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2022年6月30日

大気汚染と気候の複合問題への挑戦 数値シミュレーションを用いた高解像度予測の最前線

環境儀 No.85

最新号vol.85

大気汚染と気候の複合問題への挑戦

数値シミュレーションを用いた
高解像度予測の最前線


大気汚染は、地域の環境問題だけではなく、地球全体の気候に影響を与えます。待ったなしの地球温暖化問題に対して、我が国の「大気汚染物質シミュレーションモデル」を用いた取り組みをしています。

1970年代に日本では、大気中に浮遊する粒子(エアロゾル)が大気汚染物質として、大気の環境問題の1つとして認識されました。その後、1990年代後半から、大気汚染物質が太陽からの放射エネルギーや地球が受け取るエネルギーを介して、気候に影響を与えていることがわかってきました。

2010年代になると、進行する地球温暖化を抑制するためには、温室効果気体の排出を削減するだけではなく、大気汚染物質の排出を抑制することも効果があるのではないか、という議論が起こってきました。大気汚染物質が地球の気候や温暖化に与える影響を調べるためには、精度の高い数値シミュレーションが必要です。シミュレーションの精度を向上させるためには、大気汚染と気候に関する科学的理解を深めなければなりません。そのための様々な方法の中で、私たちのチームは数値モデル(NICAM-Chem: Nonhydrostatic ICosahedral Atmospheric Model coupled with Chemistry)を開発し、大気汚染物質を高い空間解像度でシミュレーションしています。

本号では、大気汚染物質の中でもエアロゾルに注目し、高解像度でシミュレーションするための研究や最新の成果を紹介します。

interview
研究者に聞く

筆者の五藤大輔の写真

地域環境保全領域
大気モデリング研究室・主任研究員
五藤 大輔
(ごとう だいすけ)

筆者の八代尚の写真

地球システム領域
衛星観測研究室・主任研究員
八代 尚
(やしろ ひさし)


大気汚染と気候の複合問題への挑戦

エアロゾルは大気中に浮遊する粒子状の物質のことをいい、大気汚染物質として健康に影響を与えることが懸念されています。一方、気候に重大な影響を及ぼすこともわかっています。大気汚染と気候の関わりを理解することは、地域の環境問題や地球の気候問題を解決するためのカギとなります。地域環境保全領域主任研究員の五藤大輔さんと地球システム領域主任研究員の八代尚さんは、全球雲解像モデルNICAMを使った高解像度シミュレーションにより、大気中のエアロゾルの濃度や分布をより正確に再現するための研究をしています。

世界の大気汚染の状況

Q:大気汚染の現状について教えてください。
五藤: 日本では1970年代に都市部を中心に大気汚染が大きな問題になりました。その後、排ガス規制などが進み、大気汚染物質の量は減少しています。日本を含め欧米などの先進国では大気汚染は改善していますが、アジア諸国では大気汚染物質の排出量が依然として高い状況にあります。

Q:新型コロナウイルス感染症の流行で社会活動が制限された影響はでていますか。
五藤: 2020年の世界的なロックダウンの際には、地球全体で二酸化炭素の排出量が7%(遠嶋, 2022)、窒素酸化物の排出量が少なくとも15%減少した(宮崎, 2022)と報告されています。ですが、その減少は一時的なもので、社会活動が再開されるとまた元の水準に戻ったようです。

Q:経済発展しているアジアの国々はどこも大気汚染がひどいのでしょうか。
五藤: 中国は深刻な大気汚染が問題になっていましたが、2008年北京オリンピックの開催決定を機に規制が進み、現在ではかなり改善しています。近年、深刻なのはインドを中心とした東南アジアから南アジアの地域です。人工衛星で観測したデータを見ても、ヒンドスタン平原あたりの大気汚染が相当深刻なのがわかります。

地球を冷やしたり、温めたりするエアロゾル

Q:大気汚染は気候にどのように関わっていますか。
五藤: 2021年に発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第一作業部会(WG1)の第6次報告書(IPCC-AR6-WG1,2021)でも、地球全体の平均気温の変化に大気汚染物質(エアロゾルや微量気体)が影響すると書かれています(コラム2を参照)。エアロゾルは、大気中を浮遊する小さな粒子で、よく聞くPM2.5は直径が2.5μm(1μmは1000分の1mm)以下のエアロゾルのことをいいます。人間活動によって出てくるエアロゾルは、硫酸塩や硝酸塩、有機炭素、黒色炭素(ブラックカーボン)などがあり、大部分が直径1μm以下です。これらのエアロゾルは、太陽光を吸収したり、散乱したりします。

