- 予算区分
- AF 奨励
- 研究課題コード
- 0808AF003
- 開始/終了年度
- 2008~2008年
- キーワード(日本語)
- 水生植物,根,酸素漏出
- キーワード(英語)
- wetland plants, root, radial oxygen loss
研究概要
水生植物の多くは酸素不足に対応するため、地下部へ酸素を送る機能を発達させている。送られた酸素の一部は根を介して土壌へと漏出され、嫌気的土壌中にモザイク状の好気的環境を形成し、微生物環境を大きく変える要因となる。植物の根からの酸素漏出速度を推定することは、湿地生態系の物質循環を理解する上で重要であるが、有用な測定法はまだない。
本研究では、これを推定する新たな測定法を開発・実用化することを目標とする。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
研究は以下の3ステップ(設計・組み立て・測定)で進めている。
1)測定装置の設計(本研究課題施行前に設計済み)
土壌中で、根から漏出された酸素は周辺にある還元態物質(Fe2+、Mn2+など)の酸化反応や微生物によってすぐに消費される。そのため、根表面と土壌との間には常に高い酸素濃度勾配が存在する。根からの酸素漏出速度はこの酸素濃度勾配に依存するため、実際の野外における根からの酸素漏出速度を推定するためには、これと同じ状況で測定する必要がある。
本研究で提案する測定法の特色は、以下の3点。
・根から漏出された酸素が窒素ガスバブリングによって直ちに取り除かれるよう設計した。
・微量の酸素を検出できるよう、「アントラキノンラジカルアニオン」という酸素に非常に高感度な物質を用いて酸素漏出速度を測定する。
・実際の測定は酸素と反応した「アントラキノンラジカルアニオン」を分光光度計で定量することで行うが、分光光度計を測定装置に常設し、植物の周辺環境(光・温度・湿度など)の変化に対応した根からの酸素漏出速度を経時的に追えるようにした。
2)組み立て
測定装置は地球センター内にある人工気象チャンバー内(温度、湿度、光強度、CO2濃度を設定可能)に設置した。
3)測定
出来上がった測定装置で実際に測定・検証を行う。
今年度の研究概要
1)設計 2)組み立て、測定装置の予備測定は昨年度までに終了した。本年度は実際の植物を用いた測定を行う。測定には温室内で水耕栽培をしたマングローブ植物を用いる。
- 関連する研究課題
- : 重点4ー中核3流域生態系における環境影響評価手法の開発
- : アジア自然共生研究グループにおける研究活動
課題代表者
井上 智美
- 生物多様性領域
環境ストレス機構研究室 - 主幹研究員
- 理学博士
- 生物学,化学