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NIES Annual Report 2004 AE-10-2004(平成17年1月発行)

 本書は国立環境研究所の研究活動を海外の環境研究者や環境行政に携わる方々に紹介することを目的に編集した研究所唯一の英文定期刊行物です。この度,2004年版が刊行されました。研究所の組織,重点特別研究プロジェクトと政策対応型調査・研究の内容,各研究領域の成果,各センターの業務,国際交流,英文による発表リスト,研究所出版物,研究施設・設備と人員に関する概要が記載されています。従来と同様に,各研究プロジェクトや研究領域でトピックスとなる研究成果を重点的に紹介し,文章だけでなく図版を示して,研究概要等が理解されやすいように編集しています。創刊10年を期して,本号から表紙を一新し,研究本館の写真を取り入れることとしました。また,発表リストを国際標準の読みやすい形で記載しました。海外からの来賓への配布等を通じて,研究所の活動紹介に大いに活用されることを希望しています。

(編集委員会英文年報班主査 青木康展)

国立環境研究所特別研究報告 SR-62-2004(平成16年12月発行)
「湖沼における有機炭素の物質収支および機能・影響の評価に関する研究」(平成13~15年度)

 近年,多くの湖沼において,流域発生源対策が精力的に行われているにもかかわらず,湖内の溶存有機物濃度の増大傾向が観察されています。何らかの難分解性の溶存有機物(DOM)による新しいタイプの水質汚濁現象が進行していると考えられます。
 湖水中でなぜ難分解性DOMが漸増するのかを明らかにするために,本研究では湖における有機炭素収支に関する研究と湖水DOMの特性・起源と機能・影響の評価に関する研究の2課題を取り上げました。おもな成果としては,(1)霞ヶ浦湖内3次元流動モデルにより難分解性DOMの場所的・季節的な変動を定量的に評価しました(2)霞ヶ浦へ流入する難分解性DOMの発生源として生活系よりも面源系が大きいことを示しました(3)湖水中の溶存鉄の99.9%以上が有機態であることを明らかにしました(4)底泥からのDOM溶出フラックスは経年的かつ季節的に変動し,春季のほうが夏季よりも大きくなりました。その他,アオコを形成するミクロキティスの特異的プライマー作成,水田由来の難分解性DOMの特性,有機物指標過マンガン酸CODの問題点について検討がなされています。

(水土壌圏環境研究領域 今井章雄)

環境儀No. 15 干潟の生態系-その機能評価と類型化(平成17年1月発行)

 高度経済成長期の埋め立てに伴い,私たちに親しみ深い自然環境であるの海辺の干潟は大きく減少してしまいました。環境儀第15号では,干潟生態系の保全を意図して進められた「干潟等湿地生態系の管理に関する国際共同研究」の成果を紹介します。干潟は生物多様性の宝庫であり,浄化機能など重要な生態系機能を有しています。残り少ない干潟の保全は大きな課題です。適切な干潟の保全を図るためには,まず各々の干潟の特徴を把握して評価する必要があります。従来,干潟を評価する手法としては,米国で開発された干潟を含む湿地の評価手法であるHGMモデルが知られていました。しかし,これは水文地形学的観察に基づく湿地の簡易評価手法であり,必ずしも我が国の干潟を評価するには十分といえませんでした。そこで,本研究では我が国の13ヵ所の代表的な干潟について,まず,底質の特徴・水の特徴・栄養条件などの生態系機能の指標や微生物による有機物分解活性を詳細に調査しました。さらに,これら実地調査のデータをもとに,干潟を評価する新たな手法としてJHGMモデルを提案しました。今後,JHGMモデルが我が国ばかりでなく,同じような干潟をもつ東アジア諸国でも環境アセスメントなどに活用され,より良い環境の保全・再生が図られることが期待されます。

(「環境儀」第15号ワーキンググループリーダー 青木康展)