Q:エアロゾルには地球を冷やす効果があるのですか。
五藤: はい。エアロゾルには、種類によって温暖化を抑制するものもあれば、促進するものもあります。硫酸塩エアロゾルなどは、光を吸収せず、全て散乱させます。すると、地球に届く光が減り、地球が冷えます。さらに、水に溶けやすい成分をもつエアロゾルは、雲の性質を変えることによって、結果的には地球を冷やす効果も持っています。つまり、エアロゾルが多いと、太陽光を散乱させやすい雲ができます。一方で、ブラックカーボンは光を吸収し、熱として放出し、地球を温めます。なお、エアロゾル自体に関する説明や研究は、過去の『環境儀』64号68号77号も参考になります。

Q:最近(2021年12月)トンガで火山が噴火しましたが、火山噴火とエアロゾルにはどういう関係があるのでしょう。
五藤: 火山の噴火で発生する大量の灰や硫酸ガスはエアロゾルとなります。エアロゾルの多くは大気中に存在する時間がせいぜい1週間くらいですが、噴火の勢いで一気に上昇して高度10km以上にある成層圏まで到達したエアロゾルは大気中に数年間も滞留します。硫酸塩エアロゾルが多く含まれていると、長い間地球を冷やし続けることになります。ただ、火山噴火で発生する物質にはいろいろなものがあり、その割合や量で地球を冷やす効果は異なります。

八代: 1991年6月にフィリピンのピナツボ火山が噴火したときは、成層圏に到達した硫酸塩エアロゾルの影響で地球が冷えました。日本は記録的な冷夏となり、平成の米騒動といわれるほどの米不足になりました。

大気汚染のシミュレーション

Q:どのように研究を進めているのですか。
五藤: 気候変動の影響や将来を予測するためには、まず現状を再現しなくてはなりません。そのためには関連する自然現象を科学的に理解する必要があり、その手段としてシミュレーションができる数値モデルを使います。大気の状態は気温や気圧などの数値で示すことができ、これらは物理法則に基づいて変化します。この物理法則を表す方程式をコンピュータで計算できる形にして、たくさん組み合わせたのが数値モデルです。このモデルに必要な値を入力してコンピュータで計算し、地球全体を対象にして、エアロゾルなど大気汚染物質濃度の変動を再現しています。下の図は数値モデルで計算された地球上の様々なエアロゾル分布です。シミュレーションの結果が現実を再現しているかどうかは観測の結果と比べて確認します。大気汚染物質は濃度変動が激しく、一地点の観測データでは確認が十分できないので、人工衛星による広範囲な観測データも使っています。シミュレーションで使われている一部の経験的な変数には取り得る値に不確実性の幅があるので、観測結果とより一致するような値を調べます。
NICAM-Chemで計算したエアロゾルおよびその化学組成の全球年平均分布図


Q:シミュレーションとはどんなものですか。
八代: シミュレーションを行う大きな目的の一つに将来の予測があります。これまで得られた知見を総動員して計算し、コンピュータの中にバーチャルな地球を再現します。科学的な法則に従ったモデルなら現実を再現することは可能なはずですし、それが正しければ時間軸を延ばして未来も予測できるはずなのですが、実際にはとても難しいです。その理由の一つは、基本的な物理的な過程は理解が進んでいるのですが、まだ分かっていない過程もあることです。モデルに組み込めていない過程があるまま計算すれば、結果は実際とずれてしまいます。研究がもっと進めば、この問題を解決できるだろうと期待しています。もう一つの理由は、計算能力が足りないことが挙げられます。計算するときは地球を格子状に細かく切り分けて、それぞれのボックスごとに行います(コラム3を参照)。細かくなればなるほどその状態を正しく再現できるのですが、計算量が膨大になります。たとえば、水平100㎞メッシュの格子で計算すれば、東京とつくばが同じ格子に入ってしまうため、結果が同じになってしまいます。これでは地域ごとの大気汚染の状態を詳しく把握できそうにないですよね(サマリーの図5)。そこで、1㎞メッシュの格子で計算しようとすれば、時間解像度も細かくする必要があるため、計算量は100万倍に増えてしまいます。計算能力が年々高まっていくおかげで、高解像度でのシミュレーション研究の可能性も広がっています。

Q:スーパーコンピュータで計算するのですか。
八代: はい。研究所内のスーパーコンピュータ(スパコン)のほか、理化学研究所の「富岳」や各大学のスパコンなど用途に応じていろいろなものを使っています。私たちの計算はデータを非常にたくさん使うので、データ保存・解析のためにハードディスクもたくさん必要です。

