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2021年3月5日

カーボンニュートラル・脱炭素社会をめざす
地域ビジョンづくりのマニュアルを公表

(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、福島県政記者クラブ、郡山記者クラブ同時配布)

2021年3月5日(金)
国立研究開発法人国立環境研究所
福島支部 地域環境創生研究室
 主任研究員 五味 馨
 室長    大場 真
 

   国立環境研究所福島支部主任研究員の五味馨らの研究チームは、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」や「ゼロカーボン」をめざす地方自治体が具体的な目標を立て、行動計画を策定するための参考としてマニュアル『地域における「脱炭素社会ビジョン」策定の手順』を作成・公開しました。地域の目標としての脱炭素社会像を具体的に描くために考えるべきこと、どのように将来の社会の状況・エネルギー・温室効果ガス排出量・脱炭素対策の効果を計算するか、さらにSDGsなどの様々な地域課題解決と脱炭素を同時達成する考え方をまとめています。
   また、この手順を実際に活用した福島県大熊町では2021年2月18日に「大熊町ゼロカーボンビジョン」を策定・公表しました。このマニュアルを活用することで地域で何をすべきかが明確になり、脱炭素社会を目指す取り組みの助けになることが期待されます。
 

1.背景と目的

 2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」「脱炭素社会」を実現することを宣言しました。これに前後して多くの地方公共団体が2050年までに「ゼロカーボンシティ」となることを表明しています※1。しかし、多くの地域では2050年までの具体的な計画の策定はこれからとなっています。これまでの地域における地球温暖化対策の計画では2030年頃を目標とするものが多く、また実質ゼロといった大きな目標とそれを達成するための方法が具体的に考えられることはほとんどありませんでした。そこで地域協働研究に取り組む国立環境研究所福島支部のチームでは、地方公共団体が脱炭素社会の実現をめざす具体的な行動計画を立案するための基礎的な支援として、その考え方、検討の順序、必要な計算の手法をまとめたマニュアルを作成することとしました。

2.マニュアルの内容

 作成したマニュアル『地域における「脱炭素社会ビジョン」策定の手順』は、主に地方公共団体の担当者を利用者として想定し、次のような内容を解説しています。

・ 脱炭素社会とは?低炭素社会との違いは?
・ 目標の立て方と対象となる地域活動の範囲
・ ビジョン策定の体制と各段階で検討すること
・ 将来社会のシナリオ作成の方法
・ 統計データや脱炭素対策などの主な情報源
・ 将来の社会経済活動・排出量・対策効果の代表的な計算手法
・ 様々な地域課題解決と脱炭素を同時達成する考え方(SDGs、地域循環共生圏)

また、この手順の実践例として福島県大熊町が2021年2月に策定・公表した「大熊町ゼロカーボンビジョン※2」も紹介します。

地域の温室効果ガス排出のスコープを表した図
図1.地域の温室効果ガス(GHG)排出の「スコープ」

 地方自治体では、行政上の境界をまたいで様々な活動が行われているため、脱炭素社会ビジョンで対象とする範囲を決める必要があります。本マニュアルでは排出量から見た重要性、把握の可能性、地方公共団体による対策の有効性などから範囲を決めるための考え方を詳しく説明しています。

脱炭素社会ビジョン策定の体制と手順の概要を表した図
図2 脱炭素社会ビジョン策定の体制と手順の概要

 行政の「タスクフォース」が中心となり、地域住民などの意見や専門家の知見を取り入れるための「ステークホルダー会合」、専門的な計算を行う「モデル分析チーム」を構成し、密に連携して目標と取組の策定を進めます。脱炭素社会の実現には十年間以上の長期を要するためロードマップとフォローアップも必要です。マニュアルではチームの役割や各段階の検討手順の詳細、計算の手法を紹介しています。

3.今後の展望

 本マニュアルは専門的な業務を想定しているため、一般向けに内容をやさしく解説した資料の作成・公表を計画しています。また、地域の脱炭素社会実現に係る様々な研究を進めながら、脱炭素社会ビジョンの策定や脱炭素に向けた取り組みを進める地方自治体等への情報提供や助言を行います。

4.注釈

※1:2050年までに地域の実質二酸化炭素排出量ゼロに取り組むこと。2021年2月24日までに277の自治体が表明しています。

環境省 地方公共団体における2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明の状況
https://www.env.go.jp/policy/zerocarbon.html【外部サイトに接続します】

※2:福島県大熊町は2020年2月に「大熊2050ゼロカーボン宣言」を行い、これを具体化し、町の復興を進めていく指針として「大熊町ゼロカーボンビジョン」を策定しました。策定にあたっては国立環境研究所福島支部がアドバイザーとして参加しました。

大熊町 ゼロカーボンビジョンを策定しました
https://www.town.okuma.fukushima.jp/site/zerocarbon/16548.html【外部サイトに接続します】

5.研究助成

 本マニュアルの内容の一部に(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF 20191002)により実施された成果を含みます。

7.問い合わせ先

【研究に関する問い合わせ】
国立研究開発法人国立環境研究所 福島支部
地域環境創生研究室 主任研究員 五味馨

【報道に関する問い合わせ】
国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報室
kouhou0(末尾に@nies.go.jpをつけてください) / 029-850-2308

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