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独立行政法人国立環境研究所に向けて

巻頭言

主任研究企画官 高木宏明

 7月から国立環境研究所に勤務することとなったばかりである。環境庁に勤務していた時には,国立環境研究所を主管する環境研究技術課に籍を置いたこともあるし,これまでの経験の中でいろいろな研究者の方とのお付き合いがあったので,国立環境研究所についてはそれなりに知っていたつもりであったが,今回初めて研究所の中に身を置いて,その大きさを改めて認識させられた。まだ数週間しかたっていないこともあるが,とにかく全体像が見えないのである。こういう中で,私が待ったなしで取り組まなければならない課題は,研究所の独立行政法人化である。独立行政法人については,これまで交付金による自由な運営などよい面が強調されてきたきらいがあり,少し前まで外部にいて傍観者であった私も,漠然とではあるが,本当にいいことばかりなのかなと感じていた。独立行政法人化の作業が具体化するにつれて,どうもいろいろな問題が見え隠れしてきているように思う。

 独立行政法人化は過去にも例のない全く新たな試みなので,しばらくは試行錯誤が続くのではないかと思っている。誰も先行きが見えない闇夜の障害物レースといった感じであるが,夜が明けたときに,厳しい中にもひと味違った結果が得られているよう努力しなければならないと思っている。そのためには研究所が一丸となって対処していくことは当然であるが,関係者の方々にも,この場を借りてご支援をお願いしておきたい。

 独立行政法人に求められるものは,研究の効率化・重点化,年次計画に基づく着実な成果などである。つまり,短期的な成果が求められている。国民や行政の立場から言えば,現下の社会や行政の課題に応えるような研究成果を出していくのが国立研究所の役割ということになるので,短期的な成果主義もそれなりに意味を持つことである。しかし,一方では,環境保全の立場からは,現在の環境問題だけがすべてではないのであるから,長期的な視点に立った息の長い研究も必要なことは論を待たない。ただ,長期的視点の基礎的な研究に安住してしまうと研究所の活性が失われるし,外から見て何をやっているのかわからないということにもなりかねない。これらのバランスをうまくとり,研究所の活性化につなげていくとともに,国民に研究所の存在価値を印象づけていくことが,独立行政法人国立環境研究所の大きな課題の一つであるように思う。

(たかぎ ひろあき)

執筆者プロフィール:

広報室長のあと4年ほど環境庁を離れており,最近では,国連大学高等研究所(UNU/IAS)客員フェロー,アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)事務局長などを務めてきました。