Q:シミュレーションに使っているNICAMとはどんなものですか。
八代: NICAMは大気を高解像度で計算できるモデルです。一般的なモデルが20年前に開発された時は、水平200kmメッシュぐらいの格子幅で計算するのが普通でしたが、当時からすでに数kmメッシュ格子幅で計算することを想定して設計されていました。それから20年経って、まさに現代のスパコンにうまくマッチしてその威力を発揮し、多くの研究者が先端的な研究に活用しています。モデルの開発には終わりがなく、NICAMも完成したとは胸を張って言えません。最初に海洋研究開発機構(JAMSTEC)で開発が始められ、その後、他の研究所や大学の研究者が加わって、機能がどんどん増えてきました。まるでスペインにあるサグラダファミリアのようです。シミュレーションの内容も、初めは気温や風向・風速などの基本的な気象の要素のみでしたが、開発が進んだ結果、エアロゾル濃度のような大気環境に関わる要素も計算できるようになりました。

高解像度のシミュレーションを実現

Q:どんな結果が得られましたか。
五藤: NICAM-Chem(NICAMに結合した大気汚染物質輸送モデル)を使ってスパコンで計算し、エアロゾルの濃度分布をこれまでよりも高精度で再現しました(などを参照)。この結果から、発生源である都市部での大気汚染物質の濃度やそれがどのように運ばれていくのかがわかります。また、雲の動きも高精度で再現できました。エアロゾルは雲や雨で取り除かれるので、雲の動きを高精度で示すことができないとエアロゾルの分布も正確に示すことができません。これによって、北極圏にどのようにエアロゾルが運ばれていくのかも示すことができました。北極圏のエアロゾルは気候に大きな影響を及ぼすことが知られています(詳細は、例えばhttps://cger.nies.go.jp/cgernews/201711/323003.html)。

Q:どれくらいの時間スケールで計算して、どのような結果になりましたか。
五藤 場合にもよりますが、エアロゾルの分布をシミュレーションするときは、1年分を計算します。これは、主要なエアロゾルの空間分布や季節変動が再現できているかを確認できるからです。今回は、高い解像度で計算したことで雲や雨の再現性が良くなりました。エアロゾルと雲の相関関係を示したシミュレーション結果では、衛星観測のデータとよく合っていましたし(サマリーの図7)、極域でのエアロゾルの濃度、特にブラックカーボンが実測値ともよく合致していました(サマリーの図6)。これまで世界のどのモデルでもブラックカーボンをうまく再現できなかったので、今回の結果からエアロゾルが大気中にある雲や降水を媒介にして地上に戻るプロセスの表現には高解像度のシミュレーションが非常に大事なことが示されました。一方、硫酸塩エアロゾルでは観測値とズレがありました。硫酸塩エアロゾルは二酸化硫黄が酸化してできますが、まだきちんと表現できていない酸化過程があるのかもしれません。また、硫酸塩生成過程のうちの70%くらいは雲の中で酸化されて生成されるので、雲や雨の状態にも大きく関わります。これまでよりはかなり良くなりましたが、将来予測などに使うとすれば、もっと精度を上げたいですね。

膨大な計算量

Q:研究はどんなところが難しいのですか。
五藤: 大気汚染のシミュレーションでは、大気汚染物質が雨によって大気から除かれる過程をうまく再現することが課題ですね。雲や雨のタイミングや降水量が正しくないと、エアロゾルの動きを正確に計算できません。

八代: 現実でのエアロゾルが、いろいろなものが混ざってひとつのかたまりになっていることも再現の難しい点として挙げられます。エアロゾルを一粒一粒見ると、煤(すす、ブラックカーボン)に硫酸塩、さらに酸化して表面に水がついてという具合に複雑な状態になっています。非常に多岐にわたる混合状態をモデル内で全て表現して計算してみようとすると、組み合わせ爆発を起こしてしまいます。どう簡略化して計算するかも重要です。

五藤: エアロゾルが太陽光の反射や赤外線の放出を通して、大気を冷やしたり温めたりするときの効果の強さ(光学特性)についても、精度がよくないと気候計算に大きな影響を与えてしまいます。ですので、実験で得られたエアロゾルの光学特性の最新の知見をモデルに反映させています。

八代: 高解像度シミュレーションでは、データなどファイルのサイズがとてつもなく大きく、1回のシミュレーションで数十テラバイトも使います(テラバイトは1000ギガバイトで、ハードディスク内蔵テレビでは10〜20台分、Blu-rayディスクだと800枚以上の量になります)。ですから、データの移動だけでも大変です。計算時間も長くて、スパコンをいっぱい使って数ヶ月以上かかるシミュレーションもあります。途中で計算機エラーや設定ミスでやり直しになることもありますね。土日の休んでいる間も自分の代わりに計算機が働いてくれるのはいいのですが、月曜日に職場に出て行って失敗に気が付いたときはがっくりします。

五藤: 計算結果の解析を行わないとわからないミスもあるので、解析を始めてから気づいたときも落ち込みます。データ量も多いので、複数の計算や複数の設定を並行してやるときは間違えることもありますね。ただ、この研究の良いところは、パソコンとネットワーク、接続先のスパコンさえあればいつでもどこでも研究ができることです。

