン化分子,PTR-MS,PTR-TOFMS,異性体の区別
キーワード(英語)
proton transfer reaction, protonated molecule, PTR-MS, PTR-TOFMS, differentiation of isomeric compounds

研究概要

大気中に揮発する有機化合物(揮発性有機化合物、VOC)はそれ自体人体に有害なものもあるが、窒素酸化物とともに大気汚染の原因物質でもあり、汚染大気中で光化学オゾンや二次有機エアロゾル(SOA)を生成し、間接的にも人的な健康被害を与える。VOCのオンライン計測手法として、陽子移動反応-質量分析計(PTR-MS)が開発された。本手法の特徴は、イオン化部分にVOCを選択的かつソフトにイオン化する陽子移動反応(PTR)イオン化を用い、1ppbv以下の微量成分を高速に検出することができる点であり、従来の方法では定量が困難な酸素を含むような有機化合物(アルデヒド、ケトンなど)に高い感度をもつことも大きな利点でもある。しかし、アルデヒドとケトンは多くの場合、異性体であるため、質量分析法では原理的に区別できない。我々のグループでは、VOCの陽子親和力(PA)の差を利用して、異性体をPTR-MS法で区別することに成功した。本研究の目的は、大気中に多種類存在するVOCを選別して測定するための手法を開発するものである。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

大気中に多種類存在する揮発性有機化合物(VOC)を選別して測定するために、プロトン化有機化合物(VOC1・H+)を一次イオンに用いたPTR-MS法を確立することである。それにはまず、適切な一次イオンVOC1・H+を多種類、PAが691 kJ/mol (H2OのPA)から854 kJ/mol (NH3のPAを上限とする)の間で、10 kJ/mol間隔程度で見つける。また、いくつかの一次イオンに関して、試料VOCの検出の可・不可の閾値がどの程度かについてPAの異なる試料を用いて調べ、水蒸気依存性がどういう場合に起こるかについても調べる。本手法の有効性を反応実験や実大気(自動車の排気ガスなど)で実証する。

今年度の研究概要

実大気中での計測に適応可能かを調べる。まずは、室内反応実験で実証する。イソプレンの酸化反応では、メチルビニルケトン(MVK)とメタクロレイン(MACR)が一次生成物として生成されることが知られている。MVKとMACRはともに分子量70の異性体である。これらは本研究で酢酸メチルをVOC1とした一次イオンで分離して検出できることを見出しているため、それを用いて区別した測定を行う。続いて、実大気として、自動車の排ガスの分析に応用してみる。これまでの研究で、アルデヒド/ケトンやカルボン酸/エステルの質量数にシグナルが出ていることを見出しているので、それらがどの程度の割合で含まれているかのデータを取得する。最後に、野外の空気をモニターして、多種類の一次イオンを用いて質量スペクトルを取得し、それらを解析することで、どのくらいの大気中の異性体を区別して検出できるかを実証することを試みる。

関連する研究課題
  • 0 : その他の研究活動

課題代表者

猪俣 敏

  • 地球システム領域
    地球大気化学研究室
  • 主席研究員
  • 博士(理学)
  • 理学 ,化学
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担当者