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新しい課題(地球環境変化)に対応するために

巻頭言

所長 鈴木継美

すずき  つぐよし の写真

 新しい課題が登場した場合,それを解決するためには,新しい科学的理解に基づく技術とそれを実施可能にする社会システム(あるいは制度)が必要になる。登場した課題がこれまでの方策では解けないことを認め,そのうえで新しい政策がとられることが必要になる。これまでの地域的な環境破壊に対して,それまでとは違った技術と社会システムを作り出すには多くの困難が生じることを我々は経験してきた。しかし,それが達成できた場合にのみ地域的課題は克服されたのであり,他方,技術レベルと社会システムの複合した総合的な施策ができない場合には問題は解けない。

 地球規模での環境変化という最新の課題に対応するために,必要な技術と社会システムはこれまでとは一味も二味も違う物でなければならないし,その土台となる科学もこれまでの伝統に基づく区分の中に閉じこもった物だけでは済まなくなっている。

 科学に関する国際的な民間の連合体である国際学術連合(International Council of Scientific Unions, ICSU)の下で進められている国際的な共同研究計画は,世界気候研究計画(World Climate Research Programme, WCRP),地球圏-生物圏国際共同研究計画(International Geosphere-Biosphere Programme, IGBP),地球環境変化の人間的特性(Human Dimensions of Global Environmental Change, HDP)等があるが,いずれも国際的な協力の下に,真の意味で統合された地球システム科学を目指している。国立環境研究所もこれまでのIGBPの活動を支援するなどこの種の活動に参加してきたが,これまで以上に新しい科学の創設のために努力しなければならないと考えている。新しく動きつつあるHDPは人間活動に由来する各種の環境変化とそれによる人間の変化の両面を取り上げており,自然科学と社会科学といった区分けにとらわれない展開が期待される。我々は新しい課題に対応した新しい科学とそれに基づく技術・社会システムを求めて柔軟に研究を進めなければならない。

(すずき つぐよし)