八代: 私も出張先の沖縄からスパコンにつないで計算したこともあります。

信頼できるモデルに

Q:今後はどのように研究を進めたいですか。
五藤: 地球温暖化対策の国際的な枠組みでもあるパリ協定では、2050年までに気温上昇を2℃もしくは1.5℃未満に抑えるという高い目標を掲げています。その目標を達成するために、地球を温める効果のある大気汚染物質の削減が注目されています。これは短寿命気候強制因子(SLCF)と呼ばれるものです(コラム4を参照)。例えばブラックカーボンは寿命が短いエアロゾルで、削減効果が現れやすいです。そこで、SLCFの削減効果を研究するプロジェクトが始まりました(後述の「研究をめぐって」を参照)。どこの地域をどれだけ減らせばよいのかなどを、シミュレーションを使って検討し、その知見も利用して将来シナリオの策定(例えば、『環境儀』74号の取り組み)に貢献する予定です。また、大気汚染は私たちの健康や生態系にも影響しており、エアロゾルとの関わりやそのメカニズムを調べるためにも、高解像度のシミュレーションは役に立ちます。信頼できるモデルになるように研究を進めていきたいです。

八代: 地球温暖化対策の国際的な枠組みでもあるパリ協定では、2050年までに気温上昇を2℃もしくは1.5℃未満に抑えるという高い目標を掲げています。その目標を大気汚染と気候問題との関わりはこれからもっと重要になってくるでしょう。エアロゾルがどのように雲のでき方を変え、将来の気候を変化させるかを、今よりも精度高く定量的に把握することが求められています。また、気候変動の影響を受けて、近年激甚化傾向にある集中豪雨や台風などの気象災害の振る舞いを、エアロゾルがどのように変調させているかについても重点的に研究していきたいです。

コラム1 | テレビや本で見たことがある大気汚染

大気汚染を引き起こす物質(大気汚染物質)とは、人間が生活する中で空気中に放出した微粒子や気体のことです。みなさんは、なんとなく見たり聞いたり、あるいは知っていることもあるのではないでしょうか。

例えば、1960-70年代に起こった四日市ぜんそくの問題は大気汚染が原因でした。また2013年1月には、中国の北京などでPM2.5(微小粒子状物質)が大規模に発生するニュースがありました。春になると日本に飛来する黄砂、夏の暑い日に都市部を中心に発生する光化学スモッグ(オキシダント)、森林火災による大規模な煙、自動車・工場の排気ガス、これらは全て大気汚染です。大気汚染は都市などの限定的な地域の問題というイメージを持たれているかもしれません(図1)。しかし、大気汚染は都市の規模を超えた空間スケールでも起きていて、大気汚染物質は風に乗って遠くまで運ばれていきます。私たちの地球規模のシミュレーションでは、これらのほぼ全ての大気汚染物質を取り扱っています(インタビュー内の図)。
図1 目に見える大気汚染
東京都庁31階にある富士山カメラで撮った空の写真です。大気汚染物質が少ないと富士山が見えます(左)。しかし、大気汚染物質がやや多くなると、大気汚染物質が光を遮って、富士山が見えません(右)。写真は東京都環境局のウェブサイトに掲載されたものです。

コラム2 | 大気汚染が地球の気候と関係している?

コラム1の写真のように、大気汚染が発生すると、雲のように光を遮ってしまいます。太陽光が届かないと寒くなります(専門的には日傘効果と言います)。つまり、気温が下がるので、大気汚染が気温に影響を与えることが理解できるのではないでしょうか?

大気汚染は、人間活動が活発になってきた産業革命以降、世界各地で起きています。図2には、産業革命前後(1850-1900年)から現代(2010-2019年)までの間に、人間活動によって大気中に放出された様々な大気汚染物質による気温の変化を示しています。温室効果気体である二酸化炭素は、気温を0.8℃上げた一方で、代表的な大気汚染物質である二酸化硫黄(これが硫酸塩エアロゾルになります)は0.5℃下げました。また、太陽光を吸収するブラックカーボンは気温を0.2℃上げました。

ここで重要なポイントが2つあります。黒い線に着目すると、①二酸化硫黄から生成される硫酸塩エアロゾルは推定の幅によっては0.9℃ぐらい下げたと考えられていることと、②ブラックカーボンの増加が気温を下げる方向に働く可能性があることです。はっきりした値になっていないのは、大気汚染と雲との関係性についてまだ解明されていない現象があるからです。雲を正確にシミュレーションするためには、私たちの使っているような高解像度モデルが必要になります。
図2 人間活動に伴う大気汚染物質などと気温の変化  大気汚染物質などが地球の気温をそれぞれ何℃変化させたのかをシミュレーションで評価しました(図中の黒線は不確定性)。この図はIPCC-AR6-WG1(2021) に掲載された図SPM.2をベースに、日本語で表記したものです。

