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鳥類生殖幹細胞の凍結保存と個体増殖への応用(平成 22年度)
Cryopreservation of germline stem cells and its utilization in birds.

予算区分
KZ その他公募
研究課題コード
0911KZ001
開始/終了年度
2009~2011年
キーワード(日本語)
生殖幹細胞,凍結保存,生殖巣キメラ,国際共同研究
キーワード(英語)
germline stem cells, cryopreservation, germline chimera, international cooperation study

研究概要

鳥類の生殖幹細胞を凍結保存することで家禽、家禽原種及びキジ目の希少野生鳥類種を半永久的に保存する手法開発を目的とする。鳥類生殖幹細胞保存により、外的要因(鳥インフルエンザ感染等)によって貴重な原種系統や地域特異系統が予測できない絶滅や遺伝的多様性の減少を起こした際に、保存生殖幹細胞によって種や系統を回復する技術開発と必要な細胞保存体制を構築する。併せて両国が持つ技術の国際標準化を行い、若手研究者の養成とネットワーク構築を行うことも目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

我が国とタイ王国で飼育または生息する家禽系統、家禽原種、及びキジ目の希少野生鳥類種の生殖幹細胞を採取し、増殖培養技術を開発する。日本側が開発した世界初の鳥類細胞培養条件(国際特許番号W096/06160)を応用して胚体から少量の生殖幹細胞を採取、大量培養して凍結保存、これを用いた生殖巣キメラより子孫個体作出を行うと共に、研究技術の国際標準化を行う。
加えて、若手研究者を中心とした次世代共同研究体制と持続的研修体制を構築する。この共同研究体制の下、増殖培養した生殖幹細胞を用いた生殖巣キメラ個体を交配して用いた生殖幹細胞由来の子孫個体を増殖させる手法を実用化する。

今年度の研究概要

日本側:日本国内のキジ科(ニホンキジ、コジュケイ、ヤマドリ等の野生種及び固有鶏系統)の受精卵から生殖幹細胞を採取・凍結保存する。また、生殖幹細胞との共培養を行うための繊維芽細胞をこれらの胚から樹立し、生殖幹細胞との共培養を行って鳥類種毎の生殖幹細胞増殖条件を検討・評価して増殖技術の実用化を図る。上記の研究技術を移転し、タイの研究機関と共有するために日本側研究者1名が4泊5日(5月)カセサート大学を訪問して、生殖幹細胞の採取法、凍結保存法、検疫手法及び生殖巣キメラ個体作成に関する技術の国際標準化を行うと共に、シマハッカン飼育繁殖施設を訪問して研究目的使用の打合せを行う。加えて、9月には研究者1名がカセサート大学を訪問して細胞の培養、凍結及びキメラ作製技術移転と遺伝的多様性評価の国際標準化を行う。また、タイ王国研究代表者及び若手研究者(1名)と共同で、採取したキジ科鳥類(最初はシマハッカンを予定)の生殖幹細胞の増殖培養を行う。加えて、取り扱う種の遺伝的多様性をmt DNA調節領域の遺伝子配列から評価、データベース化する。

国内研究活動の一環として、キジ目キジ科の動物園飼育個体試料を採取(研究者2名が旭川市立旭山動物園に出張)、タイで必要となるキジ科の鳥類種での雌雄判定に必要なプライマーを作成する。5月のタイ訪問の結果を受けて、7月には研究代表者が札幌(酪農学園大学)で、感染症検疫手法標準化の打ち合わせを行う。更に、9月のタイ訪問と並行して研究代表者が東北大学医用細胞資源センター(仙台)において生殖幹細胞の遺伝子発現に関する打合せを行うことにより、タイで採取した生殖幹細胞の増殖培養での遺伝子発現を用いた評価への活用を図る。更に10月には研究者1名が札幌(酪農学園大学)において感染症検疫手法のタイでの問題点を検討・打合せを行うと共に、研究者2名が前述の東北大学(仙台)で細胞保存技術の打合せ及び生殖幹細胞遺伝子発現の詳細打合せを行う。これを国内野生鳥類に適応して評価するために、11月には研究代表者を含む2名が那覇(NPO法人どうぶつたちの病院)で傷病保護・飼育下の野生絶滅危惧鳥類の細菌除染及びそれら個体から採取した保存細胞に関する技術標準化を行う。翌年2月に研究員1名が琉球大学及びNPO法人どうぶつたちの病院において鳥類種間での遺伝的多様性評価に関する打合せを行う。



相手国側:タイ王国内のキジ科(ヤケイ属、ミヤマハッカン、ハッカン、シマハッカン等のコシアカキジ属等、及び固有鶏系統)の受精卵を収集し、生殖幹細胞を採取後に凍結保存を行う。一部の生殖幹細胞は凍結保存のまま日本側研究機関に移送して細胞培養を試みる。そのために、タイ側研究者1名が日本側研究機関を訪問して、安全性確保のために必須となる検疫、培養法の技術標準化を行う(8月、10月)。増殖培養後の生殖幹細胞は再度凍結保存して、タイ国側に移送・保存する。

上記に加えて、技術移転した鳥類細胞培養をカセサート大学の若手研究者と共に試行し、その際の問題点を抽出して日本側研究機関と共に解決にあたる。

関連する研究課題
  • 0 : 環境保全に有用な環境微生物の探索・収集・保存、試験用生物等の開発及び飼育・栽培のための基本業務体制の整備、絶滅の危機に瀕する野生生物種の細胞・遺伝子保存

課題代表者

桑名 貴

担当者

  • 今里 栄男
  • 根上 泰子