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PRTRデータを活用した化学物質の排出管理手法の構築(令和 2年度)
An approach for management of chemical releases and flows using PRTR data

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) S?-4-1
研究課題コード
1921BA010
開始/終了年度
2019~2021年
キーワード(日本語)
化学物質管理,化学物質排出移動量届出制度(PRTR),物質フロー,排出インベントリ,廃棄物処理・再生利用,下水処理
キーワード(英語)
chemical management,Pollutant Release and Transfer Register (PRTR),substance flow analysis,release inventory,waste treatment/disposal and recycling,sewerage treatment

研究概要

化学物質のライフサイクル全体での包括的管理に向けた基礎情報として化学物質の排出インベントリやその基となる物質フローの把握と管理が必要である。化学物質排出・移動量届出制度(PRTR制度)は、462と多くの対象化学物質について排出移動量を収集、公表しており、環境中への排出量や物質フローの把握に有用な情報を提供するものである。しかしながら、このような有用な情報が排出インベントリや物質フローを把握し管理するという観点ではまだ十分に活用されていない状況にある。この理由として、届出データの算出方法等の情報が不透明であること、一部のデータの質に課題があると考えられること、全体への寄与が大きい可能性がある廃棄物処理・再生利用や下水処理に伴う化学物質フローや環境排出量情報が不足、欠落していることなどが挙げられる。これらの背景をふまえ、本研究では、化学物質の物質フロー及び排出インベントリとしてのPRTRデータの評価と課題整理、廃棄物の処理・再生利用や下水処理について物質フロー及び環境排出量の推計手法の構築や改善、精緻化を行う。これらの成果を基に、PRTRデータを活用した物質フロー・排出インベントリの把握方法を提案する。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

本研究は2つのサブテーマで構成する。
サブテーマ(1)「PRTRデータを活用した物質フロー・排出インベントリの把握手法の開発」では、物質フロー及び環境排出量としてのPRTRデータの正確性と捕捉範囲の評価として、PRTR届出及び届出外推計データの状況等の整理やPRTR届出データの算出方法等の実態把握をふまえ、PRTR届出及び届出外推計データが物質フローや環境排出量の実態をどの程度反映しているか、またそれら全体のどの部分を捕捉しているかを業種・物質群等ごとに明らかにする。データの評価は、トップダウン的な手法による物質フロー分析、PRTRデータを用いた環境濃度モデル推計とモニタリングデータの比較検証をケーススタディとして実施し、その結果も参照しつつ実施する。また、廃棄物の処理・再生利用に伴う化学物質のフロー推計手法の構築として、届出排出移動量の約6割を占める廃棄物処理への移動量について、多量排出事業者報告やマニフェスト等の廃棄物情報との接続を行い、廃棄物の処理・再生利用への化学物質流入とその先の物質フローを把握する手法を開発するとともに、物質フローの推定を行う。
サブテーマ(2)「排出量への寄与が大きい業種における排出量推定手法の高度化」では、下水道を対象に排出量推計手法の高度化を目指し、流入実態情報の拡充、実測データの蓄積、簡易推計式から得られた推計値の信頼性の検証、移行率が負となるケースに対応する推計フローの構築を行う。まず、蓄積されてきた PRTR データと既往の文献の整理と解析から、下水道への PRTR 物質の流入実態の検討を行う。また、実測対象物質の分析体制を整え実処理場の調査を行い、得られたデータを解析して既往の排出量推計値との比較を行い、誤差の要因を検討する。ラボスケールおよびパイロットスケールの生物処理実験を実施し、実測データの拡充により得られた考察との比較検証から、排出量推計値の誤差が低減される推計手法を考案する。実測データの収集対象物質は数十種程度を選定する。さらに、既往の推計手法では明らかにされていない、下水処理過程で前駆体から非意図的に生成する物質の物質挙動を調査し、その排出量推計を行うとともに、推計フローを考案する。
得られた成果を取りまとめ、国レベルでの化学物質の物質フロー及び排出インベントリ把握におけるPRTRデータの活用に向けた科学的基盤として提示する。

今年度の研究概要

サブテーマ(1)では、PRTR届出排出移動量データの算出方法や根拠等実態のアンケート調査を実施し、PRTRデータの正確性と捕捉範囲を仮説として整理する。環境中濃度推計とモニタリングデータとの比較検証、産業連関分析による化学物質フロー分析のケーススタディを行う。PRTR届出移動量データと廃棄物行政情報を接続し、廃棄物の排出から委託処理までの化学物質フローを推計するとともに、複数の中間処理を経る委託処理後の廃棄物の処理フローを推計する。
サブテーマ(2)では、PRTR届出移動量との比較により他業種からの下水処理施設への流入量誤差の特性を比較し、流入量誤差への影響因子を検討するとともに、誤差低減に向けた情報の収集を進める。下水道業からの排出量の届出がある物質から排出量が多い物質を抽出して実測調査対象に追加し、調査結果と届出データの比較検討を行う。また、調査対象施設よりPRTR届出に関する意見を聴取し、制度やガイドライン見直しに資する情報を収集する。下水処理過程で負荷量が増加する物質の下水処理場調査を開始し、特に生物処理過程における挙動の検討を中心にデータを収集する。

外部との連携

サブテーマ(2)実施機関:国立研究開発法人土木研究所
研究協力機関:富山県立大学、大阪市立大学

課題代表者

小口 正弘

  • 資源循環領域
    資源循環社会システム研究室
  • 主幹研究員
  • 博士 (工学)
  • 工学,システム工学,化学
portrait

担当者