コラム3 | スパコンをどう活用するか

大気汚染のコンピュータシミュレーションは天気予報と同じように、地球の大気を水平・鉛直方向に区切って(図3上)、それぞれのボックスの気温、気圧、風速、水蒸気量、大気汚染物質の濃度などを計算しながら、ある時間間隔ごとに進めていきます。研究者は、理論・法則や、実験・観測で得た値を使って、計算式を組み立ててプログラムを書き、現実の物理現象をコンピュータの中で表現しようとしています。より精緻なシミュレーションを行うためにボックスの空間解像度を上げると、計算するボックスの数が増えます。計算時間間隔も短くしなければいけないので、例えばメッシュサイズを10分の1にすると、計算量は10の3乗=1000倍に増えてしまいます。1000倍の時間をかけて計算していては大変なので、私たちはスパコンを活用して計算しています。

近年のスパコンはたくさんの計算機を繋いで、並列で計算する方法が主流です。私たちのシミュレーションモデルもこの方法に合わせて、大気を区切ったボックスをそれぞれの計算機に割り当てて、同時進行で計算します(図3下)。隣り合うボックスでは通信によってデータをやりとりします。ファイルへの読み書きも重要で、1台の計算機ではとても時間がかかるので、同時に複数の計算機がそれぞれ別のファイルを読み書きするようにしています。その数は多いときで数十万ファイルになります。

各ボックスでの計算も、可能な限り速くしたいです。そのためには、スパコンに用いられる計算機の心臓部分(CPUやGPU)は最先端のものなので、それらの特性に合わせた計算方法の改良が必要になります。私たちはプログラムを詳細に調査して、どの計算に時間がかかっているか(数値の演算か、データの転送時間か、それとも他の待ち時間か)を調べることで、適切な改良を進めてきました。このように大気環境学と計算科学の研究分野の協働によって、高解像度シミュレーションを実現しています。
図3 大気シミュレーションモデルの格子と並列計算

コラム4 | 大気汚染による将来の気候問題

地球温暖化の要因は二酸化炭素であると考えられています。しかし、今すぐ排出をやめても、空気中の二酸化炭素は急には減りません。そこで、気温を上げる物質の中から、排出をやめると空気中の濃度もすぐに減る物質に着目すれば、地球温暖化を抑えられるのではないか、という考えが国際的に広まってきました。この物質は短寿命気候強制因子(SLCF)と呼ばれています。コラム2の図2にある、メタンやエアロゾルなどが当てはまります。

エアロゾルでは、ブラックカーボンの排出を減らせば気温は下がる(温暖化抑制)と見込まれますが、ブラックカーボンと同じ過程で放出される有機炭素エアロゾルの排出も減るので、冷やす効果が減ります(温暖化促進)。また、エアロゾル自体は健康に影響を及ぼすので(例えば、過去の『環境儀』21号、22号、54号を参照)問答無用で減らすべきものですが、減らすと気温は上がると見込まれます。将来に向けて、どのSLCFを削減するかは、大気環境と気候問題の両方を考慮して決める必要があり、非常に複雑な問題です(図4)。
図4 気候変動と大気汚染は密接にリンクしている
人間が大気中に放出する温室効果気体・微量気体・エアロゾルを減らすことで、地球の気候変動や大気汚染にどのような影響があるかは、非常に複雑な関係になっています。これはIPCC-AR6-WG1(2021)のFAQ6.2の図1をベースに、日本語表記にしました。

summary
濃度や運ばれ方がより精緻に
進化を続ける大気汚染シミュレーション予測

大気汚染物質の高解像度シミュレーションでわかったこと

大気汚染物質を地球規模でシミュレーションするための数値モデルが改良されてきました。その中で私たちは、我が国のモデルNICAM-Chemと日本が誇るスーパーコンピュータシステムを用いた高解像度シミュレーションを行い、エアロゾルや雲に関する新しい知見を得ました。


日本周辺を高解像度でシミュレーションすると、日本のエアロゾルはどう表現されるか

大気汚染物質を地球規模でシミュレーションする数値モデルでは、空間解像度は細かくても50km程度で、一般的には200km程度の大きさに設定されています。つまり、地球の大気の水平方向を、約200km×200kmのメッシュ(コラム3で説明したボックスのこと)に区切って、それぞれのメッシュでの大気汚染物質濃度をシミュレーションしています。

