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IPCC:気候変動に関する政府間パネル

西岡 秀三

 気候変動(温暖化)について,いままで得られている研究成果を集約し,科学・技術面から客観的に評価して政策決定に反映させるために,各国政府から推薦された研究者や専門家千数百人で構成されている国際的組織。世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)がよびかけて1988年に設立した。

 化石燃料使用によって発生する二酸化炭素や,農林業活動から出るメタンなどの温室効果ガスによって,気候が変動する可能性は19世紀から指摘されていた。1980年代に入って,大気中の温室効果ガスの継続的増加が観測されたことや,スーパーコンピューターを用いた大気大循環モデルによる予測によって,このまま温室効果ガスを排出しつづけると21世紀には相当の気候変動が生じる可能性が大きいとみなされるようになった。

 しかしながら気候変動のメカニズムは極めて複雑であり,どのように変動が現れるかについての研究はまだ十分ではない。一旦変動が生じた時には人間の生存基盤である自然生態系,水資源,食糧生産系などに重大な影響を及ぼすとみられる一方,防止のためには現行のエネルギー体系,農業方法などの大幅な転換が必要で,世界経済への影響も大きい。気候はいわば「地球公共財」であり,どこかの国が抜け駆けで温室効果ガスを出しつづけたのでは対策が尻抜けになるから,気候変動対策をうつにあたっては世界の一致した行動が必要である。そのため現時点で得られるかぎりの研究成果から,なにが言えるかについての世界的な共通認識が必要なのであり,研究を客観的に評価するというIPCCの作業が政策決定に重要な位置を占めてくる。

 1990年にまとめられたIPCC第1次評価報告書は,気候変動が起こる可能性を示して1992年地球サミットで署名された気候変動枠組み条約(FCCC)の成立に科学的基礎を与えた。1995年の第2次評価報告書は,気候システムへの人為的影響がすでに示唆されるとして,枠組み条約締約国会議(COP)での議定書策定の必要性を裏打ちしている。2000年をめざした第3次報告書作業は1997年より開始される。

 IPCC作業には,本研究所から数人の研究者が参加しているほか,地球環境研究センターが環境庁の活動を支援して,「IPCC気候変動影響・適応策評価ガイドライン(1994年IPCCレポート)」,「日本への気候変動影響評価(1992,1997)」の出版,「気候変動政策手段ワークショップ(1994)」,「統合評価モデルワークショップ(1997)」など関連会合を開催するなど,研究面での日本におけるIPCC活動の中心となっている。

(にしおか しゅうぞう,地球環境研究グループ統括研究官)