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2005年5月4日

症状を悪化させるもの

花粉症(1)

 花粉症はスギなどの花粉によって起きる、くしゃみ、鼻水、鼻づまりや眼のかゆみ、充血、異物感といったアレルギー症状をいいます。
 スギ花粉症は1964年に初めて報告されてから、年々増加の傾向にあります。スギ花粉の飛散数が多いと発症が多くなりますが、同時に、衛生状態、食事内容、大気汚染物質などいくつもの要因が関与している可能性が指摘されています。
 大気汚染物質と花粉症との関係が取り上げられるようになったのは、日光・今市地区でおこなわれた花粉症の調査が発端でした。
 いろは坂の車の通行台数の増加とスギ花粉症の増加との間に相関があることや、スギ花粉飛散数がほぼ同じ日光杉並木沿いと古来川地区を比較した場合、交通量の多い杉並木沿いの方が、交通量の少ない山間部の古来川地区よりもスギ花粉症の頻度が高い傾向が認められた、という報告がでたからです。
 国立環境研究所では花粉症にかかりやすくしたり症状を悪化させると考えられるものの内から大気汚染物質をとりあげ、症状への影響とその機構について動物を用いて検討したり、疫学調査を行ったりしてきています。
 ここでは、ディーゼル排気、オゾン、二酸化窒素といった主な大気汚染物質について、花粉症におよぼす影響をモルモットを用いて検討した結果を紹介しましょう。
 ヒトではスギ花粉などが鼻や眼に繰り返しつくと花粉症が起きますが、モルモットでも同じようにくしゃみや鼻水、眼の充血などの症状が出ます。そこで、清浄な空気と汚染された空気の中で飼育した時の違いを観察して、症状を出やすくしたり、悪化させる作用があるかをくしゃみや鼻水、眼の充血などを指標にして検討しました。
 これまでのところ、ディーゼル排気、オゾン、二酸化窒素のいずれにも高い濃度では、花粉症の症状を出やすくさせたり、悪化させる作用があることが見いだされています。下図はスギ花粉による鼻水量がディーゼル排気曝露(ばくろ)で増えることを示しています。
 また、その原因となる好酸球というアレルギー反応のときに出てくる炎症性細胞の増加や、花粉に対する抗体価があがったりすることなども観察されています。
 これら動物を使った結果を用いて、動物とヒトとの違いや感受性が高いヒトを考えつつ、花粉症にかかりやすくしたり症状を悪化させたりするのがどのくらいの汚染濃度なのかを推定していくことが、これからの課題です。また、アレルギー関連疾患の年々増加といった、大気汚染や花粉数だけでは説明が難しい問題についても、検討しているところです。

スギ花粉による鼻水の量におよぼすディーゼル排気曝露の影響

【環境健康研究領域 上席研究官 小林隆弘】

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