例えば、図5(b)は約110kmのメッシュで計算したPM2.5(エアロゾル)濃度のシミュレーション結果を示したものです。このメッシュサイズでは、茨城県つくば市でのPM2.5濃度は、千葉県北東部や茨城県東部とも同じであると仮定され、メッシュの区切る場所が違えば、東京とつくばは同じ濃度であると計算されます。しかし、実際には東京とつくばでは同じ濃度ではないはずです。そこで私たちのシミュレーションでは、10-25kmメッシュ(正確には、この計算はメッシュサイズが一律ではなく、東京を中心にして、中心付近では10km、そこから離れると徐々にサイズが大きくなり、北海道付近では25kmメッシュになっています。特殊なメッシュの作り方ですが、地球全体を一律に10km規模のメッシュに区切ると、膨大な計算量になってしまうので、当時の限られた計算機資源では日本付近のみを高解像度に設定した計算しかできませんでした)に区切って計算してみました(図5(a))。これでしたら、東京とつくばの濃度が違い、より現実的な大気汚染物質の濃度場を計算できたことがわかります。
図5 日本付近(発生源付近)でのPM2.5のシミュレーション結果〜高解像度と低解像度モデルの差〜
(a. 高解像度モデルで水平解像度が最小10kmメッシュ、b.低解像度モデルで水平解像度が110kmメッシュ)を用いて日本付近で計算された2000年代における地表面PM2.5濃度 [µg m-3]。母体モデルはNICAM-Chem。解像度以外は共通のものを利用しています。図はGoto et al. (2016) より引用しています。

大気汚染物質が大気中に放出されてからそれが取り除かれるまでの期間を大気寿命といいます。エアロゾルは大気寿命が1週間程度と短いうえに、発生源もいろいろな場所にあります。したがって高解像度でシミュレーションすることで、都市部においてより現実的なPM2.5のシミュレーションが実現されました。これは観測値と比較した上での結論です。


全球高解像度でシミュレーションすると、北極域のエアロゾルはどう表現されるか

エアロゾルは発生してから大気中で風に乗って輸送され、世界中に広がっていきます。これは、インタビュー内の図にあるエアロゾルの全球分布にも示されています。例えば、中国で発生したエアロゾルは、風下領域である日本に、季節によっては北極にまで輸送されます。欧米で発生したエアロゾルも北極に到達することがあります。北極でのエアロゾルの発生は非常に限られているので、中緯度地域で発生して北極に到達したエアロゾルのシミュレーション結果を詳しく調べると、エアロゾルの輸送・沈着過程が数値モデルでどれくらい正しく再現できているかを確かめることができます。全球を高解像度で計算するにはかなりの計算資源が必要ですが、「京」コンピュータを利用できたおかげで、全球を約14km×14kmのメッシュに区切った高解像度の計算ができました。

図6に北極域に位置するツェッペリンという場所におけるブラックカーボン(a)と硫酸塩エアロゾル(b)の2種類のエアロゾルの季節変動を示しました。この図からわかるように、14kmの高解像度で計算した結果が観測結果を最もよく再現しています。また、220kmなどの一般的な数値モデルで用いられる解像度で計算すると、他の数値モデルのように観測結果を再現できませんでした。しかし、私たちは世界の他のグループが実現できない全球14kmという高解像度でのシミュレーションに成功したことで、解像度を高くすると雲と雨の再現性が向上し、エアロゾルの除去過程の表現も良くなることを見いだしました。
図6 北極でのブラックカーボンと硫酸塩エアロゾルのシミュレーション結果〜高解像度と低解像度モデルの差〜
(Zeppelin)におけるa.ブラックカーボンとb.硫酸塩エアロゾルの地表面濃度[ng m-3]の月変動。黒丸が観測結果で、線がモデルの結果です。一致していればモデルが観測結果を再現できていることになります。220kmグリッドの結果では観測をうまく再現できていませんが、14kmグリッドの結果では非常にうまく再現できました。この図はGoto et al.(2020)図12を改変したものです。


全球高解像度でシミュレーションすると、エアロゾルと雲の関係性はどうなるか

全球高解像度シミュレーションによって、雲の再現性が向上し、エアロゾルと雲の相互作用の表現が従来の数値モデルに比べて劇的に改善されました。図7はエアロゾルと雲水量の相関関係を示したもので、私たちの高解像度シミュレーションは、従来の数値モデルの結果よりも、アメリカNASAのA-Train軌道にある極軌道衛星に搭載されたMODISとCloudSatセンサ(衛星観測)で得られた結果と非常に近いことがわかります。エアロゾルと雲の相互作用を気候モデルで再現することは非常に難しく、コラム2の図2にある硫酸塩による気温低下効果に不確実性の幅があったのは、この点に起因しています。大気汚染の気候影響評価を考える上でも非常に大きな問題であり、科学的理解が深まることが期待されています。私たちの高解像度シミュレーションによって、確実な科学的知見が蓄積され、大気汚染の気候影響評価の高精度化に繋がっています。

大気汚染と雲の全球高解像度シミュレーションの歴史において、日本の研究グループはNICAM-Chemを用いて世界に先駆けた研究をしてきました。2008年に、当時のコンピュータ性能世界一であった日本の「地球シミュレータ」を用いて全球7kmメッシュで1週間分のエアロゾルシミュレーションを行いました(Suzuki et al., 2008)。2016年から2020年にかけては、当時のコンピュータ性能世界一であった日本の「京」コンピュータを用いた全球3.5kmメッシュの2週間積分(Sato et al., 2016)や全球14kmメッシュの3年間積分(Goto et al., 2020)を実施しました。これらの成果は、「京」コンピュータを環境研究に活用した成功例として、2014年度HPCIシステム利用研究課題優秀成果賞や2018年度HPCIシステム利用研究課題「京」を中核とするHPCI利用研究課題成功事例にも選ばれました。

このように、高解像度シミュレーションの実現によって様々な進歩がありました。しかし、図6や図7にあるように、現場観測や衛星観測などの観測データがなければ、シミュレーション結果が正しいかどうかは検証できませんでした。また、室内実験によって得られた知見がなければ、シミュレーションモデルの土台となる物理化学法則や定式・定数はわかりません。従って、高解像度シミュレーションの実現は、計算科学やスパコン技術向上とともに、観測や実験で得られた知見の蓄積のおかげであることも大事なポイントです。
図7 NICAM-Chemを全球14km水平解像度で計算した結果。
雲水量とエアロゾルの相関関係を示しており、エアロゾル光学的厚さの変化量に対する雲水量の変化量を計算しました。図の中の数値(Average)は全球平均値です。衛星観測は、アメリカNASAのA-Train軌道にある極軌道衛星に搭載されたMODISとCloudSatセンサの組み合わせによって得られた結果です。これはSato et al. (2018) の図1より引用しています。


研究をめぐって
温暖化対策のカギは「SLCF」の削減?
世界や日本、国立環境研究所が取り組む研究

大気汚染と気候の複合問題に関する研究動向

今後の気候変動に関する国内外の議論において、大気汚染物質でもある「短寿命気候強制因子」(SLCF)の重要性が指摘されています。SLCFは大気寿命が短いので、気候への影響を高精度に評価するには、より高解像度のシミュレーションが必要です。

●世界では
大気汚染物質の中でSLCFが国際的に注目されています(SLCFに関してはコラム4を参照)。国際的な取り組みとしては、まず2012年に国連環境計画(UNEP)などを中心に設立された「気候と大気浄化の国際パートナーシップ(CCAC:Climate and Clean Air Coalition)」が始動しました。

ここでは、温室効果のある短寿命物質に該当するメタンやブラックカーボンなどの排出の削減が目的とされました。2015年の第21回気候変動枠組条約締結国会議(COP21)でパリ協定が採択されると、産業革命以前からの気温上昇を2℃に抑えることを目標(2℃目標)に、二酸化炭素などの温室効果気体の排出量削減以外にSLCF削減が必要であると認識され始めました。このような背景の下で、世界各国の研究機関ではSLCFの気候への影響が評価されるようになりました。例えば、ヨーロッパのグループは、ECLIPSE(Evaluating the Climate and Air Quality Impacts of Short-Lived Pollutants)というプロジェクトにおいて、複数の異なる数値モデルを用いてシミュレーションを行い、SLCFの中でもメタンの削減は気温上昇の抑制に効果があるが、ブラックカーボンの削減は従来考えられていたよりも効果が小さい、と結論づけました(Stohl et al., 2015)。SLCFの気候影響に関する知見は蓄積されつつあり、最新のIPCC-WG1の第6次報告書(IPCC-AR6-WG1, 2021)では、SLCFに関する独立した章が加えられました。これは、気候変動の議論においてSLCFの重要性が強く認識されたことを意味しています。二酸化炭素削減に加えて、SLCF削減を実施することで、気温上昇が抑制されると考えられています(図8)。
図8 世界で議論されている大気汚染を加味した将来シナリオ
もし現在のまま温暖化が進むと(なりゆきシナリオ)、2050年に地球の平均気温(以下、単に気温)は2℃以上上昇する恐れがあります。気温上昇を抑えるために、直ちに二酸化炭素の排出をやめたとしても、二酸化炭素は大気寿命が長いために、既に排出されたものが原因で、2050年の気温には大きく影響しません。そこで、大気寿命が短い物質で温暖化に影響しているものであるSLCF(ブラックカーボン・メタン)を削減することで、黄実線で示されるように、2050年の気温は+1.5℃まで抑えられます。しかし、2050年以降に気温が再び上昇すると予想されるため、二酸化炭素・ブラックカーボン・メタン・ハイドロフルオロカーボンを削減することで、黄点線で示されるように、2050年に+1.5℃に抑え、2100年においても2℃以内に抑えることが見込まれます。ただし、これらの気温変化は今後の最新の研究結果によって更新される可能性があります。なお、図はCCACのホームページに掲載されたものを日本語に訳したものです。


●日本では
環境省環境研究総合推進費によって、2009年から2013年に実施されたS-7プロジェクト「東アジアにおける広域大気汚染の解明と温暖化対策との共便益を考慮した大気環境管理の推進に関する総合的研究」や2014年から2018年に実施されたS-12プロジェクト「短寿命気候汚染物質(SLCP)の環境影響評価と削減パスの探索による気候変動対策の推進の研究」などにより、日本のSLCFに関する研究が本格的に行われるようになりました。S-12プロジェクトでは、全球気候モデルであるMIROCを用いて、SLCFの排出量変化に対する気候応答が詳細に調べられました。MIROCは、東京大学大気海洋研究所・国立環境研究所・海洋研究開発機構により共同開発されたもので、大気と海洋の循環場を数百年分計算できる日本の代表的な気候モデルです。その結果、ブラックカーボン削減の温暖化抑制効果が従来考えられていたよりも小さい理由は、ブラックカーボンの変化に対して雲が早く応答し、ブラックカーボン削減による冷却効果を相殺するからだ、ということがわかってきました(Takemura and Suzuki,2019)。

その後、2021年に環境省環境研究総合推進費S-20プロジェクト「短寿命気候強制因子による気候変動・環境影響に対応する緩和策推進のための研究」が開始され、S-12プロジェクトで得られた知見を踏まえ、いろいろな地域に混在する多種多様な化学種であるSLCFの変化によって起こる大気環境や気候変化をシミュレーションで調べています。今後のSLCF排出量をどのように削減するのが重要かを見定めるために、様々なSLCF排出量削減シナリオを策定し(具体的な取り組みは、『環境儀』74号などを参照)、それらの影響をシミュレーションによって調査します。このような取り組みとしての、SLCFに関する日本国内や世界への政策提言への貢献が期待されています。環境省環境研究推進費以外では、モデルシミュレーションや現場観測を活用して実施している文部科学省北極域研究推進プロジェクト(ArCS)などがあります。

●国立環境研究所では
SLCFの気候への影響の重要性は、国立環境研究所でも認識しており、2021年度からは戦略的プログラムの1つとして、「気候変動大気質プログラム(https://esd.nies.go.jp/ja/climate-air/)」や「気候変動適応研究プログラム(https://ccca.nies.go.jp/ja/program/index.html)」が始動しました。先に述べた環境省S-20プロジェクトでは、私たちも1つのサブテーマ課題を担当し、SLCFの変化に対する気象・気候場への影響を全球高解像度モデルNICAM-Chemでシミュレーションし、定量的に評価しています。また、政策的に重要または緊急と認められている研究課題が利用できる「富岳」政策対応枠の計算リソースを使用して、スーパーコンピュータ富岳による計算も進めました。最新の結果を1つ紹介すると、NICAM-Chemを用いてアジア域で人間活動から出たブラックカーボンの排出量を全て削減した場合に、ブラックカーボン自体の濃度や放射(気候)影響がどのくらいあるのかを調べています(図9)。これによると、図9(a)のようにブラックカーボンの濃度はアジアでは減少し、大気を温める効果のあるブラックカーボンの削減によりアジアでは負の放射強制力(負は、地球を冷やす効果を意味します)になりました。アジア以外の場所では、放射の応答が変化し、気象場も変化するため、アジアでのブラックカーボンの変化は地球全体に影響することがわかります。

また、モデル開発を継続するために、文部科学省の科学研究費基盤S課題や富岳成果創出加速プログラムなどの大型課題にも参画しています。このように、外部機関と密に連携しながら、大気汚染と気候の複合問題に対して取り組んでいます。
図9 SLCFの気候影響評価の一例
ブラックカーボン(BC)鉛直積算量と大気上端での瞬時エアロゾル短波放射強制力(大気上端での瞬時エアロゾル短波放射強制力であり、負の値が地球を冷やすことを意味している。以下、単に短波放射強制力)に関して、NICAM-Chemによる2つのシミュレーションの差を示しています。1つの実験は標準シミュレーションで、もう1つはアジア域で排出される人間活動に由来するBCの排出量を0と仮定したシミュレーションです。(a)ではBC鉛直積算量を表しており、青色が濃いほどBCの減少量が大きいことを示します。(b)では短波放射強制力を表しており、青色が濃いほど冷やす効果が大きいことを示しています。緑線で囲った部分は減少したBC鉛直積算量が多い場所を表しています。つまり、BCが削減されると、その場所では冷えることを意味しています。しかし、緑線で囲まれた以外の場所では赤青の色合いがばらばらであり、アジアでのBCの変化が地球全体に複雑な影響を及ぼしていることがわかります。
*大気上端での瞬時エアロゾル短波放射強制力であり、負の値が地球を冷やすことを意味している。


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PDFファイル 環境儀 NO.85[2